14話
昨日。
人生で初めての彼氏ができた。
口から自然と出た好きという言葉。そして、その勢いのまま私と彼は付き合うことになった。
1日たった今でも自分に恋人ができたという実感が湧かない。
不思議な気分だ。それに頭の中がふわふわして地に足がつかない。
私は彼と付き合えたことに浮かれているのだろうか?
きっとそうなのだろう。今日も一緒に通学する約束をしているのだけど、それだけのことなのに心が温かい。
今まで感じたことの無かった感情だ。彼に出会わなければこんな気持ちを知ることもなかっただろう。
私はこんなに幸せで大丈夫なのだろうか。それが少し恐ろしい。こんな幸福なことを知ってしまったら、失うのが怖くなってしまう。
変わり映えしない70点の平凡な日常。そんな生活に終わりが訪れた。
でもこれは悪い変化ではない。この幸せが続くように頑張ろう。そう思った。
まずは付き合い始めた初日から待ち合わせに遅刻する。そんな最悪の事態を避けるために登校の準備をしよう。
・・・
「おはよう深井さん」
「おはよう大島くん」
「じゃあ行こっか」
そう言って歩き始めた彼はサラッと私の手を握った。
私よりも大きい手からは体温が伝わり、その甘い熱を感じて鼓動が早くなる。
通勤、通学をする大勢の人がいる駅の中で恋人と手を繋いで歩く。周りの目が気になって恥ずかしいという気持ちと、そんなことがどうでもよくなるぐらいの幸せ。
頭の中が真っ白になりながらも、彼に手を引かれて前に進む。
ふと彼の横顔が目に入る。よく見ると頬が少し赤くなっていて、それがなんだか可愛いなと思ってしまった。
「ねえ、もしかして照れてる?」
「……バレた?」
「頬が少し赤い」
「恥ずかしいな。本当はカッコつけたかったんだけど…」
彼の顔が更に赤くなった。なにそれ……ずるい。
その表情はいくらなんでもあざとすぎる。不覚にもキュンとしてしまった。
だから、つい余計なことを口走ってしまったのだろう。
「よかった。私だけが照れたり恥ずかしがってわけじゃなかったのね」
「そっか。深井さんも照れてたんだ」
「そ、そうよ」
「それはよかった。俺ばっかりが好きになっている気がしてたから」
それは私のセリフだ。絶対に私の方が彼に惹かれてる。
「そ、そんなことはないわよ。私は貴方のことが好きだから付き合うことにしたの」
でも2人で同じことを考えてたというのが嬉しい。
「うん。ありがとう。俺もめちゃくちゃ大好き。世界で一番好き、愛してる」
「そ、そう…」
不意打……彼はずるい…平然とそんなセリフを言ってくるなんて…
やはり私の方がどんどん好きになってるみたいでムカつく。でもそんな自分が嫌いじゃない時点で、もうとっくに私は負けているのだろう。
好きな人と一緒にいるということが、こんなにも嬉しいことだなんて知らなかった。




