↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
293/353

騎士団長ケイン VS 領主ウィル・オ・ウィスプ Ⅰ

 ゴロロロロロロ、ガララァァンンン!


 ザァァァァァァァーー


 王都に降り注ぐ豪雨。


 勅命も相まって、都市の中央高台の王宮を出て見下ろす都は、静まりかえっていた。夜ではないのだから明かりはついていない。それも相まって、益々、まるで他に誰もいないかのように思えてしまう。


 ウィル・オ・ライトはその身が濡れることも構わず、踏み出した。


 濡れる。濡れてゆく。自慢のローブが湿気てゆく。


 一つ。


 あり得ないものが見える。


 こちらへ向かってきているように見える。真っ直ぐに。たった一人だ。あれは、騎士?


 激しい雷が落ちる。


 照り返すかのように、煌めいた。それに落ちた訳ではない。だが、それの身を、照らし、輝かせた。


 水色の液体に薄く覆われた、角や繋ぎ目の無い、丸みを帯びた全身鎧を纏い、水緑色の、時折うねる手槍二本をそれぞれの手に持つ、歩を進める中肉中背の騎士の姿である。


 たった一人だ。


 明らかに立派で。明らかに普通でない。明らかに、魔法の武器に魔法の鎧。


 特徴的な装備である。それを目にしたら、それが誰であるか分からぬ者など、今のこの世界には存在しないであろう。


 それほどに、その名を轟かす、高名な騎士である。


 騎士ケイン。正確には、騎士団長ケイン。最新の騎士団長である。


 上級騎士や上位の魔法使い、領主や貴族の間では未だ忘れられず心に刻まれている、かのウィル・オ・ライト。それが蹴った席の後に座った者が、彼である。


 あの、騎士『牛鬼』が座らなかったのだから、必然、座ることになったのはこの男。かのウィル・オ・ライトによって見出され、鍛え上げられ、肉薄するに至った騎士である。


 何せ。一切の反対が出ず、男はその座に就くこととなったのだから。そんなところまで、皮肉なことに、かのウィル・オ・ライトと同じ道をいっている。


 きちんと叙勲を受けたところと、魔法使いでなく騎士であるというところが違いといえば違いか。


 念のため、と、入り口直ぐに、生成した塊を立てかけた。ヒトガタである。豪奢なローブを被せたヒトガタである。それは、遠目には、前王の似姿に見えることであろう。






「ウィル・オ・ウィスプ殿。釈明はあるか?」


 その男は、一切脇道に逸れることなく、真っ直ぐに、向かってきて、ウィル・オ・ウィスプの前に立っている。


「ケインの小僧か。お前を呼んだのは、コイツか?」


 自身の後ろを指さしながら、ウィスプは言った。


 ウィスプは、自身と対峙するその男のことをよく知っていた。一方的にではあるが。この男がウィスプを知っていることは? ウィスプを知っているかなんて、一般常識の如く。誰もが知っていて当然なのである。


「? ならば、新王の仕業とでも? 確かに、新王は強力である。専ら魔法使い相手には強い。どれほど数が集まろうとも、集中砲火を受けようとも、やられる姿は想像できぬ。だが。騎士もおろう。他の王子たちもおろう。勝てぬ筈だ。……では。ウィスプ殿。新王は何処だ? 全滅はあり得ぬ筈だ。そうであれば、儀式は動かぬ。旧き契約は履行されぬ。条件を満たさぬのだから。故に。何処だ? 前王殺し、王子殺し、貴公なら、為せるであろう。その焔を宿す貴公であれば」


 ぺらぺらぺらぺら。どうやら、こいつは知っている側であるらしい。何やら特殊な役割を持たされたか、役職故に、知らされているか。なら、後ろのアレは逆効果だったか。仕方ない。それでもやらねばならなかった。何故このようなことをした、そのものが、尋ねるために、問いかけるために、必要だからだ。


 ()()()()()()()()()()()()。外に出てないのは確かだ。魔法による感知を張っている。アレは、わざわざ、不確定な事象の検証のために身を張るような奴ではない。


「もうちょい、考えて喋れ。頭足らずか? その地位に就いていながら。これならば、あの愚息の方が数段ましだった」


 さて。こいつを自分が知っているのは、あの愚息と関わるこいつを見ていたからだ。そして、だからこそ、効果覿面だろう。


 こいつは騎士として、愚息に似ている。何せ。愚息に弟子が、後継がいるとするならば、間違いなく、目の前のこいつがそれに該当するからだ。


 だが、ところどころ、劣る。僅かに劣る。愚息は自身の心を半ば殺していたが、こいつはそうではない。かつてのこいつのかつての蔑称がそれを示している。


「き……貴君には、残りは……、ぶちのめして……から!訊くことと! しよう! いぎぎぎぎぎぎ――」


 鎧に纏う水色が、紅潮していた。軋る歯同様、その怒りを反映するかのように。


 そう。こいつは、感情を完全には乗りこなせない。それ故に、こいつのかつての蔑称は――泣き虫ケイン。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでくださり、ありがとうございます!
少しでも、面白い、続きが読みたい、
と思って頂けましたら、
この上にある『ブックマークに追加』
を押していただくか、
この上にある
【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に
していただけると幸いです。

評価やいいね、特に感想は、
描写の焦点当てる部分や話全体
としての舵取りの大きな参考に
させて頂きますの。
一言感想やダメ出しなども
大歓迎です。




他にも色々描いてます。
長編から連載中のものを1つ、
完結済のものを2つピックアップしましたので、
作風合いそうならどうぞ。

【連載中】綺眼少女コレクトル ~左目を潰され、魔物の眼を嵌められて魔法が使えるようになったエルフの少女が成り上がる話~

【完結済】"せいすい"って、なあに?

【完結済】てさぐりあるき
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。