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8「キス四回目、好きな人の為にNTRチャラ男へ本気でその身を捧げる決意する生徒会長その一」


★☆


七月十九日


 青い空、白い雲、説明のしようがない何処からどう見ても夏。

 あと暑い。

 今からこれだけ気温が上昇したら八月に突入した途端、綺麗に溶けてしまうんじゃないかと心配。

 心頭滅却すればなんとやらだが、そんな崇高な思想へ到達する前に干物になりそうだ。

 炎天下の中を徘徊しているせいで汗が流れ出る。


 一応取り引き四日目……なんだけど、今日、明日は学業が休みなので生徒会長と会うことはない。

 鬼の居ぬ間の洗濯ってやつだ。


「雪ちゃんと竜石堂ちゃんは夏休みどうするんだ? 俺は例のごとく一族総出で檀家参り……」

「私は部活辞めたから暇人。海でも行こうかなぁ。雪之丞はバイトだって」

「今回は喫茶店だな」


 暇潰しに流星達と買い物がてら駅前通りを散策していた。

 夏の商戦で賑わっている西口駅前通り。

 大きめなショッピングモールもあるがそこには行かずメイン通りを行く。

 ここは国民的アニメの聖地で知名度が高い。

 流星が竜石堂ちゃんの水着買うのつき合うよと、セクハラ紛いの発言するから俺とお竜でクロスボンバーを決める。


 人通り多く注目を浴びたせいなのか、前方から手を振る人物あり。

 また補導かと脳裏を過ぎったけど、いずこかで接触したことがある姿。

 その人懐っこい笑顔は人妻に拉致られそうなヤバさがあった。


「あー竜石堂さん達じゃないか! 偶然だね」

「お、長野ちゃん。私服初めて見たよ」

「おーすー長野っち」

「長野、相変わらずテンション高いな。今からそれだと夏休み前に枯渇するぞ」

「アミューズメントパークで音ゲー成分注入していたから大丈夫」

「好きだよな」

「気持ちはわかる。私も好きなヌイ出たら全力投球するもん」

「ごきげんだから自己記録を更新ってところか」

「正解! 俺はゲーマーだからね」


 こいつは長野ながの彼方かなた。  

 白川桜華学園二年生。自他ともに認める廃ゲーマーだ。

 ただ俺とは正反対な陽の者で、人懐っこい明るいキャラだからクラスでも人気者らしい。

 もちろん彼女がいる。

 誰かは秘密にしているがナチュラルに自慢してくるから腹立たしい限りだ。

 手作り弁当なんてキャラ弁だからな。

 自炊している俺も弁当派だが、鰹節バク盛りしてあるノリ弁一択なので羨ましい。


 饒舌で何でも正直な辛口野郎だが、屈託ない笑顔のお陰で憎むやつはいない。

 普通は避けられるかウザがられる。


 冗談であろうが、俺に面と向かってルックスがクズで軽薄そうな雰囲気を醸し出していると初対面で評価した。

 喧嘩強者に見えて豆腐メンタルの俺は、しばらくの間引きずったのは言うまでもない。


 じゃまたと長野が来た道を引き返すので、あんま課金すんなよとか家族泣くぞとかアドバイス。


 対して、たはは、善処するねと長野は手を振りながら去っていった。


「俺達以外で典型的な褐色不良の雪ちゃん相手にびびらない奴いるんだな」

「右に同じ。そっちのほうが驚愕」

「うるさいわ。だから俺は不良じゃねえ」

「見た目夜な夜な欲求不満の人妻たらし込んで性欲処理してそうなヤバイ間男でも、長野ちゃんなら友達になってくれるんじゃね?」

「あの誰でもフレンドリーな長野っちなら、ヘタしたらとっくに俺達は友達だよまである。例え風貌が恋愛で女をマインドコントロールして金稼ぐ道具程度にしか認識してなさそうなドクズだとしてもね」

「お前ら大概にしておけよ。しまいには犯すぞ」


 流星とお竜がイヤーンとシナを作る。

 こいつらも存外明け透けもないことを口にする。

 親友だから構わないけどなぁ。


「そういえば長野ちゃんといえば、鹿伏兎生徒会長は長野家に居候しているらしいよ」

「おろ、親戚なのかな? この前、鹿伏兎会長、長野っちか分からないけど夜の街中男性と歩いていた」

「興味ねえな。第一二人共他人のプライベート詮索するのは感心しないぞ」 


 とはいえ会長の詳しいプロフィールは掌握してないので、今後有利にことを進めたいから情報収集は必須なのは理解している。

 だけど男らしくねえな。


「そうは言ってもね。雪ちゃんが心配なのさ。この前教室で生徒会長に掴まっていたけど、また何かあったのか? 自分が掌握している以上にトラブルに巻き込まれやすい性分なんだから用心しないと駄目だぜ」

「私もそれとなく尋ねたけど誤魔化された。雪之丞はいざこざの神様に愛されてるから難題が転がりこむ」

「そうだ流星、お竜を巻き込むんじゃねぇよ。ペラペラおしゃべり過ぎるぞ」


 銀髪にチョップ。

 こんなチャラくて将来は寺の住職が確約しているのだから世の中間違っている。


「ごめんごめん。でもマジで大変なら相談に乗るよ?」

「そうだね。一人で悩みを抱えているより皆でアイデア出し合った方がうまく行くよ。三人で寄ったらもんじゃ焼きっていうじゃん」

「それを例えるのなら三人寄らば文殊の知恵じゃボケ」

 

 巻き込みたくないが相手はあの女帝だ。

 二人の知恵は借りたい。

 単独で挑むには強大すぎる。


 軽く相談がてらこれからメインのカラオケにでもってところでスマホが鳴る。

 メールだ。

 しかも風雲急を告げる内容と写真。

 俺は急用ができたと流星とお竜に謝罪して別れた。


 メールの指示通り飛ぶようにそのまま近隣の公園へ急行。

 そこにはブランコに座っているうちの制服を着た少女がいた。


 ウェーブが掛かった長い黒髪がゆっくり漕いでいるブランコへ合わせ揺れる。


 目鼻立ちがハッキリしている堀の深い顔立ち、長いまつげ、二重瞼、ハーフと誤解しそうな綺麗な瞳、やや大きめの瑞々しい唇。

 シックで大人びた雰囲気が年齢を引き上げていた。制服着てないとOLにさえ見える。

 圧倒的美少女だから存在感が鮮やかな夏の花々並に強い。

 

「鹿伏兎会長」

「来たな神無月。私服も黒のタンクトップとかとことんNTRチャラ男だ。そんなに細マッチョ自慢したいのか?」

「余計なお世話だ。幾ら生徒会長でもプライベートを詮索する権利はないぞ」

「ないな。しかしキス、今日の分はまだだ。てっきり学園に来てくれると期待して待機していたが待ちぼうけ。無駄に消費した時間返せ」


 表面的にはにこやかだが、明らかに御立腹だった。

 予定をすっぽかしたのが余程気が済まないのか。

 しかし俺にも大義名分があるので退くつもりは毛頭ない。


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