報告-15の月、14日、3枚目
話を進める
サクラとウィスカーとペアンは、厨房からミルクティーのセットを持ち込んだ。
メッツェンの執務室を出るときに、ペアンは再度猫型に戻り、定位置に落ち着いている。
「そういえば、いつ出発しますか?」
メッツェンに向かって、サクラは首を傾げて問う。
こめかみを押さえ続けるメッツェンは、小さく溜息をつきながら答える。
「・・・明日・・・ねぇサクラ・・・本当に利用していいのよね?」
「今は西の国でメッツェン様に仕えていますからねぇ。利用してください。ちなみにその王子様との結婚は確定なのですか?」
「いいえ、まずは婚約を結べるかどうかね。国同士の約束ではないのよ。この国から厄介払いをされるあたくしと、あの国で長く生きられないと言われている第二王子の仮の婚約よ。向こうにむかう途中で王女が襲撃されるか、あの国の王子が儚くなればそれで終わり」
「分かりました。では私が襲撃されるまで、メッツェン様は無事に隠れていてくださいね」
メッツェンの苦悩と決心のついたサクラの奇妙な会話が続いており、周囲は静かに見守っている。
スタンツェはメッツェンの為になると評価するくらいはサクラのことを認めているので、恐らくこのまま『サクラがメッツェンの身代わり』として話が進むと考えている。
アドソンは異世界から来た少女が案外図太い神経をしていて、毎日が面白いのでこのまま楽しければいいと、二人の会話を見守っている。
「いえ、だから・・・少しはサクラも生きたいと願ってくれないかしら?みすみす殺されるものですか。あたくしたちは生き残って、向こうの王子には早めにどうにかなってもらうわ。そして、・・・自由に生きる!」
「メッツェン、落ち着けー。不敬と取られるぞー」
「メッツェン様、落ち着いてください。・・・サクラ、後ほど詳しく説明しますが、向こうには王女一名、侍女一名、文官一名、騎士二名で向かうと通達します。使い魔は何にでも変化出来ますので。そのくらいの帯同は西の国も東の国も許すでしょう。・・・この国に縛り付けられるメッツェン様を自由にするには、この婚姻が必要になるのです」
「あぁ、なるほど、メッツェン様を自由にするための婚姻で、結婚することが目的ではなく、国外に出ることが必要なんですね」
「・・・結婚は本当にしなくてもいいのよ、一旦国を出てしまえばどうにでも出来るわ。ただ、襲撃を受けずに東の国に到着した場合は、あちらの国で謁見くらいは済ませないとならないの」
「謁見も婚約も結婚も、構いませんよ。私は皆さんに救ってもらったのですから。明日、東の国に出発ですね。準備します」
「・・・サクラが話を聞いてくれていない気がする・・・」
「サクラっておもしれーな」
メッツェンはとうとう拗ねた。
アドソンがカラリとした笑いを響かせる。
サクラは話がひと段落したと判断し、全員にミルクティーを振る舞う。
人型に戻ったペアンもウィスカーもサクラを挟んでソファに座り、紅茶を味わう。
長いソファにペアン、サクラ、ウィスカーが座り、反対側にアドソン、スタンツェが座る。
メッツェンは中央の一人掛けソファに座りたくないとごねたため、執務机に座っている。
眉間の皺が落ち着いたメッツェンが話しかける。
「・・・ところで、妖精と魔物にはそれなりの対応しないといけないのだけれど、この場合はどうしたら良いかしらね・・・」
「どうしましょうかねぇ。国王の契約者の方はどう過ごしていますか?」
「同じ魔物ではあるんだが、歴代の国王がその時代ごとの神殿を建てていたな」
「・・・神殿ですか?ペアンくん、必要ですか?」
絵画の魔物に神殿が必要なのかとサクラはペアンを見つめる。
今度はペアンが眉間に皺を寄せて答える。
「我はサクラと共に居られるのなら、我の城に戻るぞ。だが、サクラはそれを望まぬのだろう?」
「そうですね、皆さんと一緒に過ごしたいです」
「・・・困ったお嬢さんだが、人間は関りの中で知識を蓄積し、応用して新たな知見を見出すからのぅ。・・・まぁ今のままで良い」
「あたしもサクラちゃんと一緒にいれば良いよっ」
「・・・ということになりました。メッツェン様は宜しいですか?」
「・・・そうもいかないからと人間の都合で突っぱねると、それはそれで不敬になるわ。望まれることを叶えることは、高貴な存在においては大切な対価なの」
ペアンもウィスカーもサクラの傍にいることを望むのだからと、このままの対応を東の国に持ち込むことになった。
悪巧み?
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連日23時アップ予定です。




