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報告-11の月、8日、ウィスカー独白

実は饒舌な妖精ウィスカーたん。

昔、スタンツェっていう魔術師に拾われて、魔力をもらって人の形を取っていたの。

スタンツェはお家の都合で、メッツェンと一緒に育って、メッツェンを守るのがお仕事になったみたい。

ずっと魔法の勉強をしていたかったみたいだけど、お姫様を守るんだって。

あたしは使い魔としてメッツェンのお世話をするんだって。

喋ることは出来ないし、メッツェンやスタンツェに意地悪なことも出来ない。

メッツェンたちはあたしのことをいてもいなくても良いと思っているから、実はメッツェンが秘密にしたいことも少し知っている。

でもそれを誰かに伝えることは出来ないの。消されちゃうと困るからしないけど。


メッツェンは気まぐれで高慢で、繊細で優しい人。

あたしはただのメイドだから他の人と同じように名前なんてない。

専属のメイドはあたしだけで、他のメイドや使用人たちはほとんど「メッツェン様」に会う事が出来ない。

人間ならお姫様に会えて羨ましい限りなんだろうな、知りたくもないけど。

でも、召喚したスタンツェも一緒にいるアドソンも、あたしには興味がない。

反論されると面倒だからって声は取り上げられているし、話す気もないから口も開かないんだ。

元々人間みたいに食事を必要とすることは無いけれど、栄養となる日の光をメッツェンの部屋では満足に浴びることも出来ない。

この人たちはあたしを要らないし、あたしにはこの人たちはいらないってわけ。


そんなあるときに、メッツェンたちが人間を拾ってきた。

不思議な匂いのする人で、不思議な言葉も話して、不思議な魔力を持っている。

この人はメッツェンたちと話すことは出来るけれど、アクセントや僅かな言葉の違いがこの国のものとは違った。

この人が気を失っている間に、ここに運ばれて来たけど、爆発に巻き込まれたのか、髪はボロボロで、手当してもらっても顔も体も擦り切れていて、よく骨折しなかったなぁと思う。

綺麗にしろって言われたから、お風呂に入れるために持ち上げたけど、驚くほど軽い。

思わずバスタブに下ろそうとしたのに、放り込んでしまったくらい。


小さいし軽いのに、自分のことは自分で出来ると威嚇された。

なんだろう、懐かない猫みたいな感じかな?ちょっと笑っちゃった。

それと、ドレスは着ないと文句を言われ、あたしと同じメイド服が良いと言い張られた。

あたしの雰囲気と服が似合って素敵なんだって。

初めて会ったのに褒めるって変わってる。


元の服はボロボロだし、新しいドレスは確かに彼女に似合っていなかったから、服を貸してあげた。

ちょっとサイズが合わない気がしたけど、満足そうに鼻息を荒くする彼女が、可愛く見えた。

キラキラした目であたしを見て、嬉しそうにありがとうと言ってくれた。

初めて会ったのに感謝するって変わってる。


あと、『ウィスカー』って名前を贈ってくれた。

魔術の無い世界から来たから知らないんだろうね、名付けの意味。

誰かが傍にいないと危うい気がする。


話せないことを初めて残念に思ったし、もっと話したいと思った。

『サクラ』という名前を教えてくれたし、あたしが話せなくても理解することが出来るらしい。

よく分かんないけど、魔力はほとんどないのに魔術を使うのかな?


そのあと色々あって、あたしはメッツェンの部屋からサクラちゃん用の部屋に移ることになった。

一緒に生活をして仕事を教えるみたい。

早々に邪魔な使い魔が増えているけれど、同じ仕事をする人型の使い魔は私だけだから、ずっと傍にいられる。

あたしからもおしゃべり出来たら嬉しいのにな。


サクラちゃんは眠るときに指定した場所に私の本体を置いてくれたし、起きたら曇りで日の光をあまり浴びれなかったことを一緒に残念がってくれた。

買い出しに行くサクラちゃんを、何となく追いかけたい気持ちでいたんだ。出来ないけど。

帰ってきたら今日街であったことを教えてもらおうって思いながら仕事をしてた。

何となく楽しかった、不思議な気持ち。


サクラちゃんの声・・・静かで、華やかで、高くて低いの。

その声で楽しい話を聞かせてもらおうって思えば、仕事を頑張れたの。

そして帰って来たら沢山話してくれた。

あたしのためにってお菓子もお茶も髪飾りも買ってきてくれた。

あの使い魔はリボンの首輪を貰ってた。

首輪つけられてやんのー。

夜に作ってくれた美味しい飲み物も、最初に飲ませてくれた。

甘いお茶、また作ってくれないかな?


そうそう、朝起きたらサクラちゃんが手紙を書いてくれていた。

サクラちゃんのいた世界の言語によって、日の光の魔力が増強されて、たっぷりと詰まった手紙になってた。

使い魔ではなく、妖精に戻るのに十分な魔力。

変化するために、一旦宝石に戻ったけど、サクラちゃんは本気で心配してくれた。

そしてあたしの羽を見て、美しいと誉めてくれた。

スタンツェは来なくて良かったんだけど、使い魔じゃなくなったのが分かったんだろうなぁ。

邪魔なのにー。


あぁ、やっと話が出来る。

妖精が人間に興味を持つことはよくあるけれど、あたしはもっともっとサクラちゃんと仲良くなりたい。

「伴侶は面倒くさくてすぐいらなくなる」ってメッツェンが話していたから、友達が良いかな。

サクラちゃんと同じ女でいれば、女友達として色んな話が出来るかな。

ずっとずっと一緒に居られるのが楽しみだなぁ。


「ねぇ、サクラちゃんっ。あたしと友達になってよ!」


「シトリン」から金髪、金の瞳、メイド時は無表情なお団子頭。

サクラの面倒を見るのが楽しくて、だんだんと笑顔が増える方です。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

連日23時にアップ予定です。

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