5「妹言うな鈍感」
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その日の夜。
「………………」
生徒会長より言われなき疑いと心理戦で魂がすり減り、マンションのリビングルームで果てていた俺。
知恵熱でぐったりしているから大の字で横たわるフローリングが冷たくて程よい塩梅。
隣には俺愛用特大クッションの上で、お竜が愛玩猫兼家族のにゃん太郎と戲れていた。
この前彼氏と別れたばかりなのでポッカリ穴が開いているお竜は、「なんでこんな超絶美少女が男運悪いんだろうねぇにゃん太郎?」広いフローリングでローリング決めながら猫に答えを求めるも返ってくるのはにゃあのみ。
そのままボーリングの如く転がり、家具を倒し俺の仕事を増やすまでがお約束だ。
もちろんストライクと言うのも忘れない。
お竜は同じバスケ部員と交際していたが、そいつがどうしょうもないカスでこれ以上我慢できず介入。
色々とその後もいざこざはあったが、法的な力も行使して俺が別れさせた。
大事な妹分をクズ男に好きにさせるものかよ。
「バスケやっていたんだ。性格は男ぽっくて単純でイケメンでタッパも高いから恋人なんてすぐ出来るさ」
「ねえねえそれ褒めてるのかな? 喧嘩売ってない?」
気にしているのか少年と見紛うショートを弄り、餅のように頬を膨らまして怒りというより不満を映した猫目はそっぽを向く。
スポーツマンらしく引き締まっているもフェロモン振りまくふくよかな童貞殺しボディーがたるんたるん揺れた。
抱きしめられているにゃん太郎が羨ましい。
「してないしてない。褒め言葉褒め言葉」
「それより雪之丞またトラブルに巻き込まれたんだって?」
「情報源は流星か?」
「うん。あとゴシップネタになっている。世情に疎いバスケ馬鹿の後輩達も把握していたレベル」
一般的猫の習性に逆らわず窮屈な場所を好むにゃん太郎はお竜が着てるシャツからむりくり顔出し。
シャワーを浴びたばかりだからノーブラなのであのでかいスイカ×二個に挟まっている状態だ。
「それはやべーな」
「内容は知らないけど、あの優しい鹿伏兎生徒会長に目をつけられるなんてよっぽどのことだよ」
「何も悪いことはやってないから心配するな」
「心配はしてないさ。顔は反社か世紀末であれだけど誠実な帽子さんだしね」
帽子さんとは昔の俺のあだ名。
本人いわく常に変なプリントの帽子かぶっているから名付けたそうな。
ちなみに成長が速かったせいでずっと二十歳ぐらいだとおもっていたらしい。
「それは地味に傷つくからやめてくれ。狂暴な目つきなのは自覚しているんだ」
「はいはい。でも相変わらず疲れている割にはおやつは気合い入っているよね」
大皿に盛り床へドカンと直置きしている揚げたてドーナツの山。
トッピングは砂糖一択。
「糖分は心の栄養だ。妥協は一切しねえ」
「私は役得だからいいけど」
俺の趣味である料理に一切の手抜きはない。
おかげさまで料理ベタのお竜に見込まれ弁当をレクチャーしたことがある。
「とにかく困ったら私に相談しなよ。どこまで力になれるかわからないけど、幼馴染みで親友なんだからさ」
「ああ。ヤバくなったら相談に乗ってもらう」
「うん。それでいいよ」
「それといくら親しくても男の前でそんなに肌露出するな。大事な妹分でも守りきれない」
「妹いうな鈍感」
お竜はニカッと向日葵のような屈託の無い笑顔を向けた。
——夜分遅くなったし終電も終わったのでバイクでお竜を家まで送ってくことにする。
泊まっていくときかなかったけど、家族が心配するといけないので今日のところは帰ってもらうことにした。
途中、説得のために費やした食料の補充とわがままアマテラスのご機嫌をなだめるため近所のスーパーへ。
そのままアイスを貢いで食べながら店先でくだらない話を興じる。
いつものことながら駆け引き無しで語る友とのこの時間が愛しい。
「雪之丞は夏休みどうするのさ?」
「俺はバイト三昧だよ」
「平常運転か。そんなに親の援助から脱したいの?」
「ああ。堅苦しい古い家だから独り立ちしないと厳しいしきたりに縛られるからな」
ましてや長男坊の一族となると叔父叔母がうるさいうるさい。
「私は女バスで後輩の指導と友達と海かな。部活やめて雪之丞に比べるとおきらく暇人だから申し訳ない気もする」
「それでいいんだよ。それが普通の青春だろう」
お竜はバスケ選手として再起不能な故障をしてしまった為、表舞台から降りた。
それでも慕っている後輩達を見捨てることができないので指導に当たっている。
「何だったら雪之丞も海くる? もれなくうるはさんのダイナマイトバディーが拝めるよ」
「魅力的だがバイトだ」
「あっそ」
馬鹿と呟くお竜。
何故怒られるのかわからない。
多分ボディーガードだろうか。
あのプロポーションじゃナンパ野郎共が長蛇の列で整理券が必要かもよ。
いざとなったら流星に行ってもらうからと言ったらそれだけは生理的に無理と蹴られた。
何故?
そんなとき前を横切る目を惹く美少女。
眼鏡に帽子をしていても、シンプルな服装ながら背筋が直線に伸びて品格がある。
「あれって生徒会長?」
「よくわかったね。眼鏡して私服だから気づかなかったよ」
ついつい口走ったが、お竜までこのくだらない騒動に巻き込まれる可能性が脳裏に過ると今更ながら冷や汗をかく。
「ああ」
「こんな時間にどうしたんだろう?」
「さてね」
俺は訳を知っているのでとぼけてみる。
おそらく深夜のバイト帰り。
どうやら自宅はうちの近所のようだ。
「なんか気になる」
「お竜、プライベートだからあまり詮索するな」
「真面目ちゃんかよ……あー真面目ちゃんか。外見と不一致だけど」
「やかましい」
だがそれより隣に男あり。
そんな噂は聞かないので驚いた。
まさかパパ活?
いやいや時間的に父親だろうな。




