40「キス二十六回目、海の家期間限定版『腐ったリンゴ亭』へようこそ!」そのニ
明日よりNTR生徒会長は投稿を一日一回12:10だけに縮めます
どうぞよろしくお願いします
「いらっしゃいませ! 店内でお過ごしですか? 持ち帰りですか? 神無月! 至急三番卓片付けてくれ!」
「ご注文承りました。マスター! リンゴのタルト二個、りんごブレンド、水出しコーヒー一つずつ! 乙環さん了解!」
俺が動くと同時に寡黙のマスターは返事の代わりに頷く。
仕事が追いつかないのを見越して、いつものメニューから厳選して数種類に絞っているが、カウンター一人だとかなり大変な作業だ。
しかし、米国軍人ばりにビルドアップしているマスター一人で中がきつきつなので、罪悪感があるが頑張ってもらっている。
「お客様、誠に申し訳ありません。本日は現金のみのお支払いになっております」
「席はこちらになります。お荷物はこのカゴを利用してください。乙環さん! アイスが切れた。一旦離れるから頼む!」
「応!」
「お客様、今、順番にお作りしております。暑いので日陰のそちら側に並んでお待ちください」
店はご覧の通り大盛況だ。
腐ったリンゴ亭マニアが珈琲と限定スイーツを求めて、何処から噂を聞いたか分からないが長蛇の列になっている。
まいった、もう一人ぐらい人員いないと厳しいぜ。
開始からまだそんなに経っていないのに、俺はもう大汗を掻いていた。
今日は中々の猛暑。
当たり前だが、アイスコーヒーとかアイスクリーム系がよく売れる。
もちろん名物リンゴのタルトはメインでバカ売れ。
冷やしてあるので好評だ。
「神無月、大丈夫か?」
「なんとかまだ行ける。乙環さんは?」
「まだまだ余裕だ」
「それは頼もしい」
実際はかなりきついと思うが、乙環さんは顔に出さない。
頭にはサンバイザーを装備、水着と下半身にはパレオを巻き暑さ対策も万全だ。
ただ、どんな水着を着ているか、腐ったリンゴ亭のロゴが入ったTシャツを着ているので全容は分からない。
まあ、シャツを胸近くまで捲し上げ縛っているので、中々の仕上がりなお腹に腹筋ソムリエの俺は大満足である。
ちなみに、俺もマスターもロゴTシャツを着ているがピチピチで筋肉がバッチリ浮き出ていた。
——午後の十四時。
「…………神無月………生きているか?………」
「………なんとか…………………」
誰もいなくなった客席でぐったりしている俺と乙環さん。
マスターから差し入れされた水出しコーヒーの氷がカランと音を立てた。
「伊豆半島では名前を聞かない海水浴場なのに観光客が溢れていたな……」
「この祭りを舐めていたかも。まさか忙しさで頭がフリーズするとは思わなかった」
「僕も覚悟はしていたがこれ程とは……」
「マスターに追加料金要求してもバチが当たらないな」
「体力使い切ったから、お陰様で今日はよく眠れそうだぞ」
「ああ、マスターみたいな体力、俺も欲しいな」
大盛況のうちに正午が過ぎキリのいいところで休憩時間に入る。
スタッフが三人だけなので、店は一旦休憩中の札を出していた。
俺達はこの通りグロッキーなんだが、マスターは日課の鍛錬でスクワットやっている。
やはり筋肉がすべてを解決するのか?
「それにしても折角水着買っても披露したい相手がいないんじゃ、イマイチ張り合いないな」
「すまん、お竜がいい加減なこと言って煽ってさ」
「いや……実はな、あのあと彼方を誘ったんだ。僕の晴れ姿を披露するから来てくれって」
「おお、とうとう仕掛けましたな。それであいつは?」
乙環さんの話に興味が出てきたので、テーブルに突っ伏して動けなかったがなんとか上半身を立て直す。
「気が向いたら行くって」
「もろ社交辞令だな。でも乙環さんにしては大した進歩だ」
「ああ、竜石堂に発破をかけられてな。長野っちはモテ男だから、夏の女子は好きな男のためならどんな陰湿で狡猾な罠を仕掛けてくるか分かってない。今、行動起こさないと気づいたころには手遅れになるよとな」
「でも来ないのなら結局意味がないな」
「そうだ、なら……神無月は僕の水着見るか?」
「一昨日見たから遠慮しておく」
「あれとは別の水着でも?」
「無論男として興味あるが、そういうのは好きな相手に言ってやれ」
「……………………」
「どうした?」
「いや、神無月はなんで見た目はこんな危険なオーラを放っているのに、中身はとても紳士なのかなと」
「うるせー。この髪や肌の色もイヤリングも民族的な誇りだから、チーマーみたいなあんな悪ぶっているハンパもん連中と一緒くたにしないでくれ」
少しは元気が出てきたのか、途端に何か食べたくなってきた。
乙環さんにも聞いて近くのライバル店でアイスとクレープを買ってくることにする。
これがご近所付き合いを円滑にするコツ。
——買い物を済ませて戻ってくると誰かいる。
誰か乙環さんと親しく話していた。
ナンパか?
いや、あれは……。
『乙環姉さん?』
『彼方、来てくれたのか』
『うん。まー一人じゃ浮くから友達誘ったけどね』
『みなさん、彼方がお世話になってます』
『姉さんやめてよ、恥ずかしい!』
『何をいっているんだ。こういうのは大事なことだぞ』
長野だ。
どうやら来てくれたようだ。
でも一人じゃなくて男女のグループ。
口々に生徒会長綺麗だとか格好いいと囁かれてる。
長野と共にいるのは、有名な美男美女の陽キャラ集団。
白川桜華学園の学年スクールカーストトップテンに入るアイドル化している奴等だ。
困ったな。
流石に俺がいま戻ると色々と話がややこしくなるのて、バレないように距離をとる。
乙環さんは俺と一緒の職場だとは長野に告げてないからやむを得ない。
『姉さん何か食べたい』
『すまないな、今休憩なんでなんのもてなしもできないんだ』
「……いいよ。遊ぶついでに寄っただけだからさ」
『そうか』
こいつ姉さんが心配だとうるさかったですと、仲間達が裏情報を暴露。
長野は慌ててやめろーとヘッドロックをかける。
こうしてみると、長野も普通の高校男子なんだよな。
でも、暫く話していたが、結局乙環さんが長野に水着を披露することはなかった。




