16話
学校から我が家までのなんの変哲もない帰り道。今日も彼は私のことを家まで送ってくれている。
いつも1人だった下校時間。それが今は一緒に帰ってくれる人がいる。
彼がいるだけでこんなにも幸せな気持ちになれるのは何故なのだろうか。
「あの公園。小さい時によく遊んでたのよね」
「ブランコとか乗った?」
「乗ってたわ」
「俺も乗ってた」
取り止めのない会話。特に面白い話しをしているわけでもないのに、なぜかそれが心地よく感じる。
少し前までは早く家に帰りたくてしょうがなかったのに、今は少しでもこの時間が続けばいいのになんて柄にもなく考えてしまう。
ああ、もう家につく。まだつきたくないな。
「じゃあ、また明日」
「うん、また明日」
別れの挨拶をして彼を見送る。そして鍵を開けて家の中に入る。
少しだけ寂しい気持ちになった。ああ、明日が早くくるといい。
嬉しくなったり、ドキドキしたり、寂しくなったり。
誰かと付き合うということが、こんなにも気持ちの乱高下を繰り返すことだとは知らなかった。
今だって寂しかったはずなのに、彼からの連絡1つで嬉しくなっている自分がいる。
我ながらなんて単純な生き物なのか。
恋愛どころか人間関係もまともに構築できていない私にこんな一面があるなんて驚きだ。
もっと自分はドライな人間なんだと思っていた。だから恋のパワーというのは本当に凄いのだと思う。
何かしらの危ないエネルギーを持っているんじゃないかと疑ってしまうぐらいだ。
ほら、今だって…
『早く明日にならないかな。さっき別れたばかりなのにもう会いたい』
メッセージアプリに送られてきた言葉をみただけで、一緒のことを考えてたんだと思わず笑みを浮かべしまった。
そして、よく彼はこんな見るのが恥ずかしくなるような文章を送れるなと思う。私には恥ずかしくて無理だ。
でも……私がこんなにも温かい気持ちになっているのだから、恭司もこういうストレートなメッセージを送られたら嬉しいのかもしれない。
少しだけ勇気を出してみようか。そんなことを思ってすぐにやめた。
『私も』
代わりに言葉少なく、今の気持ちをメッセージアプリに送信した。




