報告-16月、12日、2枚目
先触れの裏話
コンコン
サクラの元にコッヘルからラスパがお遣いに来て、手紙と一輪の花が届けられた。
返事を書く必要があるだろうと、アドソンが読み上げる。
「さっきの謝罪を直接したいらしいー。お茶会じゃなくて昼食を一緒にって書いてあるぞー」
「ふむ。・・・関わっていないのか、監視役がいなくて焦っているかの、どちらかだろうな」
顎に指をあて考えながら話すスタンツェ、頷きながら視線を下に向け考え事をしているゴッセが見える。
サクラは片手を挙げ、発言する。
「お茶会と晩餐会をキャンセルしてもらって、コッヘル様たち三人と、皆で夕食を食べても良いですか?」
「は?」
「えっ?サクラちゃん、本気?」
「サクラっておもしれーな」
スタンツェ、ウィスカー、アドソンの声が被るが、ツッコミを入れたい気持ちは同じなのだろう、ゴッセも縦に首を振っている。
「どういう思惑があるとしても、どこかで接触しないとなりません。二人でのお茶会や、国王ご夫妻がいる場よりも、同世代の皆でラフにご飯を食べて、反応を見たいです」
「あぁ?・・・あぁ、それは・・・ありなのか?」
「サクラっておもしれーな」
サクラの意見が理解できるような出来ないようなスタンツェと、カラカラと笑うアドソン。
ペンを執り、サクラは手紙を認める。
「反対意見がなければ、そのようにお返事します。食事の場はこの部屋を指定し、夕食を共に。こちらは四人分のお弁当で構わず、昨晩のようにコッヘル様と同じ料理を私に。コッヘル様たちは三人分を準備してもらいます。服装は平服で構わないと、むしろ平服で来いと伝えます」
サクラの発言にゴッセが苦笑しながら突っ込む。
「ねぇ一国の王子にそれってどうかな・・・あの王子、質素な服を持っているか怪しいよね?」
「持っているかどうかは問題にしません!相手の弱みにはつけこみますよ?」
アドソンに手紙を託したサクラはソファから立ち上がる。
「・・・さぁて、ということで皆さん、私は着替えますがいいですかっ!」
「まっ、クローゼットのほうに行ってくれ。待て、ドレスをたくし上げるな。ペアンは隠してくれ!」
「サクラっ、着替えは待とうか・・・こんな奴らに君の肌を見せちゃいけない」
スカートの下にペチコートがあるから、その場で着替えようとするサクラと、淑女はむやみに肌を露出してはいけないという常識に慣れた者たちとの、小さな攻防戦が見られた。
一旦解散し、サクラは街着に着替える。
ウィスカーからの提案で、食事会の時にペアンも給仕してくれるという。
ペアンとしてはコッヘル達が不用意にサクラに近づかないようにしたいらしい。
せっかくなのでウィスカーとペアンも着替えてもらう。
ウィスカーは西の国から持ってきたメイド服から、サクラがマチューたちに作ってもらった制服に着替えた。
本当は東の国の皆でお披露目会をしたかったと、サクラは少しだけ感傷的になった。
「サクラちゃんがデザインした服は動きやすくて可愛いねっ!まぁ、ウィスカーさんが着ているっていうのもあるけれど」
ニヤっと笑うウィスカーに、励まされてしまったと、サクラは微笑む。
「サクラ、我は君と揃いの服にしたい」
「給仕係が揃いの服はダメっ!今度にしなさい」
「グヌヌ」
「ペアンくん、今度揃いの生地で何か作りましょうか。お揃いのリボンで首輪も良いと思います」
「嬉しいのだが、サクラにとっては猫型の我が主体なのか・・・」
「そうですね、人間の姿はまだあまり見慣れていません」
「グヌヌ」
ペアンの人型の姿を認識してから、まだ18日目。
見慣れたと言えば見慣れたが、猫型で傍にいてくれた方が安心するのは確かだ。
夕食時に同じメニューが食べられないので、昼食だけでも一緒にとサクラは考える。
夕食後に話が弾むようならば、摘まめるお菓子を作ろうと思い立ち、サクラは厨房に立つ。
「久しぶりにパンケーキを焼きますね。今のうちに二人は食べちゃってください」
「やったぁ、ハチミツいっぱいかけていい?」
「サクラの料理!」
パンケーキを四枚焼き、二人が食べ始めるころには、着替えが終わった三名も戻ってくる。
「サクラ、晩餐会は延期と国王夫妻から連絡があった。お詫びの品が届いているが・・・後で確認してくれ」
「はーい、ゴッセさんに確認してもらっても良いですよ。メッツェン様が気に入るかどうかの判断を任せます」
「じゃぁ、開封するね」
「サクラー、今日は晩餐会用に準備していた料理が使用人たちに振る舞われるって。メイドたちが喜んでた」
「ふむ、コッヘル様も同じ料理を召し上がる予定だったんですね」
「あぁ、それなんだけど、同じ見た目の料理をラスパが作る予定だったんだって。変だよなー」
「それで、昨晩もメニューが違っていたんですね。・・・分かりました。そしたら、アドソンさんたちのお弁当は準備がないのでしょうか?」
「俺たちの分は頼んだよー。東の国の人たちとも食べるって話したら多めに弁当くれるらしくて、そこの二人の分も貰える」
「それは良かったです。おかずを一品とサラダ、デザートでも作りましょうかね」
「俺、肉が食べたいー」
「サクラちゃん、あたしハンバーグがいい!」
「変わり種のハンバーグにしましょうか」
「・・・サクラの料理が食べられる!」
「ウィスカーもペアンもサクラの料理が好きなんだなー」
「うん。サクラちゃんの料理には魔力が入っているから、妖精も魔物も皆、気に入ると思うよっ」
「は?」
「え?私、魔力あるんですか?」
「どういうこと?」
サクラは微量ではあるが常に魔力が放出されている体であり、料理や裁縫など気持ちを込めた作業には魔力が籠るのだと、ウィスカーは説明する。
人外者がサクラを好む理由の一つにその魔力の味があり、余計な虫がつかないようにと、ウィスカーとペアンが見張っているそうだ。
「そういう訳で、人間であるお前たちの魔力をサクラの装飾品として身に着けて、他の人外者が寄って来た時の盾にしているんだ」
「それでネックレスをそのまま着けておくように言っていたのですね」
「あぁ、身に馴染むと言ったのは、我やウィスカー、他の人間の魔力でサクラを覆う為だったんだ。今後、守護を強める時にはまた魔石を身に着けてもらうことになるだろう」
「分かりました。守ってくれてありがとうございます」
「我に知識を捧げ続けるサクラを、我が守るのは当たり前であろう?」
「人間側は巻き込まれたという訳か・・・」
「お前たちがサクラを利用するつもりだったから、我もお前たちを利用したわけだ」
「分かったー。そしたら、俺達も二人を名前で呼んでいいよなー?仲間じゃん」
いきなりのアドソンの発言に、ゴッセとスタンツェが焦る。
「あっ、アドソンっ?」
「お前、何をっ」
「・・・ふむ・・・まぁ、サクラを裏切らない限り許可しよう」
「あたしも良いよー。どうせメイドって呼ばれるだけだから、サクラちゃんが付けてくれた名前で呼ばれた方が良いやー」
一人で国を亡ぼすことも可能だと言われている魔物と、人を魅了し操ることも可能だと言われる妖精からの、だいーぶ緩い許可が出て、ゴッセとスタンツェは緊張の糸が切れる。
「それなら・・・ペアン、ウィスカー、これからも宜しく」
「全力でサクラを護るようにな」
「二人ともありがとうございます。皆さん、これからも宜しくお願いします」
話を見守っていたサクラが、微笑む。
思いの外、和やかに休憩してしまい、サクラが慌ててチキンハンバーグを作り始めるのだった。
視点が違えば、知識の幅も広がりますね。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます
連日23時アップ予定です。




