42「キス二十六回目、海の家期間限定版『腐ったリンゴ亭』へようこそ!」その四
明日よりNTR生徒会長は投稿を一日一回12:10だけに縮めます
どうぞよろしくお願いします
——深夜二時
俺は夜の浜辺を歩く。
砂浜はサンダルだと直に砂が入るからあまり好きじゃない。
それでなくても照明少なく月の光だよりなので何処か危ういのだ。
日中の興奮冷めないとはいえ、散策に来たところが場違い過きかもしれん。
よく目を凝らすとあっちこっちにカップル達がイチャイチャしていたからだ。
こんなロマンチックな夜を独りでうろつく俺は変態か出歯亀かワニだな……。
『ふぁああ、ねむ。雪之丞、どうよ。うまく行っている?』
「なんとか一日目は終わった。お竜だったら泣いていたかもな」
だからお竜からかかってきた電話は、こんなところをうろつくには絶好の話し相手だった。
ラブラブムードの砂地を散策するカモフラージュとしておあつらえ向き。
わざわざ眠いのに心配して連絡くれるとは俺の幼馴染みマジ天使。
『なにおー! このうるは様を見くびるなよん』
「それより今日、長野がきて驚いたぜ。いくら会長が誘ったからと言って来るとは思わなかった」
『あーごめん。たぶん私のせいかも……』
「うん? 要領を得ない」
「鹿伏兎生徒会長と長野っちの仲を進展させたくて、雪之丞と共に働いてることもゲロったかも……」
「おりゅーう」
『すんまそん! てへぺろ』
「……まあ、いいよ。俺のこと学園でいい噂聞かないから、長野にも色眼鏡で見てほしくはないけど、あいつの俺の評価ってどうなんだ?」
『いい評価はしてないかなぁ。私にも幼馴染みやめたらって迫ってくるし。内心ムカついたけど、長野っちはカリスマだから色々と役に立つんだよね』
「それでいい。なんなら俺と縁を切ってもいいぞ。ひとりぼっちは慣れているからな」
『いくら雪之丞でも怒るからね』
「ごめん」
『分かればいい』
「そうか……でも理解した」
乙環さんが誘ったからと言って、兄弟みたいな仲だろ?
だったら何かなければこんな田舎くんだりまで足を運ばない。
お竜のリークが結果として功を奏したというわけだ。
そうか、長野は俺と乙環さんが共に働いていること知っていたんだな。
なのにあの態度、まったく何を考えているのかよくわからない。
『——じゃあ雪之丞、またね』
「ちゃんと寝ろよ」
お竜と他愛もない話をしたあと、そのまま恋人達の聖地と呼ばれている観光組合が売り出している肝いりの場所へ。
どうでもいいが、恋人達の聖地は全国にある。
しかし元々の観光名所にこじつけて無理矢理設置してあるから全然興味を示さないバカップルばかりでウンザリしていた。
それでも女の子と遊べずお経あげている流星への嫌がらせになるから写真くらいは撮りたい。
しかし、海水浴場のハズレにある岩場まで足を運ぶと、「嫌だ! やめろ! 助けてカナちゃん!」女の拒絶する声がこだまする。
「誰かいるのか?」
暗くて確認できないがそこに数人誰かいた。
「お、昨日のビジンさんじゃん。独り?」「ねえねえ僕達といいことやろうよ。というかこの場で剥いじゃうか?」「ばか、合意にしないと後々面倒だろ? 酒飲ませろ」
どうやら誰か襲われているみたいだ。
はあ……本当に俺はトラブルに愛されているな。
「お願い助けてください!」
「お兄さん達、面白いことやっているね? それ犯罪だよ」
女の子は野郎に腕を掴まれ身動きが取れない。
「俺はこの子に一目惚れなんだわ」「これから飯でもくいにいかね。バンで来ているから広いよ」「怒った顔もチャーミングだね」「昨日に続きまた邪魔かよ。いいこと起きねえな」
どうやら今回は円満解決は無理そうだな。
正直暴力沙汰は苦手なんだよ。
人相が悪いからどんなことあっても俺が主犯扱いになってしまう。
かといってこのまま見過ごすのは硬派としてはありえねえ。
「離せ!」
「よー、相手嫌がってるべ。こんなことして男として恥ずかしくはないのかよ?」
男たちは御託を並べて殴りかかってきた。
はい、正当防衛成立完了。
さてととっとと海岸の粗大ゴミお掃除しますかね。
数十分後——覚えていろよと馬鹿野郎共は軽くのして蹴散らした。
「助けて頂いてありがとうございます」
「怪我はありませんでしたか——ってか乙環さんじゃん」
月明かりに照らされたイケメン系美少女が俺に抱きついていた。
岩場だから足場が不安定とはいえどうしていいのか分からず、取り敢えず手の置きどころに困る。
「神無月……そうか、また君が助けてくれたんだな」
「俺は何もやってねえよ。というか離れてくれないか?」
「無理だ。僕のシャツが破かれた」
「なら俺のシャツ着ろよ。女の感触がまじエグい」
俺はあいつらへの怒りを抑えながら乙環さんに着させる。
「ありがとう——背中、酷い傷だな。大丈夫か⁉」
「いや、これは古傷だ。問題ない」
こいつは乱闘でいつの間にか付いたものじゃない。
昔、大怪我した時の傷跡だ。
「でも何処かで見たことがあるような……だめだ、思い出せない」
「どうした」
「いや、何でもない」
「とにかくここを離れないか? 今お巡りさんに職質されたら間違えなく俺は逮捕される自信がある」
でも、その反応が、ああと心あらずだ。
乙環さんの様子がどこかおかしい。
こうして、俺達の長い一日は終わりを告げる。
どうか神様、明日も無事に終わりますようにと、恋人達の聖地たるハート型に見える岩へ願いを込めた。
追伸、暫くの間、乙環さんが俺の古傷を優しく撫で回すのでくすぐったかった。




