第四話 朧闇朔
――日曜日。ライブハウス『エンジェルランズ』
その金髪ロングウルフヘアを振り乱しながら激しくドラムを叩いているイケメンのドラマーはステージ上で明らかに浮いていた。黒いタンクトップに黒いレザーパンツ。周りにいる貴族のようなヴィジュアル系バンドメンバーを食うように、一人ハードロックドラマーとして客を魅了していた。
客席からその様子を見ているルキとリノ。
酒のグラス片手にリノがルキの肩に手を当て耳元で叫んだ。
「ルキ! あのドラム最高ね!!⋯⋯」
◇
ライブが終わりルキは、一つの建物に何軒ものお好み焼き店が集まる『お好み村』の中の行きつけの店にリノを連れていった。
エレベーターの扉が開いた瞬間、濃厚なソースの匂いが立ち込めた空間が広がる。
ルキはリノと鉄板の前に並んで座ると店員に話しかけた。
「すいません。肉玉そば。イカ天、ねぎ、トッピングで。リノはどうする?」
「私は肉玉そば。イカ天、コーン、トッピングで」
店員が頷く。
「分かりました」
じゅうぅぅぅ!!!!
薄く丸く広げた生地の焼ける心地よいサウンドをルキの声が切り裂く。
「あっ、あと、とりあえず生も二つください!」
焼けた生地の上には大量のキャベツが山のように盛られている。
目の前の熱気。あちこちの熱気。店内全体の熱気。
「「かんぱ~い!」」
グビっ、グビっ、グビっ、グビっ。
リノの飲みっぷりが半端ない。
「ぷは~!⋯⋯ちょっと、最高ね、ルキ! うふふふふ」
「ケモノかよ、リノは」
「ケモノじゃないわよ!!」
「それでどうよ? 朔のドラムは?」
「朔?」
「ああ、あのドラマーの名前朧闇朔っていうんだ。みんなからは朔ちゃんって呼ばれてる」
「朔ちゃんね⋯⋯って、もう最高!! テクニック、力強さ、見た目、パフォーマンス、どれを取っても、ものすごく魅力的だわ!」
「だろ?」
「ええ。どういった知り合いなの?」
「ああ、サクはうちの学生だよ。一年生、たしか歳は十九」
「えっ? うちの学生なの?」
「そう、でもサクとは学内じゃなく、知り合いのバンドの打ち上げで知り合った」
「へぇー⋯⋯で、そのサクちゃんを、あのバンドから引き抜くの?」
「いや、あのヴィジュアル系の一人と友達だから叩いてるだけ。本人は早くやめて、ちゃんとロックしたいって言ってた」
「そうなんだ。じゃあうちのバンドで叩いてもらえるわね」
「ああ、たぶん大丈夫だと思う」
突然ルキへ擦り寄るリノ。
「ねぇねぇ、ルキって彼女いないって言ってたわよね、本当なの?」
「ああ、本当だ⋯⋯逆にリノはどうなんだよ、彼氏いるのか?」
「私? 私も恋人はいないわ」
「そっか⋯⋯ふ~ん⋯⋯」
「えっ、何? 何か言いたげね」
「い、いや、別に。じゃあリノ、サクに連絡しとくぞ」
「ええ、お願いね、ルキ」




