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言葉を咀嚼しない人の話

その人の性格は、簡単に言えば自己主張が強い人だった……。

 

 ある日、ある商業施設内でちょっとしたアルマゲドンが起きていた。



「大変申し訳ございませんが、一度うし――」

「うるさいわね! あなたの人生の先輩なのよ! お分かり?」


 その"お"方の言葉に、その"お"方に声をかけた人は、次の言葉を考えることができなかった。



(人生の先輩? だから何よ!)

 その"お"方に声をかけた人は、この内なる胸の想いをそっと納めた。



 《ガヤガヤ(おいまだかよー! チッ! 飲み物ぬるくなるやん!)ガヤガヤ》



 その様な声に構う事ないその"お"方は、革の包みから小さな丸い富の中身を出そうとしていた。

 しかし革の包みにあるはずの小さな丸い富は、なぜか革の包みから出てこない。



「あらー、なぜ出てこないのかしら」



 その"お"方の目の前に立つ、先程の人が返事を返した。



「大変申し訳ございません、私は触ることはできません」



 目の前の人がその"お"方に返事をした直後、その"お"方の背後からざわつきが聞こえ始めた。



(あらー、うるさいわね! 私の時間は無制限なのよ!)



 テローリン!



 その"お"方のすぐ後ろに並んでいた、若いスーツを着た男が、その"お"方の横に着き、次の様に述べた。



「あー、お姉さん。これねーキャッシュレス専用レジなんですよー! あ、あと奢りじゃないんでお金ください!」



 至極真っ当な意見である、でも! なぜか、その"お"方はキャッシュレスならお金はいらないと勝手に解釈し始めた!



(キャッシュはお金、レスは無し、なら"お金はいらないです"じゃないのよ! だから家にあった、小銭が数枚入っていない小銭入れしか持って来てないのよ! 私は人生の先輩なのよ! 私はあなたのお姉さんになった覚えは無いわよ!)



 のちに厳重注意となったその"お"方は、未だに此度のアルマゲドンについて、納得していないという……。



 終。

商業施設によくある大量の小銭を出して、レジが混雑するあのシーンを想像しながら書きました。

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