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報告-17の月、5日、1枚目

婚約式の諸々はすっ飛ばします

目を覚ました瞬間に、ペアンからメッツェン様に擬態させられて、サクラは朝から大忙しだった。

東の国の王妃様が準備してくれた美容部隊がひっきりなしに訪れる。

ウィスカーは水分補給とかお菓子を持ってきてもらうことにして、東の国の人々に全てお任せしていた。

ドレスはコッヘル達が準備していたそうで、色合いもサイズもぴったりだった。

コッヘルをイメージしたような赤がふんだんに取り入れられて居るが、メッツェン様のピンクの瞳が悪目立ちせず、金髪とも良く合う色味のエンパイアドレスであった。


「メッツェン様は本当にお美しいですわ」

「美しい瞳と素敵な髪の色にぴったりのドレスで、まるで女神のようです」

――――言葉の隙間から、歌うように囁く魔術なんだなぁ

気分を高揚させる魔術なのだろうか、不快なことは一切ないが、何となくふわふわと足元がおぼつかない気持ちになる。


時間となり、コッヘルがサクラを迎えに来る。

「・・・これは、これは・・・本日の女神をエスコートさせて頂けますか?」

サクラは差し出された手に手を乗せる。

コッヘルの表情は一見すれば、メッツェンをとても好きだという愛情溢れる笑顔に見えるけれど、サクラは感情が読み取れない。

「・・・えっと、サクラさんで宜しいのですよね?」

「見た目は完全にメッツェン様だと思いますが、サクラです」

「声に乗ってくる魔力はサクラさんですね」

「なるほど、そうやって見分けるんですか」

「えぇ・・・魔術については、今夜の夕食の時にでも皆さんに話しますね」

「あ、はい。お願いします」

婚約者役として正式に契約を結ぶため、今後の夕食はできる限り食事を共にする事になったのだ。

ペアンとウィスカーの機嫌が悪くなるというエピソードもあったが、昼食やおやつはできる限りサクラが作ることで落ち着いた。


コッヘルのエスコートを受けたサクラは大広間に向かい、美しい調べと共に扉が開かれる。

東の国の王夫妻が鎮座する手前まで歩みを進める。

ゴッセはサクラの擬態をしてメイドとして控えてくれているし、今もペアンは首周りで寝ている。

そろそろ起きてほしい。


東の国の国王は穏やかに信仰していく。

「宣誓の言葉をを受け取った。それではこちらの紙に署名を」

「ここにいる皆が、若人二人の婚約の承認となる」

「二人のこれからの幸福を願って」


宣誓と署名が終わり舞踏会が始まってからは、王夫妻の横の椅子に座って、挨拶に来る方に会釈をしていればよかった。

最初の十組で記憶力のキャパシティを超えたので、あとは流れ作業に徹した。

王夫妻が優雅なダンスを披露し、コッヘルとサクラも披露することになった。

「これから宜しくお願いします」

「こちらこそ、色々と話をしていきたいと考えています」

穏やかなワルツで練習した通りのステップを踏むことが出来た。

西の国から来た五人が毎日日替わりで教えてくれたのだから、何とか様にはなっているようだ。

ゴッセの鋭い目つきが怖いけれど、あとで何点だったかを聞いてみよう。

合格点がもらえると嬉しいなぁとサクラは頬を緩ませる。。


「何か考えごとですか?」

「いえ、ダンスの特訓に付き合ってくれた皆から、合格点をもらえるか心配になりまして」

「あぁ、それは私のせいで低くなっては大変ですね」

「いえいえ、そこは問題ないと思います」

「そうだと良いのですが・・・それであちらの皆さんの視線が鋭いのですね」

「・・・はい。まだステップは間違えていないのですが、優雅さが足りないのでしょう」

何とかダンスを踊り終えて、解散となった。


昼食を挟んだ婚約式が夕方に終わったので、お茶の時間は取らずに、急いで着替える。

スタンツェがサクラくれた厨房は今日も大活躍だ。

クローゼットの中に厨房があるとは誰も思わないだろうなぁ。

昨日の下拵えしたものが、いい味になってくれていると良い。


「よぅし、ペアンくん、降りてください。これから夕食の時間までは私は料理作りに集中します!」

「ニャーン」

「悲しそうな顔をしてもダメです。お夕食のときに一緒にお祝いの料理が食べたければ大人しくしているのです」

「ニャ」

「よし、ではウィスカーさん、お手伝いをお願いします!」

「わ、我も手伝う・・・」

「むー・・・・では服を着替えて、髪を縛ります。あそこの男性陣に聞いて、ラフな格好になってきてください」

「分かった。急いで戻る」


「よし、今うちです。ウィスカーさんは野菜の皮むきをお願いします」

パーティーのメニューと言えば、サラダ、スープ、から揚げ、手巻き寿司、ケーキというラインナップで育ったサクラだが、手巻き寿司が難しいので、お城の厨房の方に頼んで石窯焼きのパンを届けてもらった。

あとは魚料理も追加して果物も揃えて、体裁を整えればパーティーになりそうだ。

以前西の国で作ったミネストローネが好評だったので、今回はシチューを作る。

夕食を抜いてもらって材料だけもらってきたのと、アドソンが街で購入してきてくれた分で賄う。

いくつか見たことがない材料があるけれど、味見をすれば使えるものばかりだった。


魔物が想像しているよりも布の体積が大きいが、普段に比べると大分ラフな格好だ。

「こうなった」

「・・・及第点です。髪の毛を結びますね」

「こんな薄着でサクラは過ごしているのか」

「夏はほとんど何も着ていないくらいの時代もありましたよ?」

「サクラちゃん、その服見せてっ」

「夏になったら作ってみましょうかね」

「・・・サクラは服も作れるのか」

「街着くらいなら作れますよ?機械がないので、時間がかかりますが」

「サクラって面白いやつだよなー」

「むしろ何が出来ないんだ?」

「生活と仕事は一通り出来ましたが、機械がなければ何もできませんよ?この世界では馬にも乗れません」

「あぁ、確かに、怖がっていたもんなー」

「はい・・・・では皆さん出て行ってくださいー。時間になったらコッヘル様たちも来ますよー」

野菜の皮をむいているウィスカーさんの横に並び、ペアンくんに生クリームを泡立ててもらう。

「大変だと思いますが、シャカシャカしてください」

ミネストローネスープの材料を火にかけ、サラダの準備をする。

シーザーサラダにする予定なので、ゆで卵と温泉卵も用意する。

から揚げは十分下味が付いていると思うけれど、タレを用意するので、ウィスカーさんに混ぜてもらう。

ほとんどの料理が出来上がり、ケーキのスポンジも準備出来た頃、しっかり目に泡立てた生クリームが出来上がった。

中段にフルーツを挟み、上からたっぷりの生クリームを懸けて、上段に冬苺を乗せる。

見慣れている苺より赤みが淡く、甘い品種なのだそうだ。

「よぉし、出来上がりました!お二人ともお手伝いありがとうございます!!」


パーティーのはじまりはじまり。


それよりも大切なことがありました!ありました?

ここまで読んで下さり、ありがとうございます

連日23時アップ予定です。

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