↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
344/355

魔女と半魔 Ⅱ

 直射日光は勘弁だ。著しく落ちる。俺の再生能力が。六分の一を切る。そうなればもう、手も足も出ない。それでも死にはしないが、手も足も出なくなる、言葉通りに。


 幾ら何でも、攻撃の出が早過ぎるし、手数も多過ぎる。


 このような、俺に負けの無いと断言できるほどの圧倒的有利な、土に囲まれ直射日光の届かない地下という絶好の条件が揃っているというの、既にこのざまだぞ? 光を司るのならば、屋外こそが本領であろう。地下なんて光の届かぬ場所で、これだけの光を行使しているのだぞ? 俺のように周囲から無限に得られるわけではなく、全て自前で賄っているだろうに、俺は終始攻め続けられている。


 仕方がないのだ。一応、見に徹する以外の選択を取れるだけのリソースあった筈だった。だがそれは、別のことに占有されている。流石に片手間ではいけない。あちらに比重を置かないわけにはいかない。


 ただ、リアルタイムのたかが数個の並列実行如きに、これほど消耗するとは予想外だった。自ら味わった経験による知見でないとやはり、こういった本番でこそ、試験や練習とはそれなりにずれるか。


 俺は今、彼らを覆っている。砂の河の終点へと運ぶ為に、砂の河の上を流されている。緩めば、崩れる。彼らは、生き埋め確定だ……。

 

 未だ、彼らは行き先に着かない。着いたとて目を覚ますのは未だ先になろう。悪化は無いだろうが。彼女の加減無しの魔力にあてられてしまった彼らが、目を覚ましたとて正気かどうか。だが、恐らく悪意はない。それは今、味わっている俺の感じる通りであろう。


 今度は左左右右、賽子状に切り刻まれるが如く、俺の身体は、そんなにされたという結果だけしか察知できない。


 見えないとは、何なのだ……。不可視ではない。俺の目が追い付けないのだ。






 種を変え、品を変え、か? 俺は斬られ、切断され、穴だらけにされ、貫かれ、ぶち抜かれ、串刺さられ、破裂させられーーもう、無抵抗かつ、ひとりりでに無限に再生するサンドバッグの如しであった。


 身が砕ける、崩れる、そんな痛みには嫌な程慣れているとはいえ。うんざりする。避けれるなら避けたいものだ。だがもう、気づいたら結果だけが刻まれていて。


 時折、鼻腔を、そそる匂いがさしていたが、それの正体に気づいた俺は、安堵と共にえぐみに苛まれていた。この女の匂いに惹かれているとかではないということ。俺は、俺を旨い、と思っているのか、ということ。


 えぐみの方がだいぶ強い。強烈も強烈。それは、俺の肉片が、問題なく泥に還れるとはいえ、そのとき、確かに熱を持たされ、焼けていた証だから。


 もしかしてこれか? 思っていたよりもきついのは。このせいなのか? 泥に変換して、戻して、実質損失なし、が崩れている? 匂いとして出ていった分は、循環から外れてしまったのではないか?


 疼くきがした。焦げ焼け、火傷。そんな幻痛。


 ……。力をそのまま振りかざしているだけだ。


 彼女の放つ、自分を今度は十字に割いたそれを味わいながら、思う。


 ただの力に過ぎない。


 当たれば、それだけで事足りる。何の調整も、何の精密性も必要としない。気ままに振るうだけで、十分に致命の一撃を積み重ねられる。


 生の力を浴びせられているに近い。純度と強度が極まった、その結果、燃え尽きぬ白熱となったそれを振るわれているだけに過ぎない。


 ……? ()()()()()()()


 細やかな肉片さえ丸々消失ではなく、殆どは循環にそのまま還っている。本来、サクサクと細切れにできるくらいの出力、引っ掛かりや抵抗も抱かせず、透過していく、に近いそれら。それが接触している瞬間も、通り抜けていく瞬間も見えず、俺にとって、結果だけが齎されているに等しい。


 それで、これだけ? たった、これだけ? ただ斬られただけ、と何が違う?


 ……。酷く嫌なことに気づいてしまった気がした。


 既に出力は本来の全開よりも遥かに落ちた後、か? こんな状態で、加減をしているなんて、ある筈もない。ただ、そうなってしまっているのだ。


 間違いであって欲しいと思う。何せ、胸糞が悪すぎるし、彼女の代わりに彼らをメッセンジャーに仕立てるにしても、難易度が急上昇することとなる。


 時間制限は、俺由来だと思い込んでいた。だが、逆なのかもしれない……。だが、だからこそ、俺自身の時間制限は一気に短くなる。……結局、俺由来ではないか……。


 さて。限界を超えて損傷を受けたなら、俺という部位は、果たしてどうなるのか? まだ、試したことはない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()






 泥ではない。岩の塊が飛ぶ。その背後の、砂の大河がうねりをあげて、逆巻き、大蛇と化したかのように、彼女へと、襲い掛かる。


 避けない。


 尾が、消し飛ばす。


 斬撃ではない。伸縮しての、締め潰しだ。消し飛んだのは、接触時間の長さ故に、注ぎ込まれて、締められている間は散らないように抑えつけられ、離れたと共に、溶解の段階を飛ばして消し飛んだ。既に粒なのに、粉なのに、ある、のか……?


 岩は――斬撃だ。それも、二つ。バツ印に刻まれ、それは、俺を透過する。本来斬撃なんて効かない筈の俺に、熱なんて諸共しない筈の俺に、灼かれる痛みを刻んでくる。


 痛みに慣れていなかったら、心が既に折れていたことだろう。


 他人事過ぎた。他人事のように生き過ぎた。自分の身で、自分で闘っていて、まるで、赤の他人の経験や記憶を参照しているときと何だ変わりない。


 痛みへの慣れだけは本物な俺は、それだけを支えに、この最も重大な数分間を何があろうと耐えねばならない。


 すると、ふと頭に浮かんだ、本来の耐え凌ぎが為の形。誰かが為に耐え凌ぐ者。それは、どんな姿をしているか? 俺はそれを、擦れる程に何度も何度も見返した。あれは、俺が生き足掻く為の道標そのものである。


 まだ、このまま棒立ちするよりは可能性がある。他の経験よりも使い、こなせる筈だ。






 ……。駄目か……。起きない……。脆弱過ぎるだろ……。


 と、彼らが辿り着いた、本来の俺の目的地の地下の岸から、彼らを並べて寝かせ、俺というヒトガタを彼らの十倍の数残して、意識を割くのを一旦辞めた。刺激に反応して、事が起こればまた意識は勝手に割かれる。


 そうして。そこで予め試してみたそれを、地面越しに、今闘う俺へと持ち帰る。


 本来であれば、思考し、想像し、形作るが為の試行錯誤の時間。並列することで俺はそれを踏み倒した。






 何でこれが最適解になっているのやら……。


 白光と鞘当てし、火花が散る!


 俺は騎士の真似事をしていた。


 消費を抑える為の、泥を粘土密度に固めた全身鎧という名の外骨格。ロングソードに、ラージシールド。騎士様の正統なる装備をなぞり、俺が何をしたかというと、魔法勝負という土俵をハックしたのである。


 最初からこうしときゃよかった、と後悔すらある位だ。……。いいや、最初からなら流石に、こうやって並列を切って意識を集中させたとて、間に合わんよ。今だって、受けているのではない。予測し、置いているに過ぎない。


 そこに、これまでの観察を乗せて。


 意識が、正気が無かったとして、これまで彼女が辿った道筋が、その行動に微塵も乗っていないなんてことはあり得ない。寧ろ逆に、正直なくらいとことん、乗っかるのものである。


 どうして、魔法による斬撃ではなく、物理的な斬撃、斬撃飛ばしであったか?


 もしや? と思った。彼女は魔法が嫌いなのではないか、と。


 能力故に、ある意味当然といえる。制御できてるかできていないかでいうと、今は制御できているのだろう。ああ、無論、こうなる前のあのツインテールがあった頃の彼女だ。


 それでも。その能力が制御できていなかった期間はだいぶあっただろう。相当長かったかと。最低ででも半生、下手すれば、ここ一年くらいでの漸くの制御。


 肉体制御が為に、俺自らも真似事棒振りとして繰り返しなぞったことが功を奏していた。


 結果的に、撃ち合えている。


 鍔迫り合いも、創り出した刃が保つ範疇(はんちゅう)ではできている。それもすぐさま再生できる。時折、ねっとりとした粘液のような魔力がそれを邪魔するかのように阻害してくるようになったが、それはそれで、泥で覆って、伝わせてぽとりと落としてしまえば事足りる。


 それの属性は、どう見たって、白熱のそれではない。


 恐らく、掌握。……。あのねばねばが、掌握?


 ……。俺は数多ある。俺は、巌の如く大質量。俺は、泥の如く形は自由自在。延長ではない。拡張である。


 彼女の力が、掌握、それも、概念を含めた~熱の掌握。~には何でも入る、だとするのならば、一応説明はつく。あのねばねばは、絡めとるという意味での、掌握の拡張であるならば? いやだが、あの白熱は、光は、説明がつかない。


 ……。埒外。それこそが、答えか。魔女となったことで生じた、能力拡張。魔法使いと隔絶した、壁を越えた先の、埒外。つまりもっと、概念的で、広範で、一見、繋がって見えない程の理論の跳躍に見えるかのような。


 ()()()()()()()()()


 俺が生まれ落ちたこと。母が俺に吸収されなかったこと。脆く脆弱に産まれ落ちたこと。物心がついた頃には、成り損なっていた。半ば成っていた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――


 ()()()()


 白光の出力が、また落ちた。最初見せたのと同じ。また髪が。??? 今度は再生している。色はまだ白のままだが、左右のツインテールが再生している。


 形が定まっていない? 完成系が見えていない? どうなりたいのだ? どうなろうとしているのだ? 魔女だというのなら、そのコンセプトは何だ? 彼女は、結局、()()魔女だ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでくださり、ありがとうございます!
少しでも、面白い、続きが読みたい、
と思って頂けましたら、
この上にある『ブックマークに追加』
を押していただくか、
この上にある
【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に
していただけると幸いです。

評価やいいね、特に感想は、
描写の焦点当てる部分や話全体
としての舵取りの大きな参考に
させて頂きますの。
一言感想やダメ出しなども
大歓迎です。




他にも色々描いてます。
長編から連載中のものを1つ、
完結済のものを2つピックアップしましたので、
作風合いそうならどうぞ。

【連載中】綺眼少女コレクトル ~左目を潰され、魔物の眼を嵌められて魔法が使えるようになったエルフの少女が成り上がる話~

【完結済】"せいすい"って、なあに?

【完結済】てさぐりあるき
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。