15話
「恭司おはよー!」
後ろから元気のいい声が聞こえてくる。
「おはよう美穂」
「深井さんもおはよー!」
「お、おはよう」
彼女の名前は田中美穂。大島くんと同じグループにいる女子生徒だ。
「じゃあ私は先に教室に行ってるね。あとは若い2人で楽しんでー」
そう言って彼女は去っていった。
2人はお互いに名前呼びをしているみたいだ……私たちはまだ名字にさん付けだけど…
彼の恋人なのは私なのに。ついそんなことを思ってしまった。
もちろん私よりも彼女の方が大島くんとの付き合いが長いのだろうけど…
凄く複雑な気分だ。こんなことは言ってもしょうがないことなのに。
結局ずっとモヤモヤした気持ちを1人で抱えたまま、気がつけば放課後になっていた。
こんなことをずっと気にしてバカみたいだ。
「深井さん。一緒に帰ろう」
「ええ」
さっきの子は名前呼びで私は名字…いけない、そんなことは考えない方がいい。
・・・
「それでさ」
まずい、さっきから会話が頭の中に入ってこない。
どうしてもモヤモヤして余計な思考ばかりが脳を支配してしまう。
本当にどうしたらいいのか分からない。なんで私ばかりこんな思いをしているのか…
「はいこれ」
「え」
彼からペットボトルに入った某有名ブランドのロイヤルミクティーを手渡された。
「もし嫌いだったらごめん。その時は俺が飲むから」
「うんん、平気。あ、ありがとう…でも…どうして?」
「なにか悩んでるみたいだったから。少しでも助けになりたいなって。もし俺に話しても大丈夫なことなら相談にも乗るし」
「う、うん…」
ああ、彼はなんて優しいのだろうか。サラッと私が気にしないぐらいの物をくれて、こちらにも配慮した心配もしてくれる。
なんだそれ……そんなのズルすぎる。そんなことをされたらますます好きになってしまう…
「呼び方……」
「呼び方?」
「私も名前で呼んでほしい……」
「名前。もしかして朝のやりとりを見て嫉妬してくれたの…?」
「べ、別に…た、ただ…友達は名前で呼ぶのに、彼女の私が名前で呼ばれないのはおかしいと思っただけ」
「なにそれ……待って…それは可愛いすぎる」
そう言って彼はその場にしゃがみ込んだ。よく見ると、少し頬が赤くなってるような気がする。
「じゃあ瑞樹も俺のこと名前で呼んでくれるの?」
「わ、私は他の男子を名前で呼んだりしないから」
自分で言っててもずるいなと思う。人にはやらせて私はやらないなんて…でも、いざ自分の番になると無性に恥ずかしい。
「えー、俺も瑞樹に名前で呼ばれたいな」
期待されるような目で彼に見つめられる…うぅ…そんな風に見られても言わないから…
「い、いいから帰るわよ…恭司…」
「うん。帰ろっか瑞樹」




