報告-11の月、12日、1枚目
サクラの有意義な休日
風呂上がりの紅茶を飲んでいるサクラとウィスカーを横目に、ペアンはベッドの上で丸くなっている。
「ペアンくん、折り入ってお願いがあるんですが、良いですか」
急に床に座り込むサクラを、ベッドの上に座り直したペアンが見下ろす形になっている現在。
神妙な面持ちのサクラを前に、使い魔の二人は背筋を伸ばす。
スタンツェからメッツェンへ、サクラの顔色が悪い気がすると報告が上がっている。
ホーマンとの授業も、その後の印刷についてのやりとりでも、サクラは変わった様子はなく、本日の休日も図書館で勉強していたくらいだ。
ペアンを通して、スタンツェはいつでもサクラのことを把握出来る。
スタンツェがペアンと視界を共有するのだが、微妙な変化が感じられるというのだ。
こっそりと人間たちが話しているのを、使い魔と妖精は把握している。
「・・・あの・・・ですね。大変申し訳ないのですが・・・」
俯き、正座した膝の上に固く握られた拳に一層力が入っている。
顔を上げ、唇を引き結ぶサクラ。
「一度で良いので、・・・ネコスイをさせてください!」
ペアンの目が見開き、ウィスカーの首が傾げる。
願望を口に出したサクラは、もう止まらなかった。
「あっ、ネコスイというのはですねにゃんこ様が寝そべっているところに顔をうずめてそのモフモフとしたお体の傍で深呼吸を繰り返すという神聖な行為でして決していかがわしい行為などではなく猫を吸うと表現しておりますがペアンくんが物理的に減ることはなく私からの敬愛が非常に滾る行為なのでして本当は永遠にしていたいですが短時間ほんのちょっと短時間だけ幸せにトリップしたいと考えているのですよいかがでしょうか!」
恐ろしく早口で饒舌に、鼻息荒く語るサクラに、ペアンは頷くしかなく。
ウィスカーは何が起こるのか好奇心が湧き、気配を消して見守っている。
「良いのですねっ!許可をっ!許可を頂けると!!」
「・・・ニャ」
小さく頷くペアンに対して、目をキラキラさせて、今まで見たことがないような笑顔でサクラが話す。
「ありがとうございますっ!以前の世界では私はアレルギーでしたので、にゃんこ様に触れることも近づくことも叶わずにいたのです。ペアンくんにネコスイをさせていただけるなんて、あぁ幸せです。なぁに、いつもペアンくんが私の首周りにいてくださるのとほとんど変わりはないのです。今ベッドに寝そべって頂ければ、そう、その寝そべったお姿でしばらく動かないでいてくださればいいのです。あぁありがとうございますっ!感激です!それでは・・・失礼致しますっ!」
サクラの圧力に負けたペアンはベッドの上でいつものように丸くなり、動かないでいる。
正座したままのサクラがそのペアンの腹部辺りに覆いかぶさる。
正確に言えば、ペアンの腹部と足の隙間に、出来る空間に顔を突っ込んだのだが、あまりに突拍子もない行動であった。
ペアンの毛が逆立ったが、素早く、首元や背中を抱え込むようにサクラの手が伸びてきたため、逃げ出すことが出来なかった。
「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「ニャ」
「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「・・・」
「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
一呼吸ごとに脱力していくサクラを物珍しそうに見つめるウィスカーは、困惑顔のペアンも視界にとらえ、声を出さずに爆笑する。
数回深呼吸を繰り返したあと、サクラの呼吸は静かになった。
「ニャォ」
「サクラちゃん、寝ちゃったのかなー?」
「ニャ」
床に正座したままベッドに寄りかかるように眠るなど、よほど疲れていたのだろうと、ウィスカーはそっとサクラの姿勢を直す。
くったりとウィスカーに寄りかかるサクラはいつもよりも幼く見えた。
「ペアンちょっとどいて、サクラちゃんをベッドに寝かせてあげるからっ」
「ニャ」
ベッドに横たわらせ、布団を掛けてあげる。
「ペアンは今日はサクラちゃんと壁の間で眠ってよ!あたしはこちら側で眠るから。たまにはいいでしょ?」
「・・・ニャ」
「心配しなくても、何もしないっ。じゃおやすみー」
「ニャーォ」
そのままサクラは朝までぐっすり眠っていた。
夢の中でサクラは、元居た世界でお花見をしていた。
老若男女入り乱れて、美味しいご飯やスイーツを食べて、桜を見上げていた。
それはとても楽しい夢で、ずっとサクラは笑っていたのだった。
作者の技量限界により、猫吸いの魅力が表現しきれませんでした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
連日23時にアップ予定です。




