表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/267

報告-16の月、1日、1枚目

体調不良のときは無理はしません

サクラは起床時から寒気とフラフラする感じがあったが、気合を入れて着替えて部屋を出る。

ペアンの尻尾がゆらゆらとしているのに合わせて、床と天井も揺れている。

三人に朝の挨拶をしたところで、眩暈がしてふらついたところをアドソンが支えてくれた。


「今日はここで休むか?」

ゴッセが休みを提案する。

「いえ、移動のスケジュールがあると思いますので、大丈夫です」

「んー、日程ねぇ・・・アドソン、スタンツェを呼んできて、サクラはひとまず横になろうか」

部屋に推し戻され、差し出された水を受け取り、大人しく部屋の長椅子で横になる。

休めと言われても今後の日程が不透明だと困惑しながら、サクラは目をつぶっておく。

目元にタオルが被せられ、そのまま誰かの手が髪を撫でる。


すぐにサクラ以外の全員で話し合いがもたれる。

タオルで視界はゼロだが、全員がいるのは気配で分かるので、サクラは音に集中することにした。

幸い耳鳴りはない。

ゴッセが口火を切る。

「サクラ以外に体調の悪い者や、食材の不足などはない?」

「サクラが旅に慣れていないだろうからと、ゆっくりとしたペースにしていたんだ。これ以上は遅れられない」

スタンツェの声がいつもより低い。

眉間に皺が寄っているのだろうなぁとサクラは苦笑する。

「サクラちゃんは、少なくとも馬車の中での勉強はお休みしたほうが良いよねー」

「それなら馬車で移動しながら休めるようにしたらどうだ?スタンツェ、どうにかなるかー?」

「・・・俺を見るなよ。まだ揺れが大きいんだ」


「・・・・どうにかならないかなっと」

ウィスカーの声はいつも通りに明るいが、圧を感じる。

「スタンツェならどうにか出来るんじゃないかなーって、なんて言ってみた」

アドソンもそれに乗っかっている。

魔術の調整は見た目よりも繊細で、理論が分かったところで実現するには何度もやり直す必要があると、この旅路で学んだ。

サクラとしてもあまりスタンツェばかりに負担を強いたくはない。


「空間魔法を拡大したのだから、一人分のベッドを追加して入れれば良いだろう。もう一つの部屋の大きさや振動などの調整は我がする」

「・・・なるほど、分かった。・・・ただし、馬車までの移動はどうにかしてくれ」

ペアンが人間側の都合に歩み寄ったのを、意外なことだと感じる。

車酔いをどうにか治めてもらっているだけでもありがたいのだけれど、サクラに直接何かをするのではなく、スタンツェに協力すると言い出すとは思っていなかったのだ。


「じゃぁ、サクラは空間魔術の中で休みながら、旅程を進めようか。サクラはそれで良いかな?」

ゴッセから意見を求められたサクラは、お礼の言葉を返す。

「配慮ありがとうございます。馬車までは歩けます」

「サクラちゃん、無理しなくていいよ?」


ウィスカーがタオルを片付けてくれて、視界が開ける。

ペアンが心配そうに抱えようとしたため、必死に制する。

手を差し出してもらったので、支えにさせてもらって歩く。

先程よりは眩暈も良くなり、馬車までは歩けそうだ。


空間魔術の中に入ると、先日購入した家具も配置した厨房が見えた。

明らかに、馬車よりも大きい部屋が馬車の隣にあるのだ。

普段乗り降りする馬車の入り口の反対側にも扉がついているのだが、サクラはそちら側から降りたことはない。

その開かずの扉に同じ形の絵画魔術が施されており、押戸を触れると厨房のある部屋が現れるのだ。

アドソンと一緒に、魔術の中と外を何度か見比べてしまった。

馬車の窓からは外の景色が見えるのに、中に入って振り返ると壁があるのだ。

「こりゃすげーなー」

サクラもアドソンに完全に同意する。


厨房の奥にペアンが魔術を追加して、部屋を作ってくれたという。

簡易ベッドがあり、仮眠を取れるようにしてくれた。

ペアンは追加の調整を行って、空間魔術の中では馬車の振動は影響を受けないようになっているらしい。

知識の魔物は素晴らしいと皆から褒めたたえられ、得意げにしているペアンを、サクラは可愛らしいと感じる。


促されて横になると、全く揺れないためホテルのベッドという感じがして心地よい。

サクラだけが寝ているので少し恥ずかしいが、馬車の座席に座る者からは見えない。

厨房を挟んでいるため声だけが伝わる状態になり、静かすぎずうるさすぎず、落ち着く。

「サクラちゃん、今日は一日ゆっくりしててねっ。明日は中央区に入るから、ちょっと騒がしくなるよ」

「・・・はい、お言葉に甘えますね」

厨房と仮眠室を往復して、甲斐甲斐しく世話をしてくれるウィスカーと、振動と体調の調整のためサクラの手を握り続けるペアンがいる。

夕方までぐっすり眠ったサクラは夕食にはしっかりと食べられて、復活アピールをしたのだった。


体調不良のときはきっちり休める優しい世界であって欲しいです。

諸々難しいのは実感していますが。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

連日23時にアップ予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ