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報告-17の月、6日、1枚目

寝耳に水からの取り乱し

「あれ、眠ってました」

サクラは美味しいお酒を飲んで食べて、いつの間にか眠っていたらしい。

結局、いつも通りの時間に起床する。

今日からは正式なコッヘルの婚約者の役としての生活が始まるのだ。

この王城に来た日に起きた侍女の騒動により、王妃が担当スタッフを慎重に選んでいるそうで、午後から謁見の予定があったはずだ。

コッヘルや他の皆の打ち合わせを兼ねて、朝食を共に取ることになっている。

ウィスカーとペアンと共に身支度を整えて、コッヘルの執務室に向かう。


全員で大きなテーブルに着席する。

短い辺にサクラが一人で座り、その両隣にコッヘルとゴッセが座る。

ラスパがハーブティを淹れてくれたので、サクラは一口頂く。

コッヘルとゴッセがサクラに西の国で起こったクーデターの話をする。

「・・・クーデターって・・・どういう事ですか?」

サクラは目を見開く。

「今は地方での火種だけれど、ここまま行けば西の国で戦争が起こる」

「戦争・・・それは回避出来ないのことですか?」

「もうずいぶん前から小さないざこざは起こっているんだ。でもこれはサクラにとって悪い話じゃない。それに君はここで幽閉になるだろうから、大丈夫だよ」

「大丈夫・・・なんですか?」

カップをテーブルに戻したサクラは、小さく震えている。

ゴッセは安心させるように微笑みながら話しかける。


「うん、たぶん僕たちは東の国王に派遣されるだろうから、ちょっと離れるけれど、君は守られるっじょっ」

急に襟首をつかまれたゴッセは、言葉を継げないまま、サクラに服を引っ張られる。

「命をなんだと思っているのですかっ。戦火が近づいて来ているというのに、私だけのうのうと守られるだなんて、なぜそんなことが言えるんですかっ」

「さっ、サクラ・・・」

「ゴッセさんもスタンツェさんもアドソンさんも、皆勝手にっ」

「そこまで」

サクラの首元で猫型を取っていたペアンが口を開くと、サクラは意識を失い、ペアンに横抱きにされる。

いつもよりも険しい顔をしている魔物に、その場にいた人間たちは自然と背筋を伸ばす。


無言の圧に耐え切れず、コッヘルが口を開く。

「・・・知識の魔物殿」

「彼女には一度眠ってもらった。強く大きな感情が我に流れてきて、魔力の暴発の危険があったからな」

「そうか、やっぱり怒ったか」

「サクラが汝らに怒るわけがないだろう。あれは泣いていたんだ」

「は?なぜ?」

ゴッセとスタンツェはペアンの発言に驚き、立ち上がる。


ペアンは小さく嘆息する。

「なぜ・・・か、お前らがまだわからんのなら、我はサクラを連れていくぞ」

「知識の魔物殿、不敬ではあるのだが、私は西の国の者ほど、貴方が守護するサクラ嬢を理解出来ていないのだ。その知識の欠片を教えてはいただけないだろうか」


コッヘルたちはサクラが取り乱したのを初めてみた。

それはペアンも理解しているため、サクラの考えという知識を求めてきた人間に対して無下に出来ないと感じた。

サクラが眠っている間に、自身の城に連れて帰っても、ここに戻ってくると良いそうだとも考える。


「・・・ふん。まぁいい。少しだけ教えてやろう。先程のサクラの叫びは慟哭であった。その鉾先は東の国のお前らも含まれておる。死にゆく者が守るなどどいう言葉を軽く使ったのが、サクラには堪えたようだ。心の中に何らかの想像が湧いていたようだが、我にその想像を見る力がないのが惜しいのう」

「ちょっと、サクラちゃんの心の中まで覗いたら、変態って呼ぶからねっ。ゴッセ、サクラちゃんは自分の身の危険よりも、あんたたちが死ぬかもしれないって怯えたんだよ。そこは上手くやってるって先に言わなかったから、サクラちゃんが怯えたの。分かった?」


ペアンとウィスカーの言葉に、コッヘルが小さく頷く。

「・・・あぁ、なるほど。西の国の貴方たちは、本当にサクラ嬢の大切な人たちなんですね。そして、そこに私たちの席も用意して頂いたと」

「・・・はぁ・・・そこか・・・」

「サクラは色々考えが回る人だったね、話す順番を間違えた」

「順番っていうか誕生日祝いの次の日に、こんな話を出したのも悪いだろ」

アドソンが冷静に突っ込む。

「え、そこもなの?」

「祝い事の準備を頑張ったのに、その主役からこんな話をこのタイミングでされたら、それは殺意が湧くでしょうねぇ。しかも主役がまったく理解していないのであれば、なおさら」

エレバがゴッセに追い打ちをかける。

「・・・ゴッセ、昨日はクーデターの概要を聞いたけれど、もう少し聞かせて欲しい。その上で、サクラ嬢が出来る限り悲しまない方法を考えたい」

「・・・はいはい・・・元からそのつもりだよ」

肩をがっくり落としたゴッセの肩に手を置いて、スタンツェがペアンに話しかける。

「少ししたらサクラを起こしてもらっても良いか。ペアンとウィスカーの立会いの下で、きちんと話をする」

「・・・分かった。サクラの言い分も聞いてやれ。彼女は豪快に見えて繊細だ。魔力の暴発も未知数だぞ」

ペアンの話にエレバが首を傾げる。

「スタンツェ、サクラさんは見る限り魔力が多くないように見えますが?」

「見えなくて良いんだよ。円卓の魔術師(あいつら)に見つかったら、俺やエレバと違って、実験体にされるぞ。まぁそれは今度本人に聞いてやれ」

「・・・えぇ。分かりました」

スタンツェの言葉を受けて、エレバは顔色が変わり、首を何度も縦に振る。


「さて、じゃぁサクラが目を覚ます前に、西の国の現状を説明する。その上でサクラが安心して残れるようにしないとね。今日の昼過ぎには出発予定だ」

ペアンはサクラを別室で休ませることにした。

コッヘルの仮眠室にあるソファに横たわらせ、ウィスカーが見守る。

ゴッセの掛け声に、ペアンもテーブルに着席した。


不安と恐怖は別物。そして個人の感覚は違うもの。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

連日23時アップ予定です。

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