全速前進! 三日三晩 × 2 + α
メモ:ダメそうなら後日この話自体オミットか、もっと薄く流す感じのダイジェストに書き直す。
「……起きたか」
与えられたホテルの個室。
ベッドサイドで椅子に座っていた全裸の少年は、目を覚ましはしたものの、カエルのようにのびて動けない青藍に、そう声をかけた。
あれから四日が経った。
あの二人を帰して。
理事長に、黒騎士の娘たる彼女の境遇を一先ず押し付けて。
『今後を考えるなら、そちらの手出しで、彼女を迎えるべきだろう。まさか、私たちと共に暮らさせるつもりとは、言うまいな。それに、私たちに依頼したような外の領域への派遣が必要な際、彼女の力を借りれるかどうかは成否を大きく分けると思うぞ? 世界を跨ぐことを考慮すると、替えがきかない。要するに、投資しとけ、ということだ』
あっけないほどあっさりとそれは承認された。
彼女は学園外縁に家を与えられた。そこで生活しながら、彼女自身の現状の常識を確認、すり合わせ、欠けていれば学ばせる為の講師の派遣。魔法を含めた、基礎的な教育の授与。それらを、一先ず、私たちの息子が産まれ落ちるまでに片づけておいてほしい、と。
生れ落ちた息子と共に旅立つのならば、最低限それ位は必要だろう。彼女自体に適正があれば、始まりの園で学んでいって貰うというのもありではあるが、現時点では、資格あるか試す以前の問題だと。だからこそ、上記のような形で落ち着いた。
何れにせよ。厳しい詰め込み教育と、安全でない外で行動していくための最低限の実践教育が待ち受けている。泣き言吐いたり、逃げたり、サボるような類ではないと信じたいが、ダメならばその時はその時。あの契約の穴を利用して、契約内容の再調整が必要となるだろう。あの黒騎士たちも、恐らく、それにかこつけてやってくる。だからこそ、乗り越えて欲しい。間違いなく、面倒だからだ。産まれ落ちる私たちの息子も、今度は、その場に出て、色々口出しするに違いないのだから。
そんなこんなで。
私と青藍は、互いの中に相手の魔力が無いことに飢餓したのか、これまでとは種類も質も違うストレスに限界だったのか、とにかくいろいろ、もうダメだったのだろう。
並んで歩いての、夕焼け射す帰り道の途中、青藍の足が止まったのに、少し遅れて気づいた私に、青藍は、後ろからしがみつき、そのまま、前にくるりと回り込んで。
私の青藍の身長差故に。そうやって青藍が私にうずくめようとすると、青藍の顔は、私の敏感な部分に服の上から熱い息をかける。
幸いに、学園区画外であり、碌に人も通らない、建物などもない、交差路でも交易路でもない碌に人の通らない道であった。
だが。
必死で、青藍を押し止める。ここでおっぱじめるようなことになっては最悪だ。この症状を私は知っていた。知識として。魔女の本能。肉欲の暴走。
でも、ここまで耐えていたのだ。未だ、青藍自体に意識は残っている筈だ……。どうすれ……ば……。
そうして、私は血迷った。
『眠っている君に、私がキスをして。目を覚ました君と、というシチュエーションから始まる甘々展開を私は望む。外で獣のように、誰かに見られても気にしない、というのは違うだろう。それに、産まれてくる息子に、どう説明する……? ほら、眠る君を、私に抱かせてはくれまいか?』
説得力も、ムードも皆無……。おまけに、産まれてくる息子の下りなんて、こんな状態で言っても無駄だろう……。抑えるために言うなら、寧ろ、これだけでよかっただろうし、何で、これで通ったんだよ、と、動揺していたとはいえ、無茶苦茶だ。
青藍に理性が残っていたかというと、怪しい……。
青藍に、シチュエーションのための役を演じる理性は残っておらず、ただただ獣だった青藍に、その感情を、青藍の能力によってお裾分けされた私は、三日三晩かけて、青藍を抱き潰したのだった。
「あれから何日経ってる?」
「四日だ。行為に三日。君が目を覚ますまでに一日」
「あと三日かぁ……どうする?」
と。青藍は正気の目をして、座る私の足と足の間の付け根にあるものを見つめている。
「君のしたいように」
「それじゃあ、眠り姫を起こす王子様プレイとりあえず一回して、ピロートークでも満足いくまでしてから、そろそろ決めましょうか。あの子の名前」
「……それなら真面目に、服を着て、まともに話し合って決めるべきではないか?」
「まだ貴方疼いてるじゃないの。わたしだって、そう。まともに話し合うために。欲としても。触れ合いも。会話も。心身を満たしてから。言っておくけど、わたしだけ、じゃあダメよ。貴方、わたしのせいでいっつも不完全燃焼でしょ? 今回だけは、絶対にそれじゃあ駄目だから」
上体は何とか、両手の支えという助けを得て起こせている青藍ではあったが、腰は完全に砕けているままだった。
「前半の三日間よりもえぐいことになるぞ? 耐えられるのか? 自重を捨てたら、多分私は止まらないぞ? 一般的な魔女の伴侶と魔女との、魔女側に私が、君が伴侶側に成り果てるぞ? 覚悟は……いいか……?」
「望むところよ♡」
そうして――気づけば、最後の日。日が昇れば、この籠りの日々は終わりとなる。
「……。大丈夫……な訳ない、か……」
明らかに人様には見せられない顔になっているし、意識は他界してるが如くだったし、溢れて、噴き出して、溜まって、凄まじい光景が広がっていた。
塗れているのは、青藍だけではなく自身もそうで。
私は知った。意識が飛んでようが身体は動くし、反応するのだと。私も。青藍も。それどころか寧ろ、そうなった方が、乱れ具合は増すらしく。
これが、中から人がいなくなると自動で清浄される部屋でなければ、掃除、修繕は、ハードルの高い大仕事だっただろう。
そう思える程に。部屋は汚損されて……いや、私たちが汚損してしまっていた。ベッドだけではない。床も。壁も。天井、までも……。
青藍がのびていることを考えると、この無茶苦茶は、枷の外れた私自身によるところが大きいのだと思う……。
互いから、相手由来の魔力が尽きるというのが、これほどの惨状を呼ぶのなら、手段としての行使が憚られるし、後を考えて使わねばなるまい。
……。大丈夫、なのだろうか……。
改めて青藍を眺め、思う……。
例えばだが。右手に剣を握り、振るう鍛錬を、剣を碌に握ったことのない、もやしな素人が始めたとする。年単位でひたすらにそれを続けた結果、大きく変化を生じるのは当然の如く、その右手。大きく肥大する。
そんな例に準えるのならば。
カエルのようにのびた、人様に見せられない顔をした青藍を、青藍の両足の前に立ち、見下ろす。
……。本当に……大丈夫……なのだろうか……。
不可逆。変形。拡張。沈着。人体とはここまで……と思う以上に、それは自分の所業によるものであるという事実が、胸を刺す。二重の意味で胸を刺す。
前者は、純粋に、青藍自体に対する心配。
そして後者は。
……嘘、だろ……。
視界に、下から、現れ、映り込む。
ある意味、この惨状を生み出した元凶は、未だ健在である、ということであるらしい。
青藍に問い掛けようが、返事は得られないことは考えるまでもない。だから私は、定められた期限と、青藍との取り決めを天秤にかけ、後者に傾いたことを感じたのを最後、私の意識もまた――飛んだ。




