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報告-15の月、19日、1枚目

お買い物

王女宮から南西方向に進み、海岸線に沿って北上し、北の国との国境付近を走っている。

イスイ村もこの国境沿いの村になるが、今回は通らない予定だ。

「知り合いがいる場所に寄る可能性は、誰でも思いつくでしょう?そこで襲撃の待ち伏せするなど、予定調和にしか思えない」

スタンツェがため息をつきながら話す。

アドソンも同意しており、警備する側の意見が統一されているならば、サクラには異論はない。


王女宮を出て四日目に山間の街に到着する。

スタンツェとペアンの調整のおかげで、空間魔法が拡大でき、家具を購入して収納を増やす予定だ。


「キッチンも購入して良いのですか?」

サクラは思いがけない提案に大喜びだ。

出来合いの食品や宿の食事でも土地の物が食べられるため、不満はなかったが、自分たちで好きな時間に好きな物が食べられるのは、やはり嬉しい。


この世界でもコンロや水道は壁に付けられている。

ただ、スタンツェの生み出した空間魔法では、ワンルームしかない。

それであればと、サクラは一緒にキッチンを使うことの多いウィスカーに、簡単な配置図を描いてアイランドキッチンを提案する。

「コンロから下ろした鍋をすぐテーブルに置けるなら、出来たてのパンケーキを食べられるってこと?」

「出来たてと言うよりも、作っている所を見ながら食べられますよ」

「何それ最高っ!」

「サクラが作ったパンケーキをすぐに・・・」

人間よりも人外者が食いついてきた。


メッツェンたちにも概要を伝えると、家具職人が展示スペースに案内してくれる。

黒檀のようなどっしりとした素材なのに、水や火、油に強く、お手入れがしやすいと銘打たれたキッチンは、少し手を加えればアイランドキッチンに出来そうな仕上がりだった。

シンクは作りつけられているが、コンロ、オーブン、収納はカスタマイズ出来ると聞き、サクラの意向を最大限取り入れてもらう。

カスタムオーダーはフルオーダーと違い、取り付け自体は時間がかからないという。

運搬する際はバラバラにしておいて、家に出向いて組み立てるそうだ。


持ち帰るから組み立てておいて欲しいと頼むと、職人は不思議そうな顔をした。

王家の秘術でどんなに大きな物でも瞬時に送ることが出来るなどと、スタンツェが嘯く。

王女の嫁ぎ先に持っていくものだと聞いたなら、職人たちは喜び全力で仕上げると約束してくれた。

急ぎで仕上げてもらうお礼と前金を支払うと、さらに職人たちは張り切っている。

「やる気のある職人さん達は素敵ですねぇ」

「サクラはあんな感じの男がタイプなのかー」

アドソンが案内をしてくれた職人を指差して質問してくる。

ペアンの尻尾が激しく揺れて視界が悪くなるので、邪推しないで欲しい。


「仕事にやりがいを感じている人が好きですね。見た目は清潔感が保たれていれば、あまり気になりません」

「へぇ。サクラは金持ちと美形ならどちらが良いんだ?」

「使うべき所に金をきっちり使う金持ちと、説得力や実力が伴い武器の一つにしている美形なら、両者好ましいです」

「・・・仕事が基準なのかー。やっぱりサクラはおもしれーな」

「共に仕事をするなら、仕事が進みやすい人と組みたいですから」

「いや、アドソンはサクラちゃんの好みの話をしたんでしょ?」

アドソンとサクラの少しズレている会話を聞きながら、ウィスカーも笑う。


「好みと言っても、東の国の・・・」

「サクラは我以外の人間とは、結婚しないぞ」

「・・・だそうです」

「そらぁ、魔物殿失礼致しました」

「ペアンくん、一応東の国での行動方針が決まるまでは、静かにしていて下さいね」

「ふん」

人外者の機嫌を損ねれば、人間など一溜まりも無いが、ウィスカーもペアンもサクラを護ることを優先しているため、気安い会話が出来る。

サクラもそれは理解しており、ペアンの機嫌を直すために撫で回す。


家具職人より夕方にはキッチンを受け取れると言われ、人外者二名と人間四人は昼食の相談に入った。

山間の街なので、キノコとチーズが特産品だと聞き、町で一番の食堂に入る。

ウィスカーとペアンも人型を取り6名の大所帯で食事を取る。

サラダ、シチュー、キノコとチーズのパスタ、デザートに蜂蜜を掛けたチーズスフレという本日のセットを食べた一行は、大満足で気に入った食品を買いに走った。


引き取りに行ったキッチンはとても素晴らしいものだった。

アドソンが一人で持ち上げたときには、サクラと職人が悲鳴を上げたが、荷台にぴったりと収まったため、覆いをかけて出発準備が出来た。

本当はちょっとサイズが違うけれど、荷台の敷物に空間魔法がかかっていて、ぴったりサイズにしてくれたそうだ。

隣街の宿に行く前に、キッチンを馬車の壁に貼ってあったスタンツェの空間魔法に取り込む。

元いた世界の感覚で、水道、ガス、電気などを心配したが、魔術を組み込んであるため、いつでも使えるのだそうだ。

さっそく王女宮でミクスターやミテルから貰った品々を並べる。

六人でご飯を食べるには足りない物が多いため、中央区で統一した食器を購入して、明日は食材の買い出しを行う。


予約しておいた宿はいつもどおりの部屋分けにして、それぞれの時間を過ごす。

食品の買出しをした後に山を越え、ほぼ一日馬車での移動の予定と伝えられる。

「馬車の時間が長ければ、しっかり勉強しますね」

「車の酔い止めは任せておけ」

「ペアンくんの膝の上には乗りませんよ?」

結局ペアンがサクラの膝の上で過ごすのであった。




綺麗なキッチンって自炊の意欲が湧きますよね。

継続は出来ませんが・・・。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

連日23時アップ予定です。


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