報告-13の月、6日、1枚目
気づき
テントに朝日が差し込み、自然と目が覚めた。
すでに料理人と騎士たちで、朝食の用意がされている。
少し離れたところで、メイドたちと村の女性たちで洗濯をしている。
近くを流れる小川はまだ水量が多く、濁っているため近づけない。
水の魔術を持つ方が大きな桶に水を張っておいてくれたそうだ。
ちなみに桶は大工たちが作ってくれていた。
無事だったお家から持ってきた家財道具でもなんとかしのげたようだけど、大型の桶は助かっている。
何か手伝おうと思っても、手際が良く連携が取れているので、邪魔になりそうだとサクラは判断する。
「何か困ったことや、改善したいことがあればいつでも教えてください」
食事の準備が出来たと声がかかり、配膳の手伝いをする。
アドソンとスタンツェにも配膳を頼まれた。
他のテントよりも大きな本部テントを覗くと、書類を作っているアドソンと、まだ寝ぼけ眼のスタンツェがいる。
空気がどんよりしているのは、アドソンが書類作りが苦手の為で、スタンツェは朝が苦手だからだろう。
もしくは何かあって徹夜したかとサクラは事情を聞こうとした。
「おはようございます。朝食を持ってきました」
「サクラ、おはようー。ありがとなー」
「書類仕事は手伝えることがあれば言ってください」
「おっ、じゃぁ、食事が終わったら、さっそくお願いするわー」
「はい。・・・スタンツェさんはもう少し眠りますか」
「んん・・・そうする」
先に二人で食事を取る。
ペアンはサクラの膝の上で丸くなり、いつもより一回り小さく変化する。
アドソンの悩みは書類は定型が決まっていないので、思いついたことを書いてしまって進まないようだった。
スタンツェのを真似して書こうとするが、言い回しが難しいらしい。
サクラはこれまでに知った二人の性格を考え、なんだか微笑ましくなってしまう。
定型文を作ることと、王女宮でスティーブンが開発していたように定型の書式を作ることを提案する。
サクラが文書を見せてもらっている間に、アドソンが二人分の食器を片付けに行ってくれた。
昨晩の死の妖精についての記載を見つける。
この世界はファンタジーだと思っていたことが現実にあり、その中で人々が生きている世界だった。
怪我もするし、病気もする。けれど、理由の種類がとても多種多様だった。
呪い、魔術・・・この近くにも魔獣がいるらしいので、騎士の方が見回ってくれていると話していた。
「このご近所さんたちは今どうしているんだろう・・・ご飯食べられているかな」
もし餌場が無くなってしまい、こちらに来ようにも騎士さんがいて近寄れないとしたら、どこに向かうだろう。
そもそもがけ崩れに巻き込まれて怪我をしていないだろうかとサクラは人外者を心配する。
「戻ったよー。サクラどうした?」
「急ぎで確認したいことが三つあります」
「ん。一つ目は?」
「この近場にいた魔獣はいまどこに?」
「確認しておく。二つ目は?」
「元来この地に住んでいた妖精や魔物さんはいますか?」
「伝え聞いたことしかない。確認する。三つめは?」
「僭越ながら、人外者の皆さんに食料品とかが必要であれば、援助可能かを知りたいです」
サクラの発現に目を数回瞬かせたアドソンは、笑いだす。
笑いながらスタンツェを起こそうとするが、蹴りを入れられてしまう。
サクラは驚くが、アドソンは微動だにしていないため、ほとんどダメージはないようだ。
「あー笑ったー。本当にサクラはおもしれーな!」
「楽しかったようで何よりです」
「それじゃ、騎士団に一つ目を確認して、近隣に被害がないか確認してくる。二つ目、三つ目は村長のスティーレに確認して欲しい」
「はい、では返事を貰い次第、こちらに戻ってきます」
「うん、よろしくねー。あぁ、そうだ。人の輪から離れるときは三人で動くんですよ」
焦って走りだそうとするサクラを、扉の前で妨害する。
形の良い唇に右手の指先をあて、一瞬片目を閉じて囁くアドソンは、非常に様になっている。
向こうの世界で言うならば、爽やかイケメン体育教師がお茶面な一面を出してきた感じだろうか。
一瞬サクラが動きを止めたことに満足したのか、アドソンは笑顔で本部テントを出て行った。
短くはない溜息をつくと、サクラは深呼吸をして顔を上げる。
「まずはスティーレさんを探します」
「ニャ」
いつもどおりに首周りに収まったペアンくんを撫でながら、サクラはテントから出て行った。
複数人で動くことを早速忘れたサクラは、後ほどアドソンに怒られます。
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連日23時にアップ予定です。




