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報告-15の月、14日、2枚目

王族の婚姻

 ペアンの顔を眺めて満足したサクラは、改めてメッツェンたち三人に向かって頷く。

後ろと左側に座る人外者に視線を移し、話だす。

「ペアンくん、ウィスカーさん、聞いてください。私は、今回のお話を受けたいと考えています」

「だが・・・」

「メッツェン様には婚約出来ない理由があり、私には利用価値があると考えてくれた結果のことです。私を頼って頂けたことは、とても嬉しいことなのですよ。あぁ・・・・それに人間の結婚は紙っぺら一枚のものですから、そこまで深刻なものではないです。・・・いざとなれば全力で逃げだしますよ」

朗らかに宣言するサクラに、思わずスタンツェがツッコミを入れる。

「サクラ・・・王族の結婚はたぶんもうちょっと重いものだ」


「ふむ・・・では婚約だけして、守護を頂いているので出来なくなりました、というのはどうですか?」

サクラは珍しくにやりと笑う。

「やだ、この子、本当にすっぱり切り捨てるのね・・・」

ウィスカーが素に戻って話している。

「・・・元々結婚なんて期待していないですからねぇ」

「サクラって、やっぱおもしれーな」

のんびりと持論を展開するサクラに、憮然としたペアンは黙っている。


「・・・それにメッツェン様と私の関係なら命令一つで良いはずです。ですが、私に意見を聞いてくれました。この婚礼を私に勝手に擦り付けるのが嫌だったのでしょう?」

「・・・えぇ・・・そうよ」

「・・・ですが、婚姻は捉え方によってはいい機会です。メッツェン様は自由になれます。そして私はずっとこの世界で、皆さんと居られる結びが増えます」


サクラの右横に座り直していたペアンが、思わずといった具合にぎゅうぎゅうにサクラを抱きしめる。

「我は汝を離さないぞ。我と婚姻を結べばいい」

「ふふ、ありがとうございます。私もモフモフ猫様にはずっと傍にいてもらいたいです」


締め付けてくるペアンの腕の間から、顔を見せたサクラは笑顔で首を傾げる。

「でも、私がこの世界で生き延びることが出来たのは、メッツェン様たちが保護してくれたからなんです。私は皆と生きて行きたいのです」

「むぅ・・・」

サクラに言い切られたペアンは否定出来ず、サクラの肩に顔をうずめる。


ペアンの頭を撫でながら、サクラは首を傾げる。

「・・・あれ、もしかして私は一人で東の国に行くのですか?」

「サクラちゃん、あたしは一緒に行くからねっ!」

「・・・貴方を一人で行かせることは無いわ。ここの・・・全員で行くわよ」

「わぁ、それなら安心しました。ぜひうまくお話を進めてください!」

「・・・・わかったわ。サクラ・・・ありがとう」

手紙を開封したときよりは軽度になっているが、メッツェンの眉間の皺が酷い。

苦悶表情ってあんなだったなと、サクラは元の世界での仕事を思い出す。


サクラを手放そうとしないペアンは、明らかに不機嫌で周囲を見渡す。

「我は納得しておらん・・・」

「ペアンくんはこれからも一緒にいてくれるのでしょう?まだまだ話していないことがたくさんあるんです。東の国に行く途中や、あちらでもこれからゆっくりお話をしていきたいのですが・・・嫌ですか?」

「ぐっ・・・我は汝と共にいる。汝は我の恩寵なのだ」

「サクラちゃん、あたしもっ」

「はい!ウィスカーさんもぜひずっと一緒にいてくださいね」

「うん!」


メッツェンは人外者を手玉に取るサクラが末恐ろしく、絶対に敵に回さないと心の中で誓った。

ほのぼのとしたサクラに、一気に疲れた顔になったスタンツェが話しかける。

「うまく話を纏めた気になっているが、サクラ、報告を」

「はい。えっと・・・こちらは宝石の妖精でメイドさんなウィスカーさんで、こちらの使い魔猫様が知識の魔物のペアンくんです。お二人とも色々秘密があったようで、このお姿が本来の姿らしいです・・・こんな説明でいいのでしょうか?」

眉間に皺が寄ったままのメッツェンが口を開く。

「簡潔明瞭に謎を残してくれて、ありがとう・・・」


「なぁ結局、スタンツェが出した使い魔がサクラに懐いて、妖精と魔物になったってことかー?」

「そうなりますか?」

「・・・サクラ・・・・本来妖精も魔物も使い魔から成ることはない。それに、守護を与えることは、本当に珍しいことだ」

スタンツェの言葉を引き継ぎ、メッツェンが王族側の事情を話す。

「魔物なり妖精なりから契約を受けるということは、一国の王として必須ではあるのだけれど・・・守護はほとんど例がないわ。しかも、複数名から守護を受けるというのは歴史上でそうあることではないはずなの。ただ・・・・そうね・・・この手を使わせてもらって、国外に逃亡してから東の国の王子と婚約の話を破棄しましょう」

「はい、よろしくお願いします。契約とか守護とかが珍しい事例だとしても、私にはこの世界の全てが珍しいものなので、このまま楽しみますね」


「お前はつくづく変わっているな」

「サクラっておもしれーよなー」

「一度死んだ人間ですからね、明日死んでも悔いはないのですが、この世界を味わいます」

いつも通りの笑顔で答えるサクラに、アドソンとウィスカーは笑い、ペアンは溜息をつき、スタンツェとメッツェンは頭を抱えるのであった。


 せっかく人型のペアンくんに会えたのでと、サクラがミルクティを作ることを提案すると、皆が同意してくれた。

サクラは準備を進めながら、6人で同じものを飲む日がこれからも続くことに、安心していた。

所属と自由の両立を願うサクラ。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

連日23時アップ予定です。

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