第四話
一度ネイビーに袋に擬態してもらってから宿屋に入り、すべての荷物をおいてきた俺たちは、宿屋についている酒場でドラゴンのステーキを食べていた。
ネイビーもすっかりネコの姿に戻り、生のドラゴンの肉をがつがつと食べている。
さっき小悪党食べたばっかりなのになあ。
「うまいか?」
チリンチリンチリンッ。
鈴が激しく鳴る。
どうやらネイビーはご満悦のようだ。
まあドラゴンの肉美味しいもんな。
脂がのっていて食べると舌の上でとろける。
何も味付けしなくとも美味しいが俺のおすすめは塩だけを振りかけることだ。
それ以外の調味料は一切要らない。
ドラゴンの前では不要だ。
「美味しいかい?」
宿屋の女将さんが聞いてくる。俺は表の顔で満面の笑みを作った。
「最高ですッ!なあチリン!」
チリンチリン♪
俺の表の顔に合わせて、ネイビーもすっかり可愛らしく鈴をならしている。
ちなみにネイビーは外ではチリンと呼んでいる。
ファルセム・アルデカンドとネイビー、お人好しのファムとチリン。これがイコールで結ばれると大変に困るのだ。
今の俺達は
『たまたまお掃除の仕事にいったら、そこが貴族の家で、やけにクエストクリア報酬が高かったから豪遊するだけのただの冒険者』だ。
「まあ、しばらく食べられなくなるし、しっかり味わって食べておくれ」
…?
女将今なんつった?
ドラゴンの肉が食えない?
は?????
……待て、ネイビー。
殺気を向けるのは早い。
「えええっ! 宿屋のお姉さん、なんでドラゴンの肉が食べられないんですかっ!?」
我ながら反吐の出るネコの被り方だが仕方ない。
ドラゴンの肉はネイビーの交渉材料なのだ。
ドラゴンの肉がなければ昨日の仕事ももっと面倒だったろう。
「実は『ドラゴン狩りのイフリート』が腕に傷を負っちまってね…ドラゴンに挑むなんてやつなかなかいないんだよ」
何をやってる筋肉火だるま…。
イフリートは『ドラゴン狩りのイフリート』と呼ばれるほどドラゴンに精通した冒険者だった。
この町に住んでいれば必ずと言っていいほど耳にはいる。
個人的には炎の魔法を使う筋トレお化けのイメージが強く、筋肉火だるまと呼んでいるが、市民からすれば一大事だろう。
しかしこれは困った。
もちろんドラゴンは倒せる。
しかし、お人好しのファムは、あくまで、表向き。
薬草取りにネコ探し、仕事を選ばない弱小冒険者だ。
こんなのがドラゴンを狩って来ては疑われる。
疑われるならまだしも、信じられたら更に迷惑だ。
俺の表の顔は目立たずのんびりするためにある。
弱小クエストを受けてその時間で『ながら暗殺』を進めるためにある。
つまり今回、お人好しのファムの出番はない。
かといってファルセム・アルデカンドはすぐに動けない。
ファルセム・アルデカンドはボランティアをしないのである。
何を言っているのだと思うかもしれないが、非常に重要なことだ。
善人は利用され食い潰される。
特に貴族なんかにはいい餌だ。
それだけは避けたい。
お人好しのファムは善良且つ最弱だからこそ多くの人間の信頼を勝ち取り、価値ある情報を得ることができる。
ファルセム・アルデカンドは評価に値する強さと、汚れ仕事でも行える利便性、しかし気分屋で金を詰まれないと仕事をしないという危うさで、頼りたくないが頼らざるを得ない環境を作り、権力を勝ち得ている。
つまり今回のクエストはどちらがやっても違和感が残る。
しかしこのままではネイビーの気がすまないだろう。
まず風呂に入れてシャンプーして落ち着かせてから、それで……。
……はあ、第三者作るか……。
いや、四話にして三つ目の顔を出してしまいました……。
生温かい目で見ていただけると幸いです。
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