報告-17の月、9日、4枚目
夜の部
王女宮にメッツェンがいた頃の夕食の時間となった。
使用人の厨房では相変わらず様々な地方の伝統料理が、お弁当籠にコンパクトにまとまっている。
サクラたちの議論も一旦中止となり、再度明日集まることとなった。
食事はこの国の為に王女宮で働く者は、低額で誰でも食べられるとのことで、ホプキンスたちも購入していた。
今日は王都でのお祭りによく出ていた揚げ物が入っているらしい。
お弁当を九つ運ぶエレバが、サクラに向かって質問する。
今向かっている先はエレバたちが昨晩泊まった三階だ。
「えっと・・・サクラさんはどこに泊まる予定でしょうか」
「メッツェン様の執務室の横に使用人の部屋があって、元々そこを使っていました」
「なるほど」
「本当に手狭な部屋だよ。東の国みたいな執務室はメッツェンの所しかない」
ゴッセが苦笑しながら補足する。
「ふむ・・・今は大広間で、沢山の検討をしていますが、我々だけで話がしたいときや、休日が取れるようになったときに、どうしたものかと考えました」
サクラはしばし首を傾げて、口を開く。
「・・・それでしたら、お城の設計を変えてしまうんですよ。大広間に新しい食堂を付けると怒られそうなので、私の部屋を食堂に、空間魔術の厨房はそのままで、壁に各自の部屋の扉を取り付ける感じにすれば。それぞれの空間も確保できますよね?」
「サクラっておもしれーな」
「お前・・・それはどれだけ魔力を使うか気にしていないだろう?」
「食堂はメッツェンの執務室が良いんじゃないかな。人外者たちがサクラちゃんの部屋を使うと怒りそうだよ」
「当たり前だ。我の領域に侵入するでない」
「ほらー」
「そうすると、厨房と食堂が併設になっているので、皆さんがお腹が空いたときに自由に食べたり、飲んだり出来ますでしょうか」
「なるほど、俺たちは自分で調理は出来るけれど、魔物と妖精は使用人の厨房には行けないし、料理も出来ないか」
「そもそも、夜中にご飯を食べるなら、自分たちの魔力でどうにかしてほしいけどねっ」
「ふふっ。一緒にお茶を飲むだけでも、安心するときがありますからねー。王女宮の食堂を利用しつつ、魔物さんも妖精さんも空間魔術の厨房を自由に使ってもらって、皆でのんびりしましょう」
「それなら、東の国みたいに夜は遮断の魔術でもかけておけば、護衛もいらないかー」
「好き勝手に言っているが、お前らに渡した空間魔術の扉は、荷物用なんだよ。これから広げるとなると、魔力が厳しいぞ」
「今日は我が広げてやるぞ。城を自力で建てられる我らなら併設空間くらいは容易い」
「・・・今までの苦労はなんだったんだよ・・・」
「それはサクラが出来る限り人間の力でやりたいと話したからだな。必要なところは手を貸してやるぞ。サクラのために働け人間ども」
唖然としているスタンツェに、どや顔のペアンというカオスっぷりだが、ちゃっかりとペアンに扉を押し付けているアドソンとゴッセ。
ついでにと、ためらいがちにコッヘル達もペアンに渡す。
サクラはひたすらペアンを褒めたたえて、部屋の拡充を図らせていた。
運んで来た夕食のお弁当籠が冷めてしまう前に、配置が決まった。
メッツェンの執務室だったところを食堂として、空間魔術の併設の厨房、元々つけられているトイレとシャワーの空間にうまくトイレとシャワーを造設して貰えた。
「わー!さすがペアンくんです!!」
サクラは大げさでもなく、大興奮でペアンを褒めたたえた。
メッツェンのクローゼットだったところは食料などの倉庫になる。
応接室兼小会議室を付け、まだ中身は空っぽだが大きな本棚を置く。
食堂は大きな楕円のテーブルで全員が囲んで座れるようになっている。
部屋の内装はメッツェンの執務室をベースに、東の国の作りも取り入れられており、落ち着く仕様だと、サクラは感じる。
季節ごとに気分転換できるようにするが、これはゆくゆくペアンが担当してくれるそうだ。
各自の部屋への扉は壁に取り付けられており、開けば奥に二十畳ほどの空間が広がっていた。
「魔物殿の力がこれほどとは・・・」
感嘆したコッヘルにペアンがどや顔で近づく。
「全てはサクラの為だからな」
「うわっ、この厨房すげぇ。こんなに調味料を揃えるの大変だったんじゃない?」
「あ、それは東の国に向かうときに、ここの料理長のミテルさんが持たせてくれたものと、中央区で買い足したものですよ」
「わー、良いなぁ。あっ、これは保冷庫?食材の倉庫の他に保冷庫もあるなんてなー」
「あとは・・・器材は西の国で揃えた者が多いです。独立型キッチンを可能にしたのも西の国の職人さんですね」
「うん、良い腕してるね。農林水産担当として、興味が出ましたっ!」
ラスパが空間魔術の厨房を見て回っており、どんどん笑顔が輝いてくる。
つられてサクラも笑顔になり、説明を初めてしまう。
東の国でサクラが幽閉されていたときに使っていた寝室は、他の人は入れないようになっていた。
体調不良者や隔離が必要な者が現れたときは使わせて欲しいと、サクラはペアンにお願いする。
「サクラの望みは何でも叶えてやりたいからな。そういう理由なら構わないぞ」
「ありがとうございます!」
サクラの掌の上で、ごろにゃんごろにゃんと転げまわる青い猫を想像して、ウィスカーは溜息をつく。
「知識の魔物ってもっとしっかりしていると思ってたんだけどなぁ。まぁ、あたしも楽しいからいっか!」
「ウィスカーさん、食後のデザートは何にしましょうか?保冷庫から選んでください」
「あ、あたし、久しぶりにサクラちゃんのパンケーキが良いっ!」
「我にも作ってくれー!!」
「えっ、じゃぁ、ご飯食べてから作りましょうか。少しお時間くださいね」
「はーい、サクラちゃんありがとうっ」
それぞれの空間魔術の中で、ひとまずの野営のセットを使って皆眠りました。
西の国の特産品を把握しながら、家具の選定をこなすコッヘルたちが見られるのでした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
上手くまとまらないことばかりですが、明日も23時台に更新できますように。




