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報告-17の月、4日、1枚目

雨のち晴れ?

サクラは気落ちしていた。

元々はメッツェンとコッヘルの婚約者候補の話が発端で有り、何某かの理由が出来て破談になれば、西の国からきた人間四人は自由になれる予定だった。

西の国の三人からはそれで良いと言われており、好きなように過ごしてきた。

しかし、サクラは体調に不安があるコッヘルや食の支援を行うラスパ、医魔術を学ぶエレバを仲間という視点で見てしまうようになっていた。

そして、西の国の事情を一部明かした所で、コッヘルからは線を引かれたのだ。

「まぁそもそも、騙していた訳ですので、お茶を一緒に飲めるだけでも有難いことですね」

「我のサクラと茶が飲めるなど栄誉だぞ」

「ペアンくんの所有物ではないです」

「まぁまぁ、今回のことでやっとここを出られるんでしょ?」

「それがなー、コッヘルは夕飯を一緒に食べたいんだそうだー」

少しの間、席を外していたアドソンが扉を開けて会話に加わる。


スタンツェとゴッセは思わず声を上げる。

「はぁっ?」

「えっ?この期に及んで?」

「・・・私はコッヘル様に嫌われたのでは?」

「前にさーメッツェンとすれ違ったのと同じだよ。コッヘルはただそうなのかって相槌を打ったつもりで、サクラにとっては拒絶に聞こえたんだろ?」

「はい。あ、私はまた同じ思考に陥っていたんですね」

「俺は良く分かんないけど、そうみたいだなー」

「あれだけ色々暴露されて、拒否しないって、どういう考えなんだ?」

「それは俺に聞かないでよー」


「とにかく、向こうはこの中にメッツェンが居ないと思って、そこは怒ってる」

「え?俺、いないことになってるの?」

「昨日見たのは偽物だと思っているらしい」

「なんだってそうなるんだ・・・」

「そうしたら、もう一度話し合う必要がありますね」

という訳で、夕食を共に取ることになった。


流石に昨日の今日ではサクラの料理は食べたくないだろうからと、東の国の厨房に料理は手配して貰った。

サクラは毎度お礼の手紙を添えていたのだが、東の国の使用人達はメッツェンが気難しい人間で、晩餐会が開かれないと考えていた。

「お越し頂きましてありがとうございます」

「もう一度お話をしたくてお誘いしました。了承して下さって、ありがとうございます」

コッヘル達が部屋に入ると二人のメッツェンがいた。


先に挨拶をしたメッツェンは跪礼を見せると、深い青の髪に黒い瞳のメイドであるクラに変わる。

挨拶をせず微笑んでいたメッツェンはくるりと回り、金色の髪にピンクの瞳のゴッセに変わる。

「俺は・・・いや、私は東の国の王女メッツェンとして育てられた男だ。今はサクラの護衛騎士を勤めるゴッセという。黙っていたことで不信感を与えてしまったようだ。信じられないだろうけれど、俺が本来は西の国の第二王子の元に送り込まれるところだったんだ」

「・・・なるほど、昨日の違和感はこのことだったのですね」

「コッヘル?」

「東の国の皆さんにはお話していませんでしたが、私は人の魔力の違いを感じ取ることが出来ます」

「それ、国家機密だろ」

スタンツェは目を見開く。


コッヘルは頬を指で擦りながら、答える。

「まぁそうなんですが・・・えっと先日メイドのクラに出会ったときにサクラ嬢だと気付きました。そして昨日のメッツェン嬢はゴッセというのも気付きました。ただ、私たちはゴッセとメッツェン嬢が結びつかず、本物のメッツェン嬢がここにいないと考えてしまっていたんです」

「俺が三人と話していて分かったんだ。こっちはメッツェンの正体を言ってなかった」

「それで話の意図がすれ違ったんですね」


「そのようです。そしてその話を受けて考えました。もしサクラ嬢が良ければ、昨日の雇用契約を私と結んで頂きたいと思います」

「雇用契約で良いですか!」

テーブルに両手をついて立ち上がらんばかりに、サクラは興奮しする。

ウィスカーが絶妙なタイミングで紅茶を差し出す。

淑女として振る舞うべきだと気付いたサクラは、静かに紅茶を口に含む。


「私の婚約者役という雇用契約でも良いでしょうか?」

「構いませ」

「ちょっと待ったー!それは問題がありすぎるだろ」

「サクラは結婚したらマズいだろう?」

ゴッセとスタンツェが大きな声で会話を止める。

さすがに驚いたラスパが紅茶を吹き出しそうになり、エレバがハンカチを差し出すことになってしまった。


「婚約者になるつもりも少しありましたよね?」

「それでもさ・・・」

「・・・何かまだ懸念があるのですか?」

「うーん、俺たちもサクラを利用している立場だから強く言えないけれど・・・ずっとサクラに婚約者役をやってもらうの?若い女性な訳だし・・・」

「私は婚約者役という仕事で、色々活動出来るのであればそれで満足ですよ。お給料も出ますよね?」

「もちろん予算は確保できます」

「そういうことですので!」


乗り気のサクラにゴッセが折れることとなった。

「分かった・・・そうしたら、明日予定していた婚約式は正式に開かれるんだな」

「はい、その打ち合わせのために、夕食のお誘いをしました」

「初日以来のしっかりとした場にでることになるので、ぜひ打ち合わせを!」

「・・・サクラさんは楽しそうですね」

「・・・はい、仕事がありますから」

「それで良いのサクラちゃん?」

婚約者役の仕事を喜ぶサクラを見て、流石にラスパも心配になってしまった。


「もちろん!ラスパさんやエレバさんたちと、これからも情報共有したり、教わったり、毎日楽しいことばかりが起きる予感しています」

「サクラの仕事中毒ぷりをこれから受け止めていってくれ」


「サクラ嬢、東の国の人たちの様に、西の国の私たちともざっくばらんにやり取りをして欲しいと思うのは、望みすぎでしょうか?」

「皆で色んな話が出来る間柄になれたら嬉しく思います」

「では始めに私のことをコッヘル様と呼ぶのは止めて下さい。私もサクラさんと呼びますし、自分のことを普段は俺と言いますので」

「分かりました。東の国の皆も様を付けずに呼んで良いですか」

「それは・・・すでになっていますね。公の場で無ければ、敬語も不要です。私も言葉を崩しますから」

「じゃぁ、これからは遠慮なく」

「スタンツェは割と早い段階で敬語がなくなっていたと思うよ?」

「うん、最初の食事会からだね」

総ツッコミを受けたスタンツェが居心地悪そうにするも、夕食は今まで以上に和やかに進んだ。



「俺も皆と仲良くなれたら、嬉しいです」

コッヘルはそっと呟いていた。




少しだけ距離が縮まりました。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

連日23時にアップ予定です。

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