奪い合いから価値の創造へ〜コンフリクトを越える交渉術〜
プロジェクトは最終盤。急遽、最高難度のセキュリティ実装が必要になった。しかし、社内でその技術を持つ最高峰のスペシャリスト・加藤は、別の花形プロジェクトにアサインされている。
そのプロジェクトのPMに「加藤さんをうちのチームに譲ってほしい」と頼んだが、「ふざけるな、うちもギリギリだ」と一蹴された。
リソースの奪い合い。新はノートの「交渉(Negotiation)」のページを開いた。
【PMP試験の重要知識:交渉(Negotiation)の原則】
概要: 予算、リソース、スケジュールなどの制約の中で、関係者と合意を形成するプロセス。
試験でのポイント:
単なる「勝ち負け(Win-Lose)」の取り引きではなく、**「Win-Win(相互利益)」**の解決策を見つける。
「主張(Position)」ではなく「利害(Interest)」に焦点を当てる。 相手が「なぜそのリソースを渡したくないのか」という真のニーズを解明する。
新は相手のPMと飲みに行き、彼の「利害(真のニーズ)」を聞き出した。相手が困っていたのは「加藤の負荷が高すぎてパンクしそうなこと」と「来月のテスト工程の手不足」だった。
新はノートに新しい提案を書いた。
「加藤さんを『完全に奪う』わけじゃない。うちのセキュリティ実装に必要な『毎週火曜の3時間』だけ貸してほしい。その代わり、来月うちの若手2名を、あなたのチームのテスト作業のサポートに回す」
相手PMの目が輝いた。「……それなら、うちの加藤の負担も減るし、テスト要員も確保できる。乗った!」
自チームの利益だけを追うのではなく、会社全体、そして相手のメリットを創出する。
深夜、新はノートをそっと閉じた。
知識として丸暗記しようとしていた「People」の言葉たちが、今では自分の血肉となり、現場の人間関係を、チームを、そして自分自身を変えていた。
試験のテキストを開く。まだ学習すべき領域(ProcessやBusiness Environment)は残っている。だが、新の心に「覚えられるか自信がない」という不安はもうなかった。
「人」と向き合う術を知った彼に、恐れるものは何もなかった。




