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報告-16の月、13日、2枚目

初めてのお茶会

サクラは既に慣れたが、この世界での貴族の朝は遅い。

あまり早く起きられても、その世話をする人たちに負担が掛かるので、仕方ないことだと理解はしている。


「元いた世界ではお茶会はお茶を飲むんです。昼食がこの時間なのは中々慣れません」

「ゆっくり起きて、ゆっくり食事を食べるのは特権階級の証なんだよ」

「朝早く起きて、自分で作った朝食を食べて動き出す方が、やはり好きですね」

「サクラってやっぱおもしれーな」

お茶会のためにドレスアップしてもらったサクラは、コッヘルの元に向かう道中、思わず愚痴をこぼす。

平民の生活でも対応してくれる三人が一緒なので、気が楽であり、大いに感謝する。


「お招きいただきありがとうございます」

「これは・・・可憐な中に凛々しさが加わりますね」

「女性の服装を褒めないといけない男性の皆様が大変そうですね」

「そう・・・ですね・・・慣れてしまえば、苦労もないです」

コッヘルとのお茶会の時間ではあるが、ラスパの庭で実質的な昼食となった。

メッツェン様の金色の髪にあう淡い色のドレスを着て、コッヘルのエスコートを受ける。

庭の散策を優先したいので、ズボンの乗馬服で参加していいかをゴッセに確認してしまい苦笑される。

スタンツェにはため息をつかれる。


――――いや、ほら、別に好意を持っていただきたいわけではないので・・・

欲望に忠実に行かないと、次はないだろうから


ラスパの庭に入ると、頬に土がついたままのラスパが近づいてくる。

夢中で仕事をしていたのだろうと、サクラは微笑ましくなる。

「サクラちゃん、こっちだよ」

「ラスパさん、お庭へのご招待ありがとうございます」

「良いんだ、それよりもこれなんだかわかる?」

「人参、カボチャ、葉物野菜もありますね」

カゴに入った野菜は土がついていて、とても新鮮そうだ。


「ここの畑と道の間に見える花は、害虫駆除用ですか?」

「よくわかったねぇ。素晴らしいよ」

ニコニコと効果音が付き添うなくらいに笑うラスパは、誉め上手だと感じる。

「ありがとうございます。ここはラスパさんの魔術で管理されていますか?」

「そうだねぇ。といっても僕の魔術は料理だよ。土属性で土を改良しているくらい」

料理の魔術で土属性は、医魔術に携わることが多いと聞いているサクラは、心の中で疑問を感じる。

誰もが医魔術の道に進む訳ではないが、王城で働ける身分で農耕に携わるのは珍しいことではないかと思う。

「なるほど、そのほかはラスパさんの努力の賜物なんですね」

「えーわかってくれる?コッヘルが食べなくてさ、どうにか食わせるために始めて、畑がこんなに大きくなっちゃったんだよね」

土がついている手袋でも気にせずに、頬に手を当てて溜息をつくエレバ。

幼く見えるような動作も似合っているし、初日に打ち合わせを進行してくれた

「それは言わなくても良かっただろう・・・」

「本当の事だからな。サクラちゃんにも知っておいて貰おうと思って」

「身体的に食べなかったのですか?それとも」

「何個か食べられない物があって、どうすれば食べられるかって考えてたら、畑に行き着いた」

「それは・・・食べると体に不調が出るものでした?味がダメとかですか?」

「小さい頃は体が弱くて、風邪をひいて寝込んでいました。体が痒くなる日はありましたし・・・いろいろな症状が出ました。ただ最近はほとんど無くなったので気にしていないです」

やはりコッヘルはアレルギー体質なのだと判断する。

それであれば、サクラは駒を進めることにした。


「ラスパさん、過去にコッヘル様に不具合があった食品のリストを下さい。覚えていればその症状と、どのように食べられるようになったかを記載して下さい」

「・・・何か不都合でもありましたか?」

「今日はお菓子を作ってみたのですが、コッヘル様の体調に影響が出ると行けませんので、持ち帰ります。次の機会があれば、食材を変えて料理します」

「サクラちゃん、エレバと医魔術についても話したいんだよね?何か気になる?」

「はい。ゆっくりお話出来るところまで戻っても良いですか?」


ガゼポに運ばれる予定だった昼食を、初日に皆で話し合いをした部屋に運んでもらうことにした。

ついでに昨晩のように全員で食事が出来るように手配を済ませたエレバも合流するという。

全員が席について食事を始める。

和やかな雰囲気の中でサクラは話始める。


「食品だけで無く様々な物と、例えば魔術の属性とか、私たちの体は相性があると思います」

「そうですね、越えられないものもあります」

「私が今からお話しすることは魔術汚染に近いと考えて下さい。私たちの体は他の人には問題はなくても、自分だけ相性が悪い物がある、そんな方が居ます。好き嫌いの問題では無くて相性です。そして時にそれが命を奪うことがあります。」

「命を奪う?」

「はい。無害な食品を体が毒だと見なして排除しようと、闘ってしまうんです。魔術汚染とか毒を受けたような症状はありませんでしたか?」

「確かにコッヘル様に、似たような症状が出たことはありました」

「え、僕は毒を食わせてたってこと?」

「いえ、そこは治療と紙一重です」

「「「え?」」」


東の国の三人は初めて聞く知識に、食事が進まない。

西の国の三人は事前に聞いているため、食事を始めている。


「魔術汚染は体の外と中のどちらも影響があると思います。治療として外側の守護を強化して、内側の抵抗力を高めますよね?それと同じ事を食品に対しても行います。手首などの関節部分を中心に肌を整え、ほんの少しの毒から摂取して体に馴染ませる治療があるんです。ただそれも体調に合わせたり、本当に微量から始めないと行けないので、緊急時対応が出来る人が傍にいてくれないとやれませんが・・・」

「それであれば、肌は侍女達が色々やってくれましたね。ラスパの料理は気付かないくらい少量から取り入れてくれたし、エレバは体調を崩した食品を覚えていてずっと傍にいてくれました。」

「ここにも円卓の魔術師にもその知識はありません。それは本当に正しいのでしょうか」

「正しいかどうかは今は問題ではありません。皆様の対応は偶然かも知れませんが、最良だったからこそコッヘル様が成長出来たのでしょうね」

エレバが問いたい知識の正誤は、これからこの世界で研究されるものだから、今はサクラには答えられない。

ただ、正しいかどうかよりも、この三人にとってはコッヘルが生き抜いた事実が大切なのだと、サクラは感じる。


三人は俯いていたが、ラスパがいち早く顔を上げる。

「・・・あー僕、主を殺すところだったのか・・・コッヘルが死ななくて良かったよ」

「私のために最善を尽くしてくれたことが、かえって最悪の結果にならなくて良かった。・・・ただ、昔のことを思い出すと申し訳なくなるね」

「それは現代の知識でも追いついていない分野です。昔の使用人たちも主も知らなかったことです。最悪の結果だってありえた訳ですから・・・」

「サクラちゃん、最悪の時ってどんな感じになるの?」

「そうですね。言葉を選ばずに言いますと・・・痒くなる、吐く、下すは軽度で、重度になれば首の内側がしまって窒息死します。血の巡りが悪くなって、意識を失い心臓が止まります」

「あぁ・・・僕、殺さなくて良かったよ、本当に・・・」


「いつもエレバさんとラスパさんが、コッヘル様の食事の材料を選んでいたと聞いています」

「うん。エレバはずっと情報を纏めてくれてた」

「ラスパは共通性を見出したり、ごく少量ずつ実験のように食品を試してくれました」

「えぇ、実験と言っても善意からやってくれているのは分かってましたから、感謝の気持ちしかないです・・・ただこの食品を受け付けない問題は私だけの事ではないですよね?」

「そうですね。誰にでも起こる可能性があります。食べられない物を避けられる人は良いと思いますが、小さいお子さんのように好き嫌いだと無理矢理食べさせられる環境では辛いと思います。間違えれば死にますので」

「有意義なお話を頂いて、感謝致します」

「いえ、私の話を受け入れてくださり、感謝いたします」


「なぁ、そろそろ食べないかー」

会話が途切れたところで、アドソンが声を掛けてくれる。

「そうですね。頂きましょうか」

「いただきます」

「・・・エレバ、ラスパ、いつもありがとう。いただきます」

「主・・・」

「・・・残さず食べろよー」

エレバとラスパの食事がほんのり塩味が強くなったことは、皆で気づかなかったことにした。


本日のお茶会という昼食会が終了する。

夕食の時間までにラスパが、アレルギーと思われる食品のリストを持ってきてくれる。

ほとんどの食品を克服しており、エレバとラスパの手厚い支援が実ったことに、感銘を受ける


「・・・ラスパさんは凄い方ですね。こんなにも試行錯誤されたなんて、感銘を受けました」

「いや、僕にはこれしか出来なかったんだ。でも今日サクラちゃんに主の体質の話を聞けて良かったよ。また今度畑を見に来てくれるかい?」

「ぜひ見に行かせて下さい!収穫した野菜で、何か料理を作りましょうね」

「待ってるよ!」

東の国の三人から少しだけ信用して貰えた気がするサクラだった。


「サクラの作ったお菓子が食べたい」

エレバの約束に嫉妬した魔物が駄々をこねるまで、あと1分。

素敵なお庭訪問・・・にはならなかったですね。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます

連日23時アップ予定です

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