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報告-16の月、12日、1枚目

本日の予定

朝起きて軽く身支度を整えながら、一日の予定を確認する。

午後のお茶会の時にはドレスに着替えなければならないが、昼食までは軽装のメイド服で居られると、サクラは期待する。

――――軽装と言っても、元いた世界ではジーンズにTシャツとかだったからなぁ。しっかり着ていると思うのですよ。


コンコン


「お受けいたします」

 残念なことに先触れがあり、ゴッセの到着予定と、頼んでいた講師の訪問の予定がはいる。

貴族は朝が遅いことを前提として、サクラの身支度が整ってから二組の面会を組んでいる。

アドソンが朝食を持ってきてくれている間に、ゴッセは馬の手配のため窓から出て行った。


「うーん、着替える回数が多いので、印象は大きく変えた方が良いのでしょうか?」

メイド服の予定を変更し、ウィスカーとペアンに手伝ってもらいながら、ドレスに着替える。

午前中のドレスとお茶会のドレス、イブニングドレスはそれぞれ違う。

そして、ベールを被らなくてはいけない。

これは東の国にはない西の国の流行だが、便利なので利用させてもらっている。

モースに叩き込まれた知識と、東の国の常識に差があるかもしれないので、マナーの講師に早急に確認しておきたい。


『メッツェン様』の擬態を施してもらい、サクラは自分自身ででメイクを行う。

暗い髪色に暗い瞳の色は元の世界では当たり前であったが、『メッツェン様』は金髪にピンクの瞳だ。

素材が一気に変わっているので、メイクも楽しいものだと感じる。

「さすがはメッツェン様。きりっとしたお顔が素敵ですね」

「我はサクラの顔の顔の方が良い」

「サクラちゃん、段々とメッツェンからサクラちゃん自身に擬態を変えていくから、今のうちに楽しんじゃいなよっ!」

三者三様に盛り上がる。


 午前中の用事ではあるが黒地に紫の強いダークピンクのレースを重ねてある、ハイネックのドレスを選んだ。

ベールも黒を合わせている。

ゴッセのお迎えはまだしも、学びを請うのに浮ついた服装は避けたかった。

ダークピンクは浮ついていないかと言われれば、アクが強い色合いではあるが、黒一色という訳にはいかないため、折り合いをつけている。

サクラは本当はメイド服で講義を受けたい。


先にゴッセが到着する。

昨日話していた予定にはなかったけれど、コッヘルも同席したので、意外と大所帯になった。

騎士の礼をとり、優雅な動作でゴッセは、サクラとコッヘルに口上を述べる。

「主、任務を終え帰還致しました。東の国の第二王子におかれましては、ご挨拶の機会を頂き、感謝申し上げます。メッツェン様の護衛騎士の一人、ゴッセと申します。」

ピンクブロンドの短い髪にオレンジの瞳の騎士は、見慣れたゴッセのものだった。

「任務を終え、無事に戻られたことを喜んでおります。ありがとう」

サクラは外向きで、穏やかな時のメッツェンの口調を真似て、言葉を返す。

サクラをエスコートしているコッヘルが、小さく頷く。

「身元の確認ができ、挨拶を頂きましたので、これよりサクラ嬢の元で過ごして頂いて結構です。この城の説明は他の者から受けてください」

「東の国王陛下並びにコッヘル様のご配慮、御礼申し上げます」

「あぁ、サクラ嬢がこの城で少しでも快適に過ごしてくれることを、私は願います。では、サクラ嬢、後ほどお茶会でお目に掛かりましょう」

サクラに挨拶をして、コッヘルはエスコートの手を離す。

サクラは、早々に一人で広間から出て行くコッヘルの後姿を見つめていた。


昨日見ることが出来た服装の中間をとったような服装で、華美な装飾はないが、肌に優しい高級な生地が使われていると感じた。

サクラはペアンにだけ聞こえるように独り言をつぶやく。

「・・・確認したいものですね」

「ニャ?」


自室に六人で戻り、休憩を取る。

これからゴッセとして、城内、東の国内を歩ける。

「ふぅ、ゴッセさん、お帰りなさい。緊張しました」

「サクラ、メッツェンの口調の真似を頑張ってたね」

「サクラちゃん、ミルクティー飲む?」

「はいっ」

紅茶を飲み終わった頃、予定していた来客がある。

忘れていたとは言えないし、着替えていないのは許して頂こうと、サクラは覚悟を決める。


入室してきた講師の顔を見て、サクラは驚くが、表情は笑顔を保ち、出来る限り優雅に見えるように跪礼を見せる。

笑顔は保てているだろうかと不安になるが、ベールでうまく隠してくれていることを願う。

紹介頂いたマナーの講師は王妃様、この国に関する講師はエレバだった。

サプライズな上に、豪華すぎる。

「コッヘル様から王妃様に相談しましたところ、王妃様がメッツェン様に合わせた講師をご紹介くださるとのことでしたのでご案内いたしました」

「メッツェン嬢、私では力不足かと思いますが、宜しいかしら?」

「・・・願ってもいない僥倖でございます。未熟者でございますので、ご指導賜りますようお願い申し上げます」

「それなら良かったわ。息子が二人で娘がいなかったから、お力になれたら嬉しいの。何でも聞いてちょうだいね」

「ありがとうございます」

娘がいない母親がの娘みたいな子と遊びたい願望は、元の世界にもあった感覚なので理解できる。

離れる日が来るだろうけれど、サクラは精一杯良い娘となろうと思う。


続いて昨日会ったエレバが一礼する。

「コッヘル様より私エレバが講師としての任を与えられました。明日よりこちらに訪問し、東の国についての講義のお時間を頂きたいと存じます。宜しいでしょうか?」

「ありがとうございます。コッヘル様との本来のお仕事があるかと思いますので、無理のない範囲でこちらにお越しいただければと思います。ただ、学びを受ける際に書き取りをしたいのですが、机を用意して頂くことは可能でしょうか?」

「畏まりました。明日のこの時間までに手配致します」

丁寧な物言いだけれども鋭い視線を感じる。

サクラにとっては訝しむ視線くらいならば、何の影響もない。

静かに威嚇しているペアンをこっそりと撫でる。


今日は元々午後からお茶会と晩餐会の予定があるため、明日の昼食前にエレバの授業、昼食後のお茶の時間を王妃様からの授業となった。

ついでに専属の侍女の紹介がある。


「メリーと申します」

「城でのことは何なりとこの者に申しつけください」

とても優雅に凛々しい跪礼を見せてくださるが、違和感を覚える。

ペアンの尻尾が毛羽立って、サクラの口の中に入りそうになった。

扇を広げ、そっと息で毛を口から出す。


視線を送るとスタンツェが小さく頷く。

会話して良いと受け取り、サクラは口を開く。

「・・・大変失礼なのは承知しておりますが、この方ではない侍女を付けてくださいませんか」

「なっ」

「・・・メッツェン嬢、何かこの者が失礼を致しましたか?」

「いえ、ただの我儘でございます。この方の他にご推薦いただく侍女がいないのであれば、今いる者たちで賄えますので、どうぞお構いなく」

「ですが・・・」

エレバは簡単には引き下がらない。

王妃が選んだであろう侍女を見ただけで拒否したのだから、機嫌を損ねてもおかしくは無い。

このまま、追放になるならば、それはそれでサクラ達にとっては好都合だ。


後ろに控えていたスタンツェが助け船をだす。

「東の国の皆様に発言を求めます。」

「・・・どうぞ」

「そちらの侍女にわずかな魔術汚染が見られます。そのようなものをこちらの王女に近づけるのは他意があってのことでしょうか?それとも、この程度はこちらの国では当たり前だという事でしょうか」

スタンツェの言葉に、王妃を始めとした東の国の者達は目を見開き、侍女を見据える。


すぐさま王妃が口を開く。

「・・・汚染。それは大変失礼いたしました。すぐに下げさせ対応いたします。この国でも魔術汚染は悪しきものでございます。他意はございませんが、調べ上げ詳細を報告させます」

王妃が右手を挙げた瞬間、黒い鞭のような物で、侍女は拘束された。

縄で縛るというよりは、檻または蛹のような黒い塊に覆われている。

入室した騎士が物凄い勢いで運び出す。


驚くサクラが必死に表情を取り繕っていると、王妃が一歩前に出た。

慌てて対応への感謝の言葉を述べる。

「王妃様のご判断をありがたく頂戴いたします。何らかの事故があったようですので、そちらの対応に尽力ください。私どもは昼食後よりコッヘル様がいらっしゃいますので、心配はしておりません」

「そう、ありがとう。本日はこれで失礼させていただきますわ」

「足を運んでくださり、感謝いたします。明日お目に掛かれますことを、楽しみにお待ちしています」

跪礼し、王妃とエレバを見送る。


あまりの展開にぐったりしながらも、サクラは気分転換にお茶を入れる。

サクラに影響が少ないよう、空間魔術内でペアンが洗浄の魔術を施してくれる。

スタンツェの診察を受けて許可が出たため、部屋に紅茶を運び込めた。

「サクラちゃん、魔術汚染は掃除しておいたよっ」

「サクラ、お疲れだなー」

「ニャーン」

「・・・それにしても魔術汚染はよくわかったな」

「分かったというか違和感を覚えて見ていたら、ペアンくんが毛羽立ったんですよ。なので視界を猫様のモフ毛が半分占めていました。ペアンくんにも、誰にも聞けなかったので、スタンツェさんを見たんです」

苦笑するサクラとため息をつくスタンツェ。

ペアンは尻尾をゆらゆらと揺らしている。


「そういうことか、まぁ、あのまま侍女を無理矢理置いて行かれたら、捕縛するだけだったけどな」

「他意はないって言っていたけれど、俺たちでも調べたほうが良いのかな?」

「一仕事するかー」

三人の意見にウィスカーとペアンが頷いている。


手元の紅茶を見つめなが、サクラは質問する。

「うーん、コッヘル様がどう出るかを見てからでも良いですか?」

「あいつが?」

「せっかくなので、このことをどう対処する人なのかを見てみようと思います。皆さんはそれぞれ動いてもらって大丈夫です。私がコッヘル様から情報を引き出しますね」

「・・・あまり無茶しなければ良い」

「魔物殿の機嫌を損ねない程度にやってくれれば、良いんじゃ無いかな?」

「ニャ」

サクラは苦笑しながら同意した。


サクラにトラブルはつきものですね。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

連日23時にアップ予定です。

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