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報告-17の月、9日目、3枚目

協力者

大広間での話し合いを続けていると、入り口側が騒がしくなった。

サクラが首を傾げたと同時に、大きく扉が開く。

大きな音に肩が揺れたが、ペアンがのんびりと首回りに居るため、力を抜く。

そっとウィスカーが背中をさすってくれる。


「おぉ、やっとるなー!」

「声がデカい」

緑色の垂れた前髪、緑色の力強いまなざし、そして大きな声の女性が、大股でこちらに向かって歩いてくる。

すかさずスタンツェは小声でツッコミを入れている。


「母上、おはよう!」

「良い朝だな!」

アドソンが挨拶をしたことで関係性が分かった。

目元がアドソンにそっくりな女性はアドソンの母だ。

史上初の女性の騎士団長として憧れている騎士も多い方。

笑顔が爽やかで、すらりとした高身長から、シンプルな黒の騎士服でも華やかな印章を受ける。


「スタンツェ…無事かい?」

スッキリとしたスリーピースの礼装で優雅に歩いてきたのは、青い短髪をオールバックにまとめた男性と、シルバーのロングヘアを揺らしながらエスコートを受ける青い瞳の女性。

「…恙なく過ごしています」

スタンツェが目を伏せて答えると同時に、ぎゅうぎゅうに抱きしめる二人。

「スタンツェが無理をするから、心配で半日しか眠れなかったんだよ」

「半日も寝たのか」

「お肌が荒れちゃうじゃない」

「少しくらい肌が荒れても、すぐに治して貰えるでしょう」

物静かで優雅な雰囲気の二人が口を開けば、一気に騒がしくなった。

サクラは目を見開いて見つめてしまう。

「スタンツェのご両親は愛情たっぷりすぎて、スタンツェが小さい頃から少し離れていないと胃もたれが酷いくらいに、仲が良かったらしいよ」

苦笑しながらゴッセが説明してくれる。


「相変わらずの仲の良さですが、今は私の紹介をして頂いてもいいですかな?」

屈強な体つきに精悍な顔立ち、独特の風合いを持つ布が目を引く礼装に、前の世界のドレッドヘアに飾りがついたような髪型の、壮年男性が立っていた。

「済まない。久しぶりに息子に会えたものだから、忘れていたよ!こちらは北の国との国境付近を護る辺境伯だ」

「今回の面白い話を持ってきたのは…あんたらと東の国の第二王子だな」

視線を向けられたコッヘルは驚く。

「私をご存知なのですか?」

「あぁ、北の国のことは大体把握しているからな。君の義理の母上の実家も昔交流があった。幼い頃に療養していただろう?」

「そうです」

「大きくなったな」

「あ、ありがとうございます」


「はいはい、あたしは自己紹介をさせてもらいますよ。いつまで待っていても順番が来やしない」

新しい声に驚いて入口付近を見ると、ローブを目深に被った老婆がいた。

「あたしは南の辺境伯だよ。この格好は仮の物なんだ。気にしないでおくれ」

小柄であるが、顔が見えない分、侮ってはいけない圧を感じて、サクラは背筋を伸ばす。

「へぇ…お嬢さんは魔物に護られているんだね」

「あっはい。有難いことです」

「人外者は大いなる力で人間を助け、大いなる気まぐれで人間を滅ぼす存在だ。仲良くやりなよ」

「ありがとうございます。努力します」

一礼するサクラの首回りにいるペアンの尻尾が、大きく揺れる。


意を決したコッヘルが口を開く。

「皆様のことはメッツェン嬢から伺っています。今回のクーデターの貴族側の協力者と言うことですが」

「協力者の代表だな。近隣の領地からも委任状を持ってきている。平民の代表と東の王子がうまく国を治められるように、支援するのが我々の総意だ」

貴族らしからぬ発言に驚いたホプキンスは声を荒らげる。

「ちょっ…ちょっと待ってくれ。コッヘル…さんは良いとしても、なんで平民の俺がこんな所で国の代表になってるんだよ。今は来ている貴族の中からで決めれば良いじゃねぇか」

「…それはね、面白くないからだよ」

「は?」

「君たち平民も知っている通り、生活もままならない国民と、現状を理解しない屑共がいるだろう」

「屑なんて屑に失礼ですわ。役目を果たした結果、残った物でしょう?あの人達はなんの役にも立たないのよ」

「スタンツェの母上はいつも通りだなー」

「いつも美しいって褒めてくれてありがとう」

「褒めてはいないし、話を進めたい」

スタンツェのツッコミにサクラは小さな拍手を送る。


「まぁ、そんな訳で、一度国を崩壊させて、新しい王となる人には意外性が必要だと考えたんだ」

「それが他国の王子であり、平民だった。正直二人とも連れてくるとは思わなかったけど」

「私は臨時の役目を引き受けただけです。器はホプキンスさんに方が大きく、この方が導く西の国を見たいと考えています」

「おい、勝手に」

「勝手には決めていないよ。今から五年はコッヘル、その後はホプキンスにこの国を良くして貰いたいんだ」

ゴッセからも再三言われていることを、念を押されてしまう。

「だがな…あー…もう逃げ道はねぇな。済まん、覚悟が足りなかったようだ」

「それは私もです。ほら、こんなに手が汗で濡れています」

「コッヘル、それは人に見せる物じゃない」

すかさずエレバとラスパが手の汗を拭き取る。

連携プレーが美しいと妙な感動を、サクラは覚えた。


「ホプキンスと言ったね。どうせ貴族籍はなくなって、同じ国民となるんだ。うまい酒でも飲んで、騒いで仲良くやろうじゃないか」

「母上、昼間からのお酒はダメですよ。夜に酒盛りしましょう」

「まず仕事をしろ」

アドソンのフォローにスタンツェが突っ込む。

眉間に皺を寄せて、小さくため息つくスタンツェも、心なしか楽しそうな雰囲気が滲み出ている。


「スタンツェったら、よく出来た息子だわー」

「なるほど、何となくスタンツェのツッコミの切れと、仕事への集中力、面倒見の良さの根本を垣間見た気がします」

「楽しい親御さんで良いねぇ」

「あれでも仕事は優秀なんだ。落差が酷いから気をつけてくれ」

コッヘルが微笑みながら、頷いた。


「では、それぞれの本を読み込みながら、今後について話を進めよう。さっき分担したとおりに机を準備する」

ゴッセが手を叩くと、王女宮の使用人達が机や椅子を持って入ってくる。


中央の大きな円卓から、八方向に壁に向かった所に執務が出来る机が置かれる。

机と机の間には王子宮から持ってきた腰高の棚と、西の国に関する書類が詰められていく。

五名の貴族は円卓に座り、領主として長年の経験や知識を披露し、指示をだすことになる。

コッヘルと共にホプキンスは学び、サクラは書記や質問を行う。

残っていた読み書きの出来る平民達も、ゴッセ達と共により良い生活になるための制度や支援を考えていく。

厨房で出来上がった様々な地域の伝統食を摘まみながら、夕方まで討論と執務が続いていった。


さくさく話を進めたい…のですが、都合により一週間ほど更新が不安定になるかと思います。

できる限り毎日更新したいと考えています。

もし更新する場合は23時台になります。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

良いね、評価はもちろん、PVが頂けるのは、とても有難いことです。

感謝して、日々精進いたします。

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