必殺技のリスクと代償〜クラッシングとファスト・トラッキング〜
「新さん! スケジュールが2週間遅延しています! このままだと納期に間に合いません!」
佐藤の報告に、新は腕を組んだ。納期遅延はプロジェクトの死を意味する。
「よし、スケジュールを短縮(圧縮)する。PMPが授ける2つの必殺技、『クラッシング』と『ファスト・トラッキング』を発動するぞ!」
【PMP試験の重要知識:スケジュール圧縮技法(Schedule Compression)】
スコープ(作業内容)を変えずに、スケジュール期間を短縮するための2つの手法。
1. クラッシング(Crashing):
やり方: リソース(要員や設備)を追加投入して作業時間を縮める(例:残業を増やす、熟練者を増員する)。
リスク/デメリット: コスト(費用)が増加する。また、人員を増やしすぎるとコミュニケーションオーバーヘッドにより効率が落ちるリスク(ブルックスの法則)がある。
適用条件: クリティカル・パス上のタスクに対して、最も少ない費用で短縮できる作業を選ぶ。
2. ファスト・トラッキング(Fast Tracking):
やり方: 本来は順番(直列)に行うはずの作業を、オーバーラップさせて並行(並列)して実行する(例:設計が完全に終わる前に、見切り発車で実装を開始する)。
リスク/デメリット: 後から手戻り(リワーク)が発生するリスクが大幅に増加する。追加のコストは直接かからないが、失敗した際の時間損失が大きい。
新はふたつの選択肢を提示した。
「設計チームに助っ人を投入して残業で押し切るのが『クラッシング』だ。だが予備費が吹き飛ぶ。一方、設計が終わるのを待たずに実装を開始するのが『ファスト・トラッキング』だ。コストは増えないが、設計変更があったら作り直し(リワーク)になる」
佐藤が汗を拭う。「どちらを選ぶべきですか……!?」
「今回はクリティカル・パス上の最重要タスクだ。手戻りのリスクは冒せない。予備費を使ってクラッシングを選択する! ただし、増員による混乱を防ぐため、追加要員の手順書は僕が用意する!」
必殺技には必ず代償がある。そのリスクを理解して選ぶことこそが、PMの腕見せどころだった。




