カジノの確率と、3.2%の奇跡〜モンテカルロシミュレーション〜
「新さん! スケジュールを計算したら、予定通り12月1日にリリースできる確率は100%です!」
提出された完璧な工程表を見ながら胸を張る陸に、新は苦笑いを浮かべた。
「陸、現実はそんなに甘くない。開発には『体調不良』も『突然の仕様変更』も『バグの発生』もある。それぞれの作業にはブレ(確率分布)があるんだ」
新はパソコンを操作し、専用のシミュレーションソフトを立ち上げた。
「PMPのリスク分析で使われる『モンテカルロシミュレーション』を実行するぞ」
【PMP試験の重要知識:モンテカルロシミュレーション(Monte Carlo Simulation)】
概要: カジノで有名なモナコの「モンテカルロ」に由来する、定量的なリスク分析手法。コンピュータを用いて何千回、何万回もの試行を繰り返し、プロジェクトの全体結果(所要日数やコスト)の確率分布を導き出す。
仕組み:
各タスクの所要時間を単一の「3日」ではなく、「最少で2日、通常で3日、最大で8日かかる(確率分布)」と設定する。
コンピュータが乱数を使って全タスクの組み合わせを数千パターン計算する。
得られる成果: 「○月○日までに完了する確率は70%」「予算内に収まる確率は45%」といった確率的数値がグラフ(Sカーブ)で表示される。
試験での出題ポイント: スケジュールやコストの「定量的リスク分析」において、最も代表的なツール。単なる感や最善のシナリオではなく、客観的なリスク確率を算出する際に使用される。
画面上で、数万回のプロジェクト実行結果が瞬時に計算されていく。
グラフが表示された。陸が目を見開く。
「え……!? 僕たちが提出した12月1日に完了する確率……3.2%……!?」
「そうだ。最善のケースだけを積み上げたスケジュールの成功率は、カジノの当たりくじより低い」新は画面を指さした。「だが、このグラフを見ろ。90%の確率で完了できる日付は『12月15日』と出ている」
新はシミュレーション結果を携えてスポンサーのもとへ向かった。
「感情論ではなく、数万回の計算結果です。90%の安全圏を取るため、リリース日を12月15日に補正させてください」
客観的な確率データに、スポンサーもぐうの音も出なかった。モンテカルロは、未来の不確実性を数字という武器に変えるツールだった。




