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俺をNTR系チャラ男と勘違いして上官口調の僕っ子生徒会長があからさまに口止め料のキスを毎日してきて困る。しかも月日と共に愛が重い通い妻化してメチャ可愛い  作者: 神達 万丞
第三話『その加減知らない馬鹿みたいなお人好し、僕は君を昔から知っている気がする…』とても不器用ないいやつ→友達
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46「キス二十八回目、サマフェス三日目、偉大で強固たる幼馴染み達の絆」その一

八月十二日


 サマーフェスティバル三日目


 会場は今日も賑わいを見せているが、流石に最終日だけあってだいぶ落ち着いている。

 しかし本日最大のイベント、納涼花火大会ではまた混雑が予想されるので、まだまだ油断できない状況が続く。


 うちのキッチンカーは別の意味でピンチだが……、


「——神無月、乙環姉さんと一緒にいると結構気を使うだろ?」

「ああ、会長、言葉を間違うとすぐ暴走するんだよな」

「そうそう、助言しても自分の見たこと以外そんなに信じない人だし」

「もろ頑固者」

「そこが姉さんのいいところでもあるんだが……」

「さすが幼馴染み、よく理解しているじゃん」


 今まで険悪ムードを覚悟していた長野との対話。

 一昨日たまたま聞いたあのブラコンぶりを考えるとただでは済まないはず。

 しかし、蓋を開けたら何故か乙環さんの話で意気投合。

 色々と暴走するからお互い心労が尽きない。


「お前ら……目の前で悪口とはいい度胸だな?」

「姉さんを褒めているんだよ」

「以下同文だ」

「だいたい、神無月と彼方、こんなところで油売っていていいのか? 他のお客様に迷惑が掛かるから私語厳禁だぞ」

「いやいや、乙環姉さんお言葉ですがここにお客様いないじゃん!」

「これはお手上げだ。なんなんだよ、うちの周りだけ祭りの跡のような静けさは……」


 どんなに目を凝らしてもお客さんは誰もいない。

 まだ午前中だとしても、来店数がゼロなのは異常だ。 


「神無月は諦めるな! それと彼方、バイトは昨日だけだろ? お前は早く帰れ。じゃ・ま・だ!」

「そんな酷い! 横暴だ! 元々姉さんが俺を呼んだんじゃん! 昨日リンゴ亭の売れ残ったタルト、責任取って一生懸命食べたろ!」

「正直、こんな絶望的状況どうやってひっくり返せばいいか、皆目検討もつかない」


 店前の立て札には、『当店は過剰なサービスをやっておりません』と書いてある。 


 これが閑古鳥が鳴く要因の一つ。

 迷惑かける客しか来ないのなら、これでいいのだがなんとか巻き返しを図りたい。

 じゃないと最悪、俺達の給料がリンゴのタルトになりかねん……。


「割り引きセールにしてチラシ配るとか?」

「俺が引き込みやろうか?」

「どっちも駄目だ。マスターが職人としての矜持があるから、フランチャイズみたいな割り引きとか安売りみたいな真似はしたくないんだ」


 流星に助けてもらってネット炎上の件はなんとか鎮火。

 まだ小規模だったのが功を奏す。

 しかし、見えない焼け跡がリンゴ亭に纏わり付いている。

 

・リンゴ亭のマスターが悪事の限りを尽くした元マフィア。


・使っている食材が期限切れを使い回しいる。


・売春の仲介。


・裏メニューで紳士限定メイド喫茶のサービス。


・脱税


・産地を偽り豆はそこら辺の安いやつ。


 などなど、誹謗中傷と共にばら撒かれたくだらない根も葉もない噂が客を遠ざけた。

 一度下がった信頼度は中々回復しない。


 迷惑な客が沢山訪れたのも、あのビジュアルの乙環さんが色々と裏でやってくれるのならそれは遠くからでも来るだろう。

 SNSで俺が反論してもいいが、流星に炎上の新たなる火種となるから強く止められた。


「待ちの姿勢しかできないのか。歯がゆいな」

「俺も罪滅ぼしに残ったのに出番なしか……」

「いや、長野のその気持ちはありがたいぜ。ありがとう」


 言いたいことは山ほどあるが、俺は素直に頭を垂れた。


 長野は友達と別れて自主的に残る。

 腐ってもあの真面目な乙環さんの弟分、その好意を素直に受け取った。


「いやしかし、彼方は間接的に営業妨害したんだぞ。マスターが給料出してくれるか?」

「いや、報酬はいらないよ」

「大丈夫だ。あのマスターがそんなケチなことするかよ。もし出なくても、俺の給料そっくりそのままくれてやる」

「馬鹿か⁉ ありがたいがそんなことしても君の得にならないぞ」

「神無月本当にいいの?」

「構わん。漢に二言はねえぜ」


 長野は、なんだよ、本当にこいつが女心を手玉に取る極悪人なのか? ニッシーさんに料金払って調べてくれた裏情報とだいぶ違う、いや詐欺師だしこのぐらいお手のものなのか——とブツブツ呟くも俺には聞こえない。


「彼方どうした?」

「いや、神無月って言葉乱暴だが男らしいなと」

「よせよ、武士道を重んずるバリバリの硬派だなんて照れるぜ」

「言ってないぞ。すぐ図に乗るお調子者だ」

「ああ、結構単純系か」

「うるせー。ただ、今困ったことが起こっている。マスターは客が来ると信じてるから今まで通りの数のタルトを焼いたんだ」

「一流の職人を感じる」

「……また売れ残り食べるのか……」

「そうならないように、昨日から流星に色々と動いてもらっている」


 長野と乙環さんは、 「「上杉?」」と見事にハモる。

 

 俺は泣き寝入りだけはしたくない。

 恩あるマスターに惨めな思いは絶対にさせないぜ。


「学園一の優等生、上杉に頼んで何かやる気なのか? 僕の胸ばかり見るから好きになれないが……」 

「おお、あの天才上杉なら心強いね。ムッツリスケベだけど……」

「ごめん流星、我が親友ながら反論できんわ」


 ——そして、サマーフェスティバル最後の正午を迎える。


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