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報告-17の月、6日、密談、コッヘル

編集が進まず、遅くなりました

サクラ嬢の部屋から退室すると、父上に先触れを出す。

訪問と相談の許可を頂き、執務室に伺う。

「それで、婚約者と喧嘩でもしたのか?」

いつもよりは幾分か砕けた口調で、こちらを揶揄う。

「いえ、重大な情報があり、対処に困ったので相談に参りました」

「なに?王女に隠し子でもいたのか?」

「我の恩寵になんということを」

「誰だっ」

「我は人が魔物と呼ぶものだが、跪いて名乗れば気が済むのか?」

先程サクラ嬢の傍にいたときとは全く違う、本来の魔物らしい姿を見せている魔物殿に、私も父上も青褪める。

「<知識の>、この国の人間の不始末は<歌の>我に責がある」

我が国の歌の魔物殿が姿を見せられる。

幸運にも代々国王となった者たちはこの魔物殿と契約することができ、この国は安定している。

兄上も代替わりとなるときに契約していただけるのではないかと、もっぱらの噂だ。


「・・・ふむ。まぁ良い。我はお前たちと交渉にきた。座れ」

幾分か圧が弱まり、身動きが取れるようになる。

何も言い出せず、親子二人で横並びに座る。

歌の魔物殿も同席してくださるようで、空いている椅子に鎮座される。


「・・・それで・・・」

「東の国の長よ、お前は王座に椅子が三つある理由は聞いているか?」

「・・・契約してくださる力のある方と、国王と王妃と考えております」

「聞いてないんだな。<歌の>どういうことだ?」

「人間からは聞いてこないからね。引き継いでもいないのだよ」

「・・・引き継いでおりません。申し訳ございません」

「まぁ良い。話を進めるために一つ教えておく。監視者と契約者と愛し子だ」

「監視・・・」

「<歌の>からすればこの国の長は契約者だ。安心しろ。そして、お前の息子と婚約した者は愛し子と呼ばれる。人ではない者たちから契約を請われる者だ。しかも複数の者たちからな。愛し子を冷遇する者がいれば悪意がなくとも、国一つくらい滅ぼすことは他愛ないと考えるくらいにな」

「国を・・・」

「あぁ、そして、西の国の長を昨日処理してきた。あの王は我には要らないものだが、まだ使い道があるからな。あの国をお前の息子に治めさせ、愛し子を守る拠点とせよ」

「えと、今、何か物騒な単語が・・・えーっと、息子・・・とは・・・コッヘルで宜しいのですか?あの・・・魔物殿の監視を受ける者となるのでしょうか・・・」

「コッヘルは我の監視者ではない。我が愛し子がこの者とその部下を気に入っている。我の愛し子は進みたい道があるようでな。愛し子の望みは、我が全て叶えてやるのが当たり前だろう」

「・・・はっ、はい・・・えーっと・・・それでは、コッヘルと共に転居の手続きを進めますね」

「いや、転居だけでは足りない。愛し子には最高の環境で過ごしてもらわなければならないからな」

「はぁ・・・」

父上の背中がどんどんと丸くなっていく。

初めて謁見を許された形の歌の魔物殿は存在感を消している。

私が話を進めても良いのだろうか。


「あの、知識の魔物殿、先程ゴッセが話していた手順で進めて宜しいですか?」

「こっ、コッヘル」

「あぁ、そうだな、ゴッセとコッヘルの話で手を打つとしよう。我はしばし愛し子と共におる。ゴッセたちが地ならししておくことだろうよ。東の長たちも我が愛し子を裏切ることは許さん」

知識の魔物殿からの笑顔の圧が強いが、なんとなくご機嫌が良いと感じる。

あとで、この方の攻略法をサクラさんに聞いておこうと思う。


「父上、知識の魔物殿からご慈悲を賜りまして、僭越ながら、クーデターが起こった西の国を鎮静化して参ろうと考えます」

「しかし、お前は体が弱くて、国外に出たことがないだろう・・・」

「それでしたら、彼女が私の体調不良の原因を突き止めてくれました。エレバもラスパも彼女の指示を仰いでおります。今日は皆と同じものをデザートまで、お腹がいっぱいになるくらい食べられたのです。見ての通り元気です。私の体の弱さは、毒でも呪いでもなかったのですよ。ご心配を掛けました」

きっとサクラさんなら、自分はなにもしていなくて、ラスパとエレバが頑張ってきたと褒めたたえているだろうなと、口角があがる。


「毒でも呪いでもなかった・・・そうか。いや、だとしても、お前は治政の実践などないだろう」

「それはメッツェン嬢とその周囲の者たちが力を貸してくれます。それにあの地域の混乱を治めるために、知識の魔物殿や妖精の方々からお力をお借り出来ると聞いております」

「そんな・・・メッツェン嬢は魔物殿以外にも契約しているとのか」

「東の国の長よ、ひとつ教えておいてやる。メッツェンという者は西の国の歪んだ穢れのような存在だ。お前たちが会って、コッヘルと婚約を結んだ娘はクラという。クラは我以外にも黄水晶、文具、菓子、茶の妖精に愛されているぞ。契約は本人が望んでいないのでな、我と黄水晶のみが傍に居るのだ」

「メッツェン嬢ではなく、クラ嬢・・・既にお二人と契約を結ばれているのに、我が息子と婚約を結んでも良い物なのでしょうか?」

父上の顔が青ざめている。

そろそろ情報の許容量を超えるのではないだろうかと心配になる。



「あぁ、それは・・・コッヘル、お前から話せばよいだろう」

「・・・はい・・・父上、私は王位継承権を返上致したく過ごして参りました。公の場では体の弱い王子と知られており、臣下となっても碌な執務を行えないと思われていると考えています。王城を出ず現地視察などが出来ない部下など信用に値しないと捉える者もいるでしょう。ただ、今更ここで体が丈夫になったなどというつもりはありません。兄上にはこの国の後継者として、大いに才能を発揮していただきたと考えています」

「・・・ふむ」

「今回の婚約、その直後のクーデターでメッツェン嬢を国に戻すよう注進する者もいるかと思いますので、私に西の国の騒動を治めに行かせてください。メッツェン嬢という存在は婚約破棄後、幽閉とし表舞台には二度と出ません。クラ嬢は知識の魔物殿が夢中になる聡明さで、政にも長けているようです。今後は私の部下として協力してくれます。もし一領地として治政がうまく行くようでしたら、東の国にとっても悪い事ではないと考えます。」

「・・・ふむ。もしクーデターを抑え込むことに失敗すれば、お前の身は危ないのだが、そこは魔物殿のご慈悲を賜ることが出来るのだろうか」

国王として、父親として多くの情報を処理してきた父上が、フル回転で頭を悩ませ、息子の行く末について悩まれている。


にやりと笑う知識の魔物殿は、父上に向かって前傾姿勢となる。

「我は愛し子のために尽くすものには慈悲をやるくらいに、寛大であるぞ」

「・・・全力でクラ嬢を大切にしなさいっ!」

「あっ、あの・・・父上・・・クラ嬢とは本物の婚約関係ではありませんので・・・」

「あぁ、そうか・・・だが、お前はそれで良いのか?」

「西の国から来てくださった方々はそれぞれ理由が違いますが、自由を求めてここに来たそうです。私も、いつ死ぬのかと怯えるのではなく、生きる自由を手に入れたいと思います。その為にクラ嬢と魔物殿にお力を借りようと考えています。結婚はまだしばらく考えられません」

「・・・そうか、それならば王位継承権は剥奪としよう。だが、私の大切な息子であることは忘れないでいてくれよ」

「ありがとうございます。父上」

父上から真っすぐに見つめられるのは少し恥ずかしいが、自分の意見をこうやって素直に伝えたのはいつ振りだろうかと誇らしくなる。


「・・・では、先程名前が出て来ていた、コッヘルと共に地ならしをする者を紹介しよう」

知識の魔物殿が指を鳴らすと、メッツェン嬢が現れる。

美しい跪礼を見せ、姿勢を戻すと黒髪のメイド姿となり、クラ嬢に見える。

そしてワンピースを翻すと、ゴッセとなった。

「お目通しが叶い、光栄に存じます。西の国王女メッツェンを務めておりました、第二王子ゴッセと申します」

「・・・情報量が多い・・・」

同意致します、父上。


「あぁ、追加で情報をやろう。クラはここではない世界から召喚を受け、魂だけがここへやってきた。彼女の頭の中には、我々では到底理解できない知識と経験が眠っている」

「違う世界からの召喚・・・」

魔物殿、そろそろ父上が知恵熱を出しそうですっ。


「ゴッセ、クラは我とこの城に残る。コッヘル達と共に、西の国を治めるようにと話がついた」

「うん、良いよ。そしたら、明日の朝に出発するけれど、・・・クラはこの城で幽閉という形になるのかな?」

「西の国の王女にして婚約者という立場上、騒動が起きているならば、この城で幽閉という手段になりますな。もしくは西の国に戻られるか・・・ただ、魔物殿の愛し子にそのような処遇はどうかと思われます」

「なぁに、我はクラと共に居られれば良い。それとクラはどこに居ても自分の身の周りを快適に出来る能力の持ち主だ。平民と同じ生活で構わないと言い出すだろう。・・・あぁ、興味深い」

「いえ、流石にそれは出来ません。しかし今の客間のままでは危険も生じるかと思いますので、幽閉という形を取らせてください」

「あぁ、では諸々宜しくやってくれ」


西の国と東の国の行く末が決まる密談を、存在感を消して聞いていた歌の魔物は後に語る。

愛し子にちょっかい掛けなくて良かった。

西と東の二国が同時に無くなるところだった。

怖いからもう城から出ない。

アイツらは幸せになるように呪っておいたから、もう来ないで欲しい。


非常に残念なことに、その願いは叶わない。

東の国の国王夫妻が気軽にお忍びデートにいくし、西の国からの遠慮ない客人が足繫く商談にくることになるし、知識の魔物は惚気てくる。

そのため、ますます歌の魔物はひきこもるのだった。


サクラ自身は飲酒の上、自室で爆睡しております。

ウィスカーさんが添い寝チャンスをものにしたよ!

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

連日23時アップ予定です。

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