エベレスト登頂と炎上のサイン〜バーンダウンチャート〜
アジャイル開発のスプリント(2週間の開発期間)が始まって1週間。新は壁に貼られたグラフを見上げて頭を抱えていた。
縦軸に「残作業時間」、横軸に「日数」。本来なら、日が経つにつれてグラフの線は右斜め下に下がっていくはずだった。しかし、目の前の線は右肩上がりに急上昇し、まるでエベレストのようにそびえ立っている。
「新さん、我がチームのバーンダウンチャートです!」と陸が笑顔で報告してくる。
「笑っている場合か! バーンダウン(焼き払う)なのに、残タスクが燃え広がってどうする!」
【PMP試験の重要知識:バーンダウンチャート(Burndown Chart)】
概要: アジャイル開発において、プロジェクトやスプリントの「残りの作業量(残タスク)」の推移を視覚的に追跡するグラフ。
読み方:
理想線: スプリント開始から最終日に向かって、残作業が「0」になる直線(右肩下がり)。
実績線: 実際に毎日残っている作業量をプロットした線。
異常値の分析:
実績線が理想線より上: 進捗が遅れている(作業が残っている)。
実績線が右肩上がりに上昇: スプリントの途中で新しい作業がどんどん追加された、または見積もりが甘くて作業量が増えたことを示す。
類似概念:バーンアップチャート(Burnup Chart)
こちらは「完了した作業量の累計」と「全体のスコープ量」を積み上げていく右肩上がりのグラフ。スコープの変更(作業の追加)が視覚的にわかりやすい。
「なぜ作業が増えているんだ?」新が問い詰める。
「えっと、開発途中で『これも必要だ』と気付いたタスクを勝手にカードに追加しまして……」
新は深く溜息をつき、チーム全員を集めた。
「バーンダウンチャートの線が上昇するのは、プロジェクトが侵食されているサインだ。アジャイルでは、スプリントの途中で安易に新しいタスクを詰め込んではいけない。入れたいなら、同等の作業量のタスクを外す(優先順位の入れ替えを行う)のが鉄則だ」
新は追加されたタスクを次回以降のバックログに戻し、グラフの線を強引に引き下げさせた。
「チャートは嘘をつかない。右肩下がりの美しい傾斜を守ること、それがチームの正気を保つ防御壁なんだ」




