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魔女と半魔 Ⅶ

「えぇ、とだな。取り敢えず。俺は君らを見て、大丈夫だろう、と思った。他の五人は雑兵だ。だが、君一人いれば事足りる。何故か、力を振るわず、遊んでいるかのようだったが、まあ、そんなことするくらいだから、益々大丈夫だろうと思った」


「?」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


「……。少なくても、私は、分からない……。貴方、強者というより、もう、世間知らずの頭でっかちの変人にしか見えないし……」


「君はそのままでいてくれ」


「? え、ええ……」


「それで俺は、砦の奥に進んだ。王座の奥だな。俺が君らを放置していったとき、王座に座っていた奴は代理に入れ替わっていたが、知っていたか?」


「だから、杖持って無かったのね」


「杖で……、判断するなよ……」


「……。そうよね……」


「話が進まん。だが、どうしても必要なのだ。続けるぞ。俺はその代理じゃない奴を追うことにした。頭を落とさねば片手落ちどころか、下手すりゃ負けだ。で、奥に進んだんだが、目を疑ったよ。まがりくねった道。そして、本筋を悟らせぬ隠し扉。そうして続く道の先に、奴らは、軍隊染みた陣営を築いていた」


「っ!」


「待て待て待て! 俺の主観だ。説明するから、ちゃんと、君からしてもそれが軍隊と思えるかどうかをきちんと判断してくれ! 俺は世間知らずなのだから。続けるぞ。右は計器で図って整えたかのように真っ直ぐになり、やがて、左右、更に先に左右、またまた先に左右、扉があった。それらは石を削り出されて整形されたと人目に見て分かるものだった。明らかに高い知能があることの証明。役割分担に留まらない。こいつらは拾ったものを使うだけではなく、設計し、施工できるのだ」


「……」


「相変わらず声は発さない。だが、何やらの方法で意思伝達はしている。一目で分かった。工兵である、と。あの石の削り出しのスコップを作っていた。組織だった動きだ。役割分担。指揮系統。分業。協業。これは、まるで、軍隊ではないか。そう思った。左右の部屋を開けて、開けて、開けて、否定材料が尽きていった。無論有無を言わさず、喰らった。泥として。知識を奪い、力を魔力に変換し、頂戴した。俺は一人だ。敵の本拠地のど真ん中で囲われでもしたら溜まらんからな」


「そして、本元へ辿り着いた。そこは会議室であった。人間のように、偉そうにふんぞり返って、長机で会議してやがった。どれもこれも、石を几帳面に削り、加工したであろう長机に椅子だ。それに座るのはあの化生共だぞ。見掛け上は、雑兵と何だ変わらん。が、その立ち振る舞いと態度は、偉そうな奴らの典型だった。足を組んでふんぞりかえって、やっている会議の内容はどうせ、やってもやらなくてもいいこと。そんなイメージを抱かすだけの、駄目っ振りだった」


「俺が踏み入っても気づきもしない。その上、数歩分の通路を抜けて、その会議室に足を踏み入れてやって、しっかりと消さずに足音を鳴らしてやったら、流石に気づいた。が、酷いぞ? 何かいるな、という反応だけして、俺を無視して会議に戻りやがった……。俺のこと、同族とでも思ったのか? いやだが、同族だとしても駄目だろ? 何か俺に似たお偉いさんでもいたのか? なお、この疑問はすぐさま粉砕されることになる。答えはな、『下手人か。ま、誰か他のやつがやるだろう』だ。どかどかと、歩みを進めると、半分が立ち上がり、俺に向けてきたのは()()だった」


「……えっ……?」


「そもそも、杖持ってた奴を見てたんだろ? なら、可能性として無視できるものではないだろ。こんな砂地で、杖が、杖本来の役割を果たせると本気で思っているのか?」


「で、だ。飛んできた魔法はバラバラ。どれもこれも、その辺の貴族のお坊ちゃんお嬢ちゃんに毛が生えた程度。要するに、普通の魔法使いの範疇だった。効く訳が無い。それより、残り半分の、見物気分でふんぞり返っている間抜け共の馬鹿具合にもう、笑うに笑えなかったよ。だから、全部喰った。その後、何故か、あの指揮官代理が、ここまで来てた。俺を見て、こいつだけは正しく恐れを抱いていたよ。無論始末した。そして、あの杖持ちはここにはいない。もういない。会議室の先に階段があった。上へと続いている階段が。だが、登るまでもなく分かった。塞がっているとな。それも、唯の閉鎖ではなく、封印の類だ。だから、俺でも通れない。無論君も」


「……」


「そうして、俺は君たちの方へと引き返した。どうせ大丈夫だろうし、この情報という名の手柄をてきとーに押し付けて、恩売っとこう、今後のためにな、と」


「すると、君が白く光り輝いていたわけだ。もう真っ白。光そのものだった。輪郭すら白い光。影すら映らない。君だけじゃあなくて、その場に立った俺の影すら。無茶苦茶だと思った。そして、明らかに暴走しているなと分かった。敵の影はない。死体も無い。奴ら死にたてなら、確実に灰色のままだから、分かりやすいんだ。そして、君のお仲間は全員泡吹いて倒れてた。掌握の魔法、その暴走? なら、発揮する効果はそうではない。気絶させてしまえばもう、何の効果も発しないじゃあないか」


「で、俺は君に襲い掛かられた。……違う、胎を抑えるな……。君はそういう類の淫乱ではない。本能に忠実な魔女はそういう気があると聞いたことがあるが、君はどう考えたって当て嵌まらん。君の最初の俺への攻撃は、ただ、その身から噴き出しただけの魔力だった。近づいていた俺は無防備にそれに吹き飛ばされ、潰れた。……、もう突っ込まんぞ。俺は泥だから脆い。だが、泥だから無敵だ。だから、気にするな」


「訳が分からなかった。明らかに別種の力だったからだ。君の力は直接攻撃力を持つ類では無い筈だった。掌握とは、備えられる者が相手ならば無力であることすらあった。そういう力だ。厄いが、まだ比較的よく知られた力だ。どうしもうもなく詰んでる類には、絶望とか、恐怖とか、範囲に入った全てにそれを抱かせるような力も、世界には存在するのだから。君のは、君の多大なる努力があったとはいえ、その結果、一応の制御は、強弱くらいは、つけられる類だった。それだけの筈だった。だが、違ったのだ。君のそれは、ただの結果の発露に過ぎなかった。君の本質であなかったのだ。君の本質は、熱。物理熱じゃあない、概念的な熱。心の熱さ。こういうべきか? 『心に火を点けよ!』」


「……。真面目にやってよ……」


「大真面目なんだがな……。最大限に分かりやすさを重視したらそうなったのだ。君の仲間たちの在り方が、君の本質を示してたっていうことだよ。そんな力を持ちながら、築いていたのは、逆ハーレムですらない、旅の仲間。君を道標とした、君の軍。君の群れ。彼らは、君に惹かれて、ついてきた。そして、そこには、肉欲や愛欲ではなく、君の後を追い、心に火が灯った者たちさ」


「……」


「照れていい。誇っていいんだ。少なくとも俺は、そのような記録、見たことが無い。君のような能力を持ったものは、幸せな末路どころか、幸せな過程すら、望めぬものだ。果たせぬものだ。だから、大概の家で、その力を持った存在は、物心ついたかどうかの頃くらい、それが判明した位の頃に、処される」


「……」


「でも、君はそうじゃあないようだ。何せ、君には蔭が無い。心にそういう人間特有の、どうしようもない仄暗さが無いんだ。間違いない。君のその有りようは、気高く美しい。惚れ惚れしてしまうくらいに。少なくとも俺は、垣間見た。見惚れた。最初見たその時に。だから、大丈夫だろうと思ったんだ。変に不安症で、変にてきとーな俺が、碌に迷わず、先へ行けたのはそういうことだったのだ」


「それはそれとして。君の戦闘力は、驚異の一言だった。何せ、光だ。伝説に謳われた光を行使する存在に、ただの泥でしかない俺が、抗える筈なんて……。ここで一つ補足だ。この、光というものに、誰も目を輝かせない。驚かないのだ。近年、実はいたのだよ。光を司ってみせた者が。魔法使いが。それは、魔法使いでは決して無かった筈の、それこそ、生きた現役の伝説という、騎士であった。聖騎士の座と、騎士団長の地位、自らの団。それを得る筈だった、不自然な位突然、その名を聞くことは無くなった。そして、偶々俺は知った。それが、今、光を司る、真に光を司る魔法使いとして、上に存在するのだと。その名を君はよく知っている。ウィル・オ・ライト。彼は今、【始まりの園】にいる」

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他にも色々描いてます。
長編から連載中のものを1つ、
完結済のものを2つピックアップしましたので、
作風合いそうならどうぞ。

【連載中】綺眼少女コレクトル ~左目を潰され、魔物の眼を嵌められて魔法が使えるようになったエルフの少女が成り上がる話~

【完結済】"せいすい"って、なあに?

【完結済】てさぐりあるき
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