表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/267

報告-15の月、14日、6枚目

ダズンローズを君に捧ぐ

まだ書類の仕事が続きそうだったため、サクラは飲み物を用意する。

王女の代わりを務めることについて相談したいが、それは明日の出発をしてからに回すことにした。

ソファに座り、サクラ自身も考えを纏めるため、筆記用具を並べる。

ペアンは首周りから降りて、サクラのすぐ横で丸くなる。


「あぁ、そうだ。ゴッセさん、アドソンさん、スタンツェさん・・・スタンツェさーん、聞いてください。伝えたいことがあるんです」

思いついたことを伝えるためにサクラは声を掛けるが、一瞬仕事の手が空き研究に意識が向いたスタンツェは上の空だったようだ。

「・・・なんだよ・・・」

「今から紙に絵を書きますね。私のいた国にあった風習です。ダズンローズといういわゆる結婚式の誓いの一つでして、本来であれば、花嫁が持つ花束に使われる花の一つ一つに意味を込めます」

「ほう、それで?」

「感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠の十二個の意味が込められています。ダズンは元の世界で『十二』を表す言葉ですね。あぁ愛情は民へ向けたものとして考えてくださいね。これから、私がメッツェン様の代わりに東の国では王女として振る舞いますが、それでも私は皆さんに助けてもらった身です。ですので、この十二の誓いを皆様に差し上げます。受け取ってくれますか?」


サクラの話を聞いていた全員が、言葉を告げられず静寂が訪れる。


「サクラちゃんが結婚しちゃう・・・」

「え?違いますよ?」

「サクラよ・・・・これは婚約ではないか・・・」

「いえいえ、違いますよ?」

のほほんと人外者たちとやり取りをするサクラに、人の代表としてゴッセがわずかに言葉を挟む。

「・・・・サクラ・・・・これはさすがに受け取ると魔物殿の領域に触れると思う・・・」


「・・・えーっと・・・では、ペアンくんとウィスカーさんには個別で贈って、皆さんにはまとめてという形なら良いですか?」

「・・・愛情の向ける先を民衆とし、我の分は我に向けてくれるのであれば良かろう・・・」

「あたしは愛情の所を友情でいいよっ」

「では、交渉成立で」

サクラはホッと息を吐く。

せっかく思いついた誓いなので、忘れないうちに気持ちを表現しておきたいのだ。


「・・・なぁ、交渉したぞ」

「しかも成立しちゃったな」

「・・・それで・・・良いんだな・・・」

人側の三人は小さく、小さく話しかける。

この世界の常識を前提にしていないとしても、契約している訳ではない人外者と交渉を始めるサクラが規格外すぎるのだ。

機嫌を損ねれば、国一つ滅ぼせる魔物も存在しているのがこの世界である。


そんな人間の会話なんぞ知ったこっちゃないサクラは、どんどん書き増やして五枚揃える。

ペアンとウィスカーが最終確認するとして、五枚とも手渡すとサクラの書いた紙の文字が光りだす。

光がふわりと立ち上って、花びらのように散った。


ペアンがサクラに一枚の紙を渡す。

「サクラ、先ほどのように説明してから渡してくれ。まずは我に」

「はい。感謝、誠実、幸福、信頼、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠、そしてあなたへの愛情をペアンくんに」

「・・・あぁ、汝と共にいつまでも」

ペアンの手元で紙が青い薔薇になり、ペアンの口づけと共に結晶化した。

「・・・うわぁ、騙して結婚し・・・」

「次はウィスカー、おぬしで良いか?」

非常に良い笑顔でウィスカーの言葉を遮るペアン。

苦虫を潰したようなウィスカーが小さく頷く。


ウィスカーも選んだ紙をサクラに渡す。

「・・・うん」

「・・・では、ウィスカーさんに」

サクラは愛情を友情と変えて、紙を渡すと同じように変化し、黄色い薔薇の結晶が出来た。

ウィスカーはその結晶をペアンに取られないよう、急いでどこかに隠していた。


残り三人には、国民への愛と三人への友情と変えて渡す。

サクラからそれぞれに渡した紙は、三人が受け取った瞬間にブローチに変形した。

薔薇の形を台座に、共通して深い青と黄色の宝石がついている。

それぞれの瞳の色に近い宝石が付いているのが違いだ。


手元のブローチをそれぞれ三人は見つめている。

「・・・これは?」

「お前たちはサクラの守護のために魔力を削った。その失った魔力に代わるのもので、そこにわずかに魔力を流せば離れていても、互いに会話が出来るぞ」

「なんだとっ・・・」

スタンツェは慌てて他の二人からもブローチを奪おうとするが、アドソン達も興味津々で手放さない。

「サクラの守護の一つになるお前たちを削られるわけに行かないからな。・・・聞いておるか?お前たちには役立ってもらわねばならん。聞いておるか?」

人外者への敬意など吹き飛び、珍しい機械に目を輝かせる男子たちは、サクラに既視感を覚えさせた。

サクラも新しい機械を見ると、なぜだか心が弾むのだ。

人間と魔物の壁を分厚くせず、過度の緊張を持たずに交流出来るのならば良い事なのだろうとサクラは結論づけた。



「さて、サクラは我がいれば、こやつらと話せるが・・・想定外のことがあるかもしれん。これを左耳に」

ペアンは先程の薔薇の結晶から葉を一枚とり、サクラの左耳に近づける。

鏡を見ると月と星の耳飾りに小さな緑の宝石が付いた。

「遠くにいても、望めばここにいるものたちに話しかけられる」

「わぁありがとうございます!大切にしますね」

満面の笑みを向けるとペアンが猫様に戻ったので、サクラは抱きしめ、撫でまくる。

全員がミルクティーを飲み終わり、何となく解散となった。


自室に戻ったサクラは宝石になったウィスカーを机の上の定位置に置き、ペアンとベッドで眠る。

明日早朝からは馬車での移動になるが、また車酔いになる心配がよぎった。


「あ、酔い止めのポーションって、スタンツェさん持っているかな?ついでに、荷物を小さく収納できる魔術ってないかな?」

慌てて飛び起きたサクラを目を見開いてみているペアン。

急いでスタンツェさんの部屋に向かう。


「ニャ、ニャー!」

薄着のサクラを捕獲したペアンが、スタンツェの部屋に飛び込むまであと五秒。

大切な誓い。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

60話にして、やっと国外に出る話が出来ました。

15の月14日はそれぞれの意思を固める日ですので、もう少しお付き合いください。


誤字報告とても助かっております。

未だに閲覧数が10人超えるとビビる小心者ですが、良いねや評価、ブクマ、コメントを頂くに値する物語を描けるように精進します。

連日23時アップ予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ