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報告-17の月、6日、3枚目

出発の時

納得した様子のサクラとゴッセの間に、コッヘルが話を差し込む。

「サクラさんを幽閉するのは心苦しいのですが、国の法では・・・その・・・粗末な部屋しか用意ができませんでした。私の父も半分は情報を持っています。ですので、父の目が届く範囲では部屋以外の不便の無いようにしますが、少しだけ我慢ください」


眉尻が下がるコッヘルを見て、サクラは大型犬の耳と尻尾が垂れている姿を想像してしまい、顔を引き締める。

その様子を見たコッヘルは、サクラが緊張していると誤解し、さらに謝罪を続ける。


埒が明かないので、ラスパが幽閉の部屋への案内を始める。

少し古びた扉が開かれ、サクラは部屋の印象を口にする。

「・・・・幽閉ってもっと狭くて暗い所じゃないんですか?」

「え?」

「サクラって面白いなー」

「どんな部屋を想定していたかはもう聞きたくないが、これでも王女を幽閉するにはここは酷いぞ?」

エレバとアドソンとスタンツェが突っ込む。


「まぁ感覚は人それぞれですからね。私には快適に過ごせそうです」

ドアが開いた瞬間、確かに埃は舞ったが、ペアンが魔術で風を通したのですぐに快適になった。

監視のためにワンルームという建前であるが、風呂、トイレは壁に囲われており、寝室もドアからは見えない。

ただし、ドアに監視窓がついていると言っても、サクラの元居た国の感覚で言えば、昔ながらのマンションのドアの覗き窓と同じサイズだ。

死角だらけで、意味をなさないと感じる。


「サクラさん、貴方がどれだけ精神的に強くても、東の国としてこの扱いは大変申し訳ないものなのです。出来るだけ早く鎮静化して、皆で戻ってくるので、耐えて頂けますか」

「あ、はい。もう一度繰り返しますが、私は快適に過ごせそうなので、大丈夫です」

「・・・コッヘルが気にしすぎなんだ。サクラ、厨房の空間魔術は預けておく。あとは何が必要だ?」

「スタンツェさんが試作品を作っている手紙セットが欲しいです。皆さんと情報を共有したいので」

「バレているのか・・・・こいつら三人に渡せばいいのか?」

サクラが手を出して催促したので、思わず眉を顰めるが、スタンツェは素直に六枚分の手紙のような紙を出す。


「はい、全員に一枚ずつでお願いします」

「・・・まぁ良いか。おい、東の国の三人にそれぞれこれを渡す。・・・ここにこうやって書いた文字は、右下の魔石を指で弾くと、サクラにそのまま送られる。逆にサクラからの文字も送られてくる」

それぞれの瞳の色に合わせた紙をスタンツェが手渡す。

青い紙にスタンツェが名前を書いて魔石に指で魔力を通すと、サクラが持つ青い紙にスタンツェの文字が現れる。

サクラの感覚で言えばチャット形式になるが、スタンツェが何もないところからこの魔術を生み出したことは、ペアンにとっても興味深い知識なのだという。


「これは凄い!スタンツェ、この魔術の織はどうなっているんですか?これもサクラ嬢の提案ですか?」

「これにレシピ書いて、サクラちゃんに送れば良いのかー?」

「そうですね、ラスパさんとは料理の話がしたいですね」

「・・・では私は医魔術の話を」

それぞれがサクラと話したい内容があり、時間が空いたときに情報を共有することとなった。


ゴッセとコッヘルが時計を見ながら頷く。

「そろそろ時間だな、行こう。サクラ、早めに戻ってくるからな」

「サクラちゃん、あたしがいない間はペアンに守ってもらってねっ。何かあれば呼んでよ?」

「はい、皆さん、行ってらっしゃい。ご武運を祈っております」

東の国に対してメッツェン以外の西の国の人間が、現地に向かったことになる。

ウィスカーはその魔力ですぐにでも帰って来られるのだが、建前上メッツェンは一人で幽閉される形となる。


七人がいなくなるとあっという間に静かになった。

外の景色が見えると思っていた窓は、魔術で描かれており、景色が変わることで外の時間を知らせてくれる。

食事は一日二食とお茶を騎士と侍女が届けてくれることになっている。

ペアンの分はもちろん準備されないので、アドソンとスタンツェが補充してくれた食品を隠してある。

空間魔術の厨房はドアから見えない壁に設置して、その中でペアンとサクラはで食事をする予定だ。

衣類や文房具などは最低限であれば、買い物の依頼が出来るし、王城の図書館から本を借りる事も出来る。


「コッヘルさんは心配されていましたが、ここは快適な造りですね」

「サクラが望めば、この部屋と我の城を繋げることも可能だぞ?こんな狭いところで良いのか?」

「二人で過ごすなら十分かと思います。私は気に入りました」

ソロキャンプが出来る平民を舐めるなとサクラは拳に力を籠める。


幽閉一日目は部屋を整えるのに使った。

この部屋を使うような事態が起こらず、長年掃除していなかったのだろう。

掃除が終わった頃にお茶を届けにきた侍女が青い顔をしている。

どうやらあまりの部屋の酷さに、出して欲しいと願えば違う部屋を準備していたそうだ。

なるほど、そうやって精神的に追い詰められるのかとサクラは納得する。

もちろん部屋の交換の希望はない。


埃まみれになってしまったので、風呂に入り着替えたいと伝える。

一人で風呂に入ることになるが、服は文句を言わなければ用意してくれるそうだ。

食事を持ってきた侍女と同じ制服を揃えてもらったけれど、ものすごく恐縮された。

質素だけど上等なドレスもあるのだそうだが、サクラとしてはパリッとアイロンが掛かったシャツとスカートのほうが好きなのだ。

色々と想定外のことが起きたようで、護衛の騎士と侍女の顔が青ざめたままだ。


サクラはもっと横柄な態度で来てもらって良いのだが、他国の王族にはあまり強く出られないのだろう。

他国の王族を幽閉と分かっているなら、丁重に扱うか徹底的に嫌がらせをするか、どちらかにしてもらいたい。


「中途半端なのは誰の指示でしょうか」

小さく呟いたサクラの一言は、騎士と侍女の背筋に冷たいものを走らせた。

そそくさと出て行く二人を見送って、サクラは一先ず風呂に入ることにした。

ペアンは部屋全体に侵襲者や魔術が入り込まないよう、遮断の魔術を掛けるのであった。

どこででも眠れて、どこででもマイワールドを広げられる元ネカフェ民サクラだよっ☆

ここまで読んでくださり、ありがとうございます

連日23時アップ予定です。


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