木を見ず、森を看よ〜プロジェクト・プログラム・ポートフォリオ〜
「新君、君のプロジェクトの成功は素晴らしいが、会社全体の戦略目標から見ると、少し軌道修正が必要かもしれない」
経営企画室の長谷川から呼び出された新は、一瞬首を傾げた。現場のプロジェクトは予算内・納期通りに順調に進んでいる。なぜ全体戦略の話が出てくるのか?
長谷川はノートを開いた新に、組織における「3つのマネジメント層」の違いを教え始めた。
【PMP試験の重要知識:プロジェクト、プログラム、ポートフォリオの違い】
組織の戦略目標を達成するために、階層ごとに異なる目的と管理アプローチが存在する。
1. プロジェクトマネジメント(Project Management)
定義: 独自のプロダクト、サービス、成果物を創出するために実施される、一律の期間(開始と終了がある)を持つ明確な取り組み。
関心事: 特定の「スコープ・スケジュール・予算・品質」を守り、具体的な成果物を生み出すこと。
問い: 「この成果物を正しく作れているか?(Doing things right)」
2. プログラムマネジメント(Program Management)
定義: 相互に関連する複数のプロジェクトをグループ化し、統合して管理すること。個別に管理していては得られない「全体のシナジー(ベネフィット)」の獲得を目指す。
関心事: プロジェクト間の依存関係の調整、リソースの最適分配、重複作業の排除。
例: 「新世代ECサイト構築プロジェクト」と「配送物流システム刷新プロジェクト」を一つの「EC事業改革プログラム」として束ねて管理する。
問い: 「複数のプロジェクトが連携して期待通りの成果を生み出しているか?」
3. ポートフォリオマネジメント(Portfolio Management)
定義: 組織の全戦略目標を達成するために、プログラム、プロジェクト、その他の運用作業をまとめた最高位のコレクション(集約)。含まれるプロジェクト同士に必ずしも直接の関連性があるとは限らない。
関心事: 組織の限られた投資資本・リソースを「どの事業に優先して投下するか」という意思決定と優先順位付け。事業価値の最大化。
問い: 「私たちは正しいプロジェクトを選択して投資しているか?(Doing the right things)」
「なるほど……」新はペンを走らせながら深く頷いた。
「僕がやっているのは『プロジェクト』の成果物づくりです。でも、それが隣の部署のシステムと連携して会社に利益をもたらすかを監視するのが『プログラムマネジメント』。そして、そもそもこの開発に会社の予算を割くべきかを経営視点で判断するのが『ポートフォリオマネジメント』なんですね」
長谷川は微笑んだ。
「その通りだ。PMは自分のプロジェクト(木)を完璧に育てる責任がある。だが、プログラムマネージャー(森のまとまり)やポートフォリオマネージャー(森全体の経営戦略)の視点を持てば、なぜ急な優先順位の変更や予算の組み替えが起きるのかが理解できるようになる」
新はノートの最後に、こう書き加えた。
「視野を広げろ。木を育てるPMであっても、常に頭上に広がる『ポートフォリオという大空』を意識して舵を取るべし」




