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報告-16の月、17日、1枚目

のんびりと趣味の時間

東の国の王城、滞在三日目。

サクラは外でベールをずっと被っている生活にちょっと疲れてきた。

休日となる今日は朝食を終えたら、部屋に籠ろうと考える。

ウィスカーとお揃いのメイド服で、体を動かしながら作業をしたい。


「さてと、今日は一日のんびりしていて良いんですよね?」

「王子が休みで良いって言っていたし、先触れもないから誰も来ないんじゃないかな」

「それじゃ、ちょっと厨房の奥に籠っていても良いですか?」

「サクラー、夕飯は城に依頼しておいて良いのかー?」

「はーい、皆さんと一緒に食べます」

ゴッセとアドソンが答える。

スタンツェは休日だろうからということで、遅くまで研究をしていたそうだ。

今は部屋に近づかない方が良いとアドソンとペアンから止められている。


衣裳部屋から大きなトランクを引き摺りだしてきたサクラ。

ウィスカーがトランクを持ち上げる。

人型に戻ったペアンがそれを見て口を開く。

「サクラ、我も何か手伝いたい」

「・・・ふむ、じゃぁお願いを一つしても良いですか?」

「サクラの望みなら何でも叶えてあげよう」

「鋏でこの布を切って頂きたいんです」

「ふむ、良いよ。西の国で買ったものかな?」

「そうなんです。前に話していたものを作ろうかと」

「サクラちゃん、何を作るの?」

「口を覆うマスクです。三種類の大きさを作るので、大中小の長方形になるように裁断してください」

「分かった。全部切ってしまって良いのか?」

「今出したものを三種類の大きさに、何枚もお願いします」

「鋏は不要だ。魔術で切っておく」

「・・・魔術って便利ですね」

「人間の手伝いの為に魔術を使う魔物は珍しいからねっ!」

「大変助かります」

あっという間にペアンは布を全て切ってしまった。

サクラはまだ布を成形するつもりだが、長方形と指定したので、今のところ無駄は一つもない。


空間魔術の奥の部屋で、切ってもらった布を重ねて、縫い合わせる。

思い出しながら手順を進めていくため、一つ目を作ったところでかなり時間が掛かった。

集中力が切れたため、ソファーから立ち上がり伸びをしたところで、ウィスカーがお茶を淹れたと呼びにきてくれる。

ゴッセ、アドソン、スタンツェも先にお茶の時間になっていたようだ。

席に着くとゴッセが質問してくる。


「サクラ、集中していたみたいだから聞かなかったけれど、あれは何?」

「元いた国で使っていた口元の感染防具です」

「口?」

「布を口元に当てて、紐を頭の後ろで縛ります。小さいものはお子さん用なので、紐をどうつけるかは悩んでいます」

「イスイ村では長細い布を当てていただろう?・・・んーやっぱ息苦しいなー」

使用例を見るためにアドソンが着けて、感想を言った。


「後ろで布を結ぶのがお子さんは難しいんですよね。慣れないと息苦しいです。・・・例えば見えるくらい濃い毒が漂っている部屋に放り込まれたら、口や鼻を押さえると思うのです。多少の息苦しさと、毒を吸わないという選択肢なら、前者を取るかなと考えます」

「そういうことか」

「感染予防の基本の一つです。病気や怪我の状態になってしまえば、医魔術やポーションの出番です。ですが、その前に出来ることがあると広めていきたいと思っています」

「なるほど。マスクの他には、何を考えているんだ?」

小さく頷いたスタンツェは、サクラが話すのを促す。


「石鹸の使用、うがいの励行、そして何よりも体調不良時に体を休めるようにすることは動きやすいと思います。医魔術師が少なく、ポーションも高いのであれば、感染予防のための啓蒙活動をしたいです」

「石鹸は売っているな。うがいはうがい用の薬でも作るのか?」

「石鹸は効用に合わせて準備するとして、薬では高価になるのでは?扱い方を広めたいので、効果があって安くて大量に準備したい・・・街に出掛けて色んな人から教えてもらいたいですね」

「・・・今は難しいだろうけれど、まぁうまくコッヘルとこの関係を続ければ視察も行けるんじゃないか」

「今は良いのですが、肩書が無くなったら、誰も話を聞いてくれなくなるでしょうね。それまでにどうにか目処を立てたいと考えています」

ゴッセの問いにサクラは悩み始める。

スタンツェは机上の空論に頭を悩ませているサクラを不思議そうに見る。


「んじゃ、祭とかに面白い店でも出して、布と石鹸と食べ物でも売ったらいいんじゃないか?」

「ふむ、食べ物は誰が作るんだ?」

「えっ、サクラかなー」

「良いですよ。そうしたら支配人をゴッセさんにお任せします。経理をスタンツェさんに、販売員をアドソンさんとウィスカーさんにお願いしますね」

「さっ、サクラ・・・我は・・・」

「ペアンくんは一緒に食べ物を作りましょう。魔物さんや妖精さんにも食べてもらえるようなものを目指しますね」

「おい、マスクと石鹸はどうするんだよ」

「あぁ石鹸づくりをどうしましょうかねぇ。思わず使いたくなるようなものを探して、卸してもらいますか」

思わずツッコミを入れるスタンツェに、サクラは微笑む。

アドソンも笑い、ゴッセは小さく溜息をつく。

「サクラって、やっぱおもしれーなー」

「まだ、何も決まってないけどね。東の国の王子とどうなるか分からないし」


サクラはゴッセを見ながら、首を傾げる。

「私のやりたいことはやりたいことで、コッヘル様のことはコッヘル様のことで、せっかく皆の未来の話が出来ているのですから、全部大切にしたいです」

「あぁ、そうか。これは俺達の話なのか」

「はい。ゴッセさんが何をしたいのか、スタンツェさんが何を作るのか、アドソンさんが何を食べるのか、全部これからのことです」

サクラは皆に両手を広げてみせ、胸元に寄せて手を握る。

俯く顔は祈りにも似た姿となる。


「・・・石鹸は作らないからな。絶対に」

「はーい、そこは負担を掛けないようにします。そしたら夕方まで、城の図書館に行ってもいいでしょうか?」

「ん?メッツェン様はお休みの日でしょ?」

「西の国のクラなら、主の今後の勉強のために本を借りに行っても良いのではないですか?」

「んー・・・・俺かアドソンを護衛として連れていくなら良いか」

「俺はまた研究に戻る」

「じゃぁ、俺は王子のところに図書室の管理方法でも聞いてくるよー」

「ありがとうございます」

「サクラは何の本が欲しいんだ?」

「あるかどうかを確かめたいのですが、この国の工業、医療、教育の本を見たいです。石鹸を作りたくて」

「俺は作らないぞ」

「大丈夫ですよ」

サクラは頑ななスタンツェに苦笑する。

きっと危ないときには助けてくれるのだろうけれど、出来る限りは精一杯やりたい。

戻ってきたアドソンが許可を貰えたようで、万が一のためゴッセとウィスカーが残り、サクラとペアンとアドソンが図書館に向かうこととした。




サクラにとっては趣味の時間です。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます

これからものんびり楽しんで貰えますように。

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