55「新・キスニ回目。第二次元生徒会長VS幼馴染み戦争 校舎裏の奇襲戦」その一
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十一月十二日
新・取り引き二回目。
「もぐもぐ」
「ちょっと真面目に聞いているの⁉ 雪之丞のバカバカ‼」
「ごめんなさい」
学園復帰、一日目の昼休み。
校舎裏の階段で正座しながら想いを馳せる秋の空。
俺のぼっちメシ定番スポットに、高い怒号が人の往来ない静かな空間へ響く。
ここは我が母校『白川桜華学園』。
中高一貫校の私立校。
郊外にあるので電車やバスじゃないと通うのは面倒だが、それに見合ったメリットもある。
エスカレーター式で高校受験がない分、部活や趣味やボランティア活動、六年間やりたいことを打ち込める。
デメリットは通う場所が同じ、教師も校舎も代わり映えしないので過去をリセットして気分一新とか、高校デビューができない。
ただ、学園は自由な校風をうたっている割に、俺に対する扱いが汚れた雑巾扱いなので、友達百人計画のためとはいえ戻ってきたことをちょっとだけ後悔している。
それと中等部から不良のレッテル貼られてるので、新規の友達つくるのは絶望的なのだ。
「もぐもぐ」
「ちゃんと鹿伏兎元生徒会長にお礼いった? 理事長にゴリ押ししてくれなかったら復学あり得なかったんだからね!」
「したよ」
「竜石堂、そこら辺で許してあげてはどうだ? 神無月も十分に反省しているだろ?」
「いいえ。こいつは友達いなさすぎてぼっちの時間が長いから、何かあったときどれだけ私達が心配するのかわかってないんです。今日という今日は雪之丞の為にも徹底的にわからせないとならないです」
「元会長、俺も同意見。お竜がすげー案じてたのは理解しているから反論は一切しない」
それより乙環さんと友達になって初めて昼食を共に過ごしているが、ここで懸念が湧いてくる。
うちはスポーツや学力が結構優秀じゃないと入れないから、各部門で優等生の二人が校舎裏でこんな劣等生とつるんでいるのは不釣り合いではないか?
本来なら学園が誇る輝かしい成績優秀者達のグループにいるはず。
まあ、例え目撃されても、俺が脅している程度にしか映らないだろうな……。
「そうか…………もぐもぐ」
「雪之丞! イケメン顔でそんなカッコイイこと言っても私の怒りは収まらないんだからね。わかってる?」
「すんません」
そんなお竜は白川桜華学園スポーツ科に所属していた。
しかしバスケ部を退部したから、スポーツで生きていく道へ見切りつける。
俺が休学している間に一般へ転科。
ただ、頭が脳筋だったから、相当量の補習を受けながら流星と乙環さんがスパルタで面倒みてくれたらしい。
その甲斐があって俺達と同じクラスになった。
そんなお竜は三ヶ月間音信不通の間、俺のことをまじで心配していたので、登校してからこっちずっと側を離れない。
離れてくれと頼んだらマジ泣きされた。
トイレまで来そうになったから漏れそうになる。
「ずずずっ、ふぅ…………お茶が美味い」
「空港で再開したら安心して、今度は怒りが収まらなくなったんだからね。もう!」
「なんなら殴ってくれてもいい」
「もぐもぐ」
「この馬鹿、死んで詫びろ!」
「……ぐぅううあああ、足が! ぶはぁ!」
痛いから正座崩したタイミングでお竜に殴られた。
しかも乙環さんが箸で足の裏をつんつんしてくる。
冷静だが目が笑ってない。
乙環さんにも怒られたからな。
当然か。
「もぐもぐ。竜石堂玉子焼きいるか?」
「もらいます! 鹿伏兎元生徒会長、味噌汁もください!」
「俺も」
乙環さんは分かったと水筒で持参した味噌汁を紙コップに注いでくれる。
こうして三ヶ月ぶりに乙環さんの制服姿をまじまじ観察すると、改めて美人だと実感。
ロングの黒髪、意志の強そうな太い眉、切れ長の目、彫刻のように鼻筋が通ってる高い鼻、程よく厚い肉付きがいいセクシーな唇。
全体的に整っていて、いつもはクール系美少女で笑うと可愛い女の子。
それが鹿伏兎乙環。
冬服になったので紺のブレザーを着用。
うちはリボンではなく男女共用チェックのネクタイなので、乙環さんみたく凛々しい人が身に着けるとカッコイイ。
ただ、今まで身に着けていた生徒会長の腕章がなくなったので寂しくもある。
「一杯作ったから飲んでくれ」
「ズズッ……雪之丞ちゃんと反省しているの?」
「もちろんだ……ずずずっ うめえ!」
「おにぎり食べるか?」
「ください! もぐもぐ、焼き鮭入ってるよ! うまーい!」
「元会長、俺にもくれ! もぐもぐ。さいこう!」
美味いからと一気にかぶりついたせいで、ご飯が気管に混入。
むせたら乙環さんが飲みさしのお茶を俺に渡し、背中をとんとんしてくれた。
「酢豚もどうぞ。お新香とたくあんもあるからな」
「いやーん、大盛りのご飯がほしい!」
「気持ちわかる」
「済まない、流石にそこまで気が回らなかった」
「冗談です。こんなに美味しいものご馳走になって文句なんて言いませんよ」
「まったくだ。俺は大満足だぜ」
続く説教タイム。
……だったが、こんな感じで足の痺れとお弁当が絶品過ぎ、頭に全然入ってこない。
もう無理と、とうとうギブアップして足を崩す俺。
そこへすかさず乙環さんがミートボールを俺の口へと運ぶ。
うま!
その様子にお竜がじーと俺を睨んだ。
「バリボリ♪ たくあんはお茶によく合う」
「ところで鹿伏兎元生徒会長、こんなところに居ていいんですか? 三年生だもんやること沢山あるでしょ?」
「考えてみたら期末試験に向けて勉強する時期だろ? 上の学年みんなやっているぜ」
余裕ある態度だから忘れていたがもう期末試験が近い。
俺は余裕あるがお竜は危ないだろうな。
前は流星と乙環さんが頑張ってくれたし、今度は俺がこの脳筋を何とかする番だ。
「それが……受験なくなったから途端に気が抜けてしまったんだ。今からじゃ料理部入れないし、図書室でお菓子の資料集めることぐらいだ。まあ、期末試験なんて普段から勉強していれば慌てる必要はないけどな」
「うぐっ! それは私によく効く! ごめんなさい、運動以外は遊んでました!」
「早く来てくれ衛生兵⁉ お竜、傷は浅いぞ!」
倒れるお竜を抱き寄せる俺。
その隣で乙環さんは唖然としてる。
「すまん、僕はその乗りについていけない……」
「でも、ちゃんとした夢が見つかって良かったですよ。私なんて演技のことなんにもしれないから手探り状態です」
「お竜、何事もチャレンジだぞ」
そう、演劇部の部長にスカウトされたお竜は演劇部へ入った。
文化祭のときは王子様役で大活躍だったとか。
お陰様でまた女子にモテだして困っている。
「でも竜石堂、頑張っているみたいじゃないか? 文化祭の劇はとても感動したぞ」
「いやいや、あれはまぐれ。まだ初めたばかりなので皆から叱られていますよ」
「それでもたいしたもんだぜ。お竜は元々、顔が綺麗だし、声もはっきり通ってるし、タッパも高いし、モデル経験もある。案外転職かもしれないぜ? 俺は全面的に応援するからな」
乙環さんはナスの漬物をあーんと俺に食べさす。
それをお竜はまたジト目で観察。
「竜石堂も凄いが、神無月も珈琲の修練に異常な情熱を燃やしている。あの名店のリンゴ亭でエースはっていると知ったら、うちの教師連中は驚くだろうな」
「多分、それでも学園側は雪之丞のことを認めないですよ。見た目がワルだからね」
「しかしよ、パティシエの夢持っている元会長と違って、俺はただ珈琲を極めたいだけだから同列じゃないんだぜ」
シリアスに決めたら、乙環さんがまた何か俺の口にねじ込んでくる。
これは極上の筑前煮だ。
人参とかじゃがいもが口の中でじんわり溶けだす。
砂糖使った玉子焼きも極上。
ふわふわに仕上がっている。
またお竜の視線が痛い。
むぐぐぐと無言の圧が凄かった。




