17話
「ねぇ」
「……」
「起きて恭司」
「……」
全然起きる気配がない。あともう少しで最寄り駅に到着するというのに。
帰り道。珍しく電車の席が隣同士で空いていたので2人で並んで座ったのだが……
よほど疲れていたのか彼はすぐに寝てしまったのだ……私の肩に頭を乗せてスヤスヤと…やっぱり男の人に寄りかかられると重い。
でも、そんなことよりも恭司の顔がすぐそばにあって、心臓がバクンバクンと爆発するのではないかというぐらい音を立てている。
それに、密着しているから全体的に距離が近くて、右肩からは彼の体温が伝わってきてドキドキする。
加えて髪の毛はサラサラだし、柔軟剤の効果なのか凄くいい匂いもしてくる。
もうどうしていいのか分からない。早くどいてくれないと私がこの状況に耐えられそうにない。おかしくなってしまいそうだ。
「き、恭司」
起きてもらいたくて、もう一度呼びかける。
「う、うん…」
「お願いだから起きて? もう駅に着くわよ」
「わ、分かった…」
完全に意識が覚醒していないのか、ゆっくりと目を開けて眠そうに返事を返す恭司。
何それ……可愛い。
というか、さっきから私ばかりが心を乱されているみたいでムカつく…
それに比べて彼はこちらの気も知らずに、私の肩でぐっすりと気持ちよさそうに寝ているし……そんな彼を見て、やっぱり寝顔が可愛い。そんなことを思ってしまう自分にもムカつく…
「もう少し…待って…」
なんなら寝起きの声まで可愛い。そんなことを思ってしまう私はもう末期なのかもしれない…
「ふぁー、おはよう」
「ひゃっ」
完全に油断した……私の耳元で囁かれた声がくすぐったくて、思わず変な声を出してしまった。
恥ずかしさから赤くなった顔を見られたくなくて彼とは反対の方向に俯いたのに…
「顔…真っ赤だよ」
さらに耳元で囁かれて…
「ひゃっ」
彼の吐息が耳に当たって身体が熱くなる。
「あー、可愛いな」
もう…さっきからドキドキしぱっなしで本当に心臓がもたない。
絶対に私の反応を見て楽しんでる……でもそれが嫌じゃない自分にもムカつく…
あー、もう私は彼から逃げられそうにない。




