魚の骨と、五つの「なぜ」〜石川ダイヤグラム〜
「またサーバーが落ちただと!?」
月曜日の朝一番、新の怒号がオフィスに響いた。リリースしたばかりのシステムが停止し、現場はパニック状態だ。
若手の陸が青ざめた顔で報告してくる。
「再起動して復旧はさせました! 原因はメモリ不足です。すぐにサーバーのメモリ容量を倍に増設しましょう!」
「待て、陸」
新はホワイトボードに向かい、大きな横線を一本引いた。その線の右端に「サーバー停止」と書き、左側に向かって魚の骨のように斜めの線を何本も描き足していく。
「障害の表面だけを見てメモリを増やしても、根本原因を潰さなければまた同じことが起きる。PMPの品質管理で使う『石川ダイヤグラム』で要因を解剖するぞ」
【PMP試験の重要知識:石川ダイヤグラム(Ishikawa Diagram)と 5 Whys】
概要: 問題(結果・特性)と、それに影響を与える要因との関係を網状に表した図。形状が魚の骨に似ていることから「魚の骨図(Fishbone Diagram)」や「要因解析図」「Cause and Effect Diagram」とも呼ばれる。
作成手順と観点:
1. 右端に問題点(魚の頭)を書く。
2. 背骨から大きな枝(大要因)を伸ばす。大要因の分類には、製造・現場では「4M(Man:人、Machine:設備、Material:材料、Method:方法)」、IT・サービス業では「人、プロセス、技術、環境」などが使われる。
3. 大要因から小枝を伸ばし、「なぜ(Why)」を5回繰り返す(5 Whys)ことで、表面的な現象の奥にある「根本原因(Root Cause)」を突き止める。
試験での出題ポイント: 根本原因分析(Root Cause Analysis)の代表手法。「問題を即座に修正する(応急処置)」選択肢はバツで、石川ダイヤグラムなどを用いて「根本原因を特定して再発防止策を講じる」のが正解。
新はマーカーを手に、チーム全員に問いかけた。
「なぜメモリが不足した?(1回目のなぜ)」
陸が答える。「ログファイルが肥大化したからです」
「なぜログが肥大化した?(2回目のなぜ)」
「エラーログが秒間で何千件も出力されていたからです」
「なぜエラーログがそれほど出力された?(3回目のなぜ)」
「接続タイムアウトの再試行ループが無限に回っていたからです」
「なぜ無限ループが発生した?(4回目のなぜ)」
「例外処理のコードで、ループの脱出条件が抜け落ちていたからです」
「なぜ脱出条件が抜け落ちていた?(5回目のなぜ)」
ベテランの佐藤が言葉を詰まらせた。「……コードレビューのチェックリストに、例外処理の確認項目が無かったからです」
ホワイトボードの魚の骨の端に、真の要因が浮かび上がった。
「真の犯人は、メモリの小ささでも、佐藤さんの不注意でもない。『コードレビューのチェックリストの不備』というプロセスの欠陥だ」
新はメモリ増設の申請書を破り捨て、チェックリストの改定を命じた。魚の骨を描いたことで、チームは目先の対処療法ではなく、本当の予防策を手に入れたのだった。




