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報告-13の月、5日、スタンツェ

到着?

早馬の報告の通り、村は二度目の土砂崩れに襲われていた。

しかし、今回の人的被害は無かったとのことだ。

長老を始めとして、昔の土砂崩れを覚えている者が、できる限り反対方向の高台に逃げるように説得したそうだ。

さすがに経験者は判断が早い。


先程の休憩時に早馬が戻ってきた。

サクラと共に事情を聴いている。

アドソンは報告に来た者の馬に騎乗してくれている。

「・・・確認しますが、人数は50名、服装は泥がついてますね。野宿で、水は避難している所の近くの沢のものを使っている。家から使えそうなものを持って、高台で過ごしている。怪我人はいない」

「はい。そうです」

「では、なぜ彼らはそこにいるのですか?」

「えっ?」

「は?」

首を傾げるサクラに、俺と騎士が反応してしまう。

サクラとは前提としている常識が違うから、あまり多くの人間に触れさせたくなかったのだが、話を進めるしかないだろう。


「いえ、最初の土砂崩れから五日目になるんです。なぜ今も危険かも知れないところにいるのですか?」

「・・・村の出身者ばかりで村の外で暮らしたことがないので、心配なのでは?」

「心配・・・では家に戻るのは危険で、村の外に出るのは心配であるならば、彼らの安全はどう保障されているのでしょう?領主は何をしてくれていますか?隣の領地の領主からの支援は?」

「えっと・・・」

「サ・・・クラ、そこまでにしておけ」

「・・・失礼しました。最後に一つだけ質問させてください。村までの道を馬車が何台も通っても大丈夫でしょうか?石が転がっていたり、山が崩れていたところはないですか?」

「戻ってくるときには気になりませんでした」

「分かりました。ありがとうございます。何度も質問して、申し訳ありませんでした。休まれてください」

「はっ」


 騎士は馬車の窓から屋根に乗る訓練をしているため、通常通り走行している馬車の窓から出ていく。

同じ馬車の中で休ませるつもりだったサクラは目を見開いたままスタンツェを見る。

片眉を上げただけで気にしていない素振りを見せれば、サクラも小さく溜息をついて話始める。

サクラと俺の常識は少しずれているだけだ。


「・・・スタンツェさんは知っていたのですか?あの村の救援状況を」

「具には把握していないが、あそこの領主は守銭奴で、隣の領主は見えっぱりだ」

「人命を優先できないお貴族様ですか。分かりました・・・私には私の出来ることを全力で行います」

一瞬眉間に皺が寄ったが、いつも以上の笑顔に切り替わる。

笑顔でいることが標準装備のサクラにとっては珍しい変化だ。

まぁ、それだけこの顔を見慣れたということかも知れないが。


「珍しいな、その顔」

「そうでしょうか?・・・緊急事態への対応がなくなったので、少し肩の力を抜きますね。本来であれば最初の土砂崩れに巻き込まれた方のことを案じたいのですが、この世界ではどう捉えますか?」

「恐らく助からないだろう。皆その覚悟が出来ているが、もしかしたらという可能性にかけて、高台に留まっているのかもしれん」

「なるほど。ちなみに地中に埋まっているかも知れない人を探す魔術はあるのですか?」

「それは・・・人間にはない。この地を治める魔物や妖精が協力してくれるならば見つかるかも知れないが、助かる保証がない命に、大きすぎる対価を払うことは出来ない」

「分かりました。ではそこは慰霊に舵を切って、今は残された方の生活を整えますね」

「あぁ、騎士は家の片付けや荷物の運びだしの手伝い、魔術師たちは生活の支援に回れば良いんだったな」

「はい、魔術師さんたちにはプライドが許さないかもしれないお仕事です」

いわゆる輝く良い笑顔を見せたサクラ。

背筋が寒くなったのはなぜだろうか。


「そんなにひどい仕事をさせるつもりか?」

「んー魔術でお風呂場を作って、お湯を沸かして欲しいんです。許されますか?」

「あー・・・・まぁ仕事だからやってくれるだろう・・・説得する」

「はい、あと樽にお水と石鹸を入れて、風でグルグルと洗濯して、乾燥してもらいたいんです」

「・・・説得する」

魔術で風呂場がまず無謀だ。

洗濯と乾燥は野営でやっていた魔術師がいた気がする。

今回の派遣について来てはいなかったような気がするが。


「はい、あと」

「まだあるのか?」

「・・・眠れない方に眠れるような魔術は掛けられますか?」

「・・・眠らせるというよりも、失神させることになる」

「なるほど、じゃぁ、それは聞かなかったことにします」

魔術の理を全く気にかけていないサクラの発想は自由だ。

ただ、魔術でどこまでが可能なのかを知りたいだけのようで、負担に対して効果が薄いと分かるだけでも満足しているようだ。

サクラのいた世界は魔道具がなくとも、カデンというものが溢れており、魔道具に似ていたと聞いている。

眠る魔術がない元の世界では何を使うつもりだったのか、時間が取れたら聞くこととする。


「・・・サクラは村のことはどこまで見えているんだ?」

「どこまでと言われましても・・・私に予知や透視の力はないのです。前の世界で行われていたこと・・・大人への支援、子どもへの支援、衣食住の支援、これからの支援、次の災害への対応を考えています」

「分かった。必要なことがあれば先に言うように」

「今は、お風呂と洗濯機の魔術をお願いします」

「・・・説得はする」

眠るカデンの前に風呂と洗濯のカデンについて確認しておくことにする。


 村に入る直前に土砂崩れが起きていた。

早馬の騎士は顔が青ざめていたが、サクラは何事もなかったかのように指示をだす。

予知の魔術が使えなくとも、あの騎士からすればサクラが異常だと感じるだろう。

アドソンの指示で、騎士と魔術師が総動員で土砂を片付ける。

日が暮れてから、村の住民と合流することになった。

現場の情報収集と支援実働に動きだせます。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます

連日23時にアップ予定です。

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