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俺をNTR系チャラ男と勘違いして上官口調の僕っ子生徒会長があからさまに口止め料のキスを毎日してきて困る。しかも月日と共に愛が重い通い妻化してメチャ可愛い  作者: 神達 万丞
第三話『その加減知らない馬鹿みたいなお人好し、僕は君を昔から知っている気がする…』とても不器用ないいやつ→友達
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44「キス二十七回目、サマフェス二日目 陰謀渦巻く夏の祭典」そのニ


「神無月、疲れてないか? 休憩になったら僕が握ったおにぎりをやるから頑張ってくれ!」

「おっしゃ、今のエールで完全回復したぜ」


 乙環さんへ俺はニカっと笑い、自慢の力こぶを見せつける。


「そうか。それは心強いな。台所借りて作ったかいがある」

「なあ乙環さん……いやなんでもない」


 実は色々と迷惑をかけた乙環さんへ、貢物というかプレゼントを購入した。

 乙環さんそっくりな威厳のある皇帝ペンギンのヌイグルミ。

 しかし中々渡す機会がなく現在に至る。

 大したことじゃないのに時間が経つほど緊張してしまう。

 この分じゃ、お竜にあげることになりそうだ。


 ——太陽を遮る雲がない煌めく空・素足で歩行不能なほど熱せられる砂の熱・観客と一体化するロックバンドのボルテージ 。


 バカンスあるいはロマンスを求め客足は止まらない。


 そんな中、海水浴場と隣接している海岸公園でひときわ目立つ時計塔の針は正午をさした。


「………………………………」

「………………………………」


 正午のお知らせのあと、レストラン・軽食エリアへ観光客達は民族大移動の如く怒涛の勢いで殺到する。

 目的の昼食を求めて彷徨うのだ。

 

 なのだが、今、俺達は言葉を失い立ち尽くしている。


 現在、海水浴場へ来ている客は主に三ヶ所へ集まっていた。


 一つめが海の浅瀬及び砂浜。

 理由は海があるからに他ならない。

 恋人や友人同士が青春を満たす為、ハメを外してはしゃいでいた。

 水着が流されるのもライフセーバーに助けられるのもひと夏の思い出。


 二つめが有名オタク系デスメタルバンドのライブ。

 メイン会場のイベントは最高潮。

 理由は主な目的として訪れた客が多いからだ。

 リア充は死ね! カップルはくたばれ! 爆死しろ! と大騒ぎして一番客層が悪い。

 どうでもいいが、この灼熱地獄の中、出演者も観客も革製のデスメタルファッションで頭がどうにかしている。


 そして三つめがレストラン・軽食エリア。

 もちろん理由はお腹を満たす為だ。


 ——本来ならここも大いに盛り上がっている筈なのだが……、


「またお客さん減ったな……」

「やはり昼時はレストラン系に敵わないのか?」

「確かにそれもありえるが、昨日は息つく暇もなかったろ?」

「ならどうしてうちに来るお客さんが少ないんだよ。飽きたとか、まさか俺の人相が悪過ぎて敬遠してしまうとか?」


 そう、ここで想定外のことが起こる。

 昨日と同じならお昼時で混むはずなのに、まだうちの客がまばらなのだ。

 並ばなくても席へ座れるほど、お客さんの来訪率が悪い。

 流行り廃りは世の常か。  

 都会から来た観光客が多いので開店から暫く経ったラーメン屋みたいな扱いだな。


「それはない。神無月見ろ、他の店もまばらで店員達が呆気にとられている」

「じゃ、その客は何処に消えたんだ?」

「一つの店に食われているんだ」 

「まじかよ」


 確かに乙環さんの差す方角にはものすごく長蛇の列ができている。

 

「にわかには信じがたい光景だぞ」

「三星のコックか、ラーメンのカリスマが来ているのか?」

「うちにはマスターがいるんだからここまで酷くならない」

「だったらアイドルとか?」


 これだけの行列、よっぽどの知名度もしくは美味さがないと説明つかない。

 マスターも三星並なんだがそれをも凌駕する?

 それとも他の要因なのか?

 

 しかし偵察なんて恥ずかしい真似をやるつもりはない。

 俺はただ職務を全うするだけ。


「それについて神無月に話がある」

「どうした?」

「たぶん、彼方の仕業だ」

「長野?」


 どうしてここであいつの名前が出てくるんだ?


「彼方がそこの店で働いているんだ」

「は? たかがそれだけで客が一点集中するか?」

「あいつは顔がいいからネットでもモテるんだ。だから告知すれば集客力は上がる。それにあいつの友達はアイドル並の粒ぞろい。下手な話、ただの焼きそばだって数倍の値段付けても売れる」

「まじか……あいつら校舎ですれ違ったことがあるな。キラキラしていて眩しかったっけ。結局男はイケメンしか勝てないのか……」


 そんなことないぞ、僕は男らしい硬派なやつが好みだと励ましてくれる乙環さん。

 お世辞が上手くなったな。

 久々にときめいてしまった。


「昨日聞いたんだ。もしかしたらネットの知名度上げるために何か企画やるかもって。まさかこれほど影響及ぼすとは思わなかったぞ」

「もっと早く教えて欲しかったな」

「済まない。サプライズ企画だから口止めされていた」

「しかし、今はそれどころじゃないか……」


 客が来ないもの問題だが、実はもう一つ問題があった。 

 もしかしてこっちの方が面倒かもしれない。 


 ふへへ、おとわちゃんここにサインしてよとか、リンゴ亭の女王様、ボクチンに萌え萌えキュン♡やってとか、あ、ゴキブリでも見ているような顔で踏んでとか、困った迷惑客が急増中。


「すみません、ここはメイド喫茶じゃないでそういうサービスはおこなっておりません」

「申し訳ございません。他のお客様の迷惑になるのでお帰りください」


 さっきから来る客来るお客が乙環さんを指名してくるんだ。

 下手したら一緒に写真撮ってくれと俺にお願いしてくる。

 

 俺の脅しにも全然怯まないのがまた質が悪い。

 チャラ男と違い、性癖に忠実な萌え豚どもは肝が据わっている。


 更に何処で知ったのか、乙環さんの名前が知れ渡っていた。

 可能性としては、もしかして昨日動画とってる客がいたのかもしれない。


「写真で僕をとるのはおやめください」

「ネットに流すのもお控えください。おと—ーうちの店員に迷惑がかかります」


 この通り、今ここへ訪れるのは変な野郎ばかり。

 明らかに乙環さんがターゲット。

 まるでこじれている迷惑系アイドルの追っかけみたいに目がイッている連中だ。


 こんなところで働く以上覚悟しているんじゃない? とか、色んな野郎へ媚び売るならボクがネットのアイドルにプロデュースするよとか、かなりキツイ言いがかりをつけてくる。


「遠慮します……」

「うわ……キモ」


 同性の俺でさえめちゃくちゃ気持ち悪いのだ、乙環さんなんかとんでもないことになっているに違いない。


 その証拠に相当我慢している様子だった。

 眉がピクピクしている。

 

 うーん、ここまで注目されているということは、ネットに上がっているのは間違いないな。

 乙環さんクラスの美少女なんてそうそういないからありえる話。

 完璧にそこまで考えつかなかった俺の計算ミス……。

 

 ただ協力してくれるのなら多少の歪んだ応援も目をつぶるが、迷惑行為を理論武装して正当化するこいつらは悪質過ぎて邪魔なだけだ。

 

 ちょっと俺もそっちに詳しい専門家に頼るか……。

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