表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺をNTR系チャラ男と勘違いして上官口調の僕っ子生徒会長があからさまに口止め料のキスを毎日してきて困る。しかも月日と共に愛が重い通い妻化してメチャ可愛い  作者: 神達 万丞
第二話『分からなくなってきた、君は何でそんなに優しくするの?』警戒対象→とても不器用ないいやつ
31/62

彼方サイド5「もう引き返せない道」

七月二十八日


「はぁ……お前、あんまり肉屋のおばさんに迷惑かけるなよ。僕がここに来にくくなるだろ?」

「えーただ、褒めただけだろ? コロッケこんなにオマケしてくれるとは思わなかったけど……」

「ホメ過ぎだ。なんでこんなに口達者になったのやら……」

「うーん、毎日SNSで揉まれているからかな。あそこはナメられたらおしまいだからね。いかに己の弱みを出さないで相手を正論でフルボッコするかだから」

 

 夜、久々に乙環姉さんと駅前の商店街へ買い物に来る。

 ようやく姉さんのお怒りが完全に収まったので俺は内心胸をなでおろす。


 本当は街中を二人で出歩きたくはないが、外は暗いし学園生達には気づかれないだろう。

 だがしかし、なんだろうか、この心がざわざわする感じは?

 乙環姉さんがやけにご機嫌なんだ。 

 バイトとかで何かいいことでもあったのだろうか?

 やたら思い出し笑いを繰り返している。

 

「なあ彼方、男は毎日不自然に顔を出してる女ってどう思う?」

「なにそれ?」

「いや、他意はない。例えばだ」

「よっぽどの鈍感野郎でない限り、好意があるのではと勘繰るよね」

「そうか……」

「?」


 まさか……男?

 いやいや、ないない。

 姉さんに限ってそれはありえない。

 この人を惚れさせるのはあまりにも難易度が高すぎる。

 俺だって長年かけて漸くここまでのポジションに収まったんだ。

 ぽっとでの野郎を好きになるもんかよ。


七月二十九日


 今日は仲のいいゲーム仲間達とオンライン対戦シューティングに興じていた。

 姉さんはまた外で勉強とバイト。

 迷惑掛けているのはわかっているが、俺は夢を優先させる。

 なんせ、最近数人のプロゲーマーに注目してもらい対戦をしていたからだ。

 ソロでやるレトロゲームも好きだが、こういうオンライン対戦でしか味わえないスリルも捨てがたい。

 あがり症のせいで大会には大した成果を残せられないが、ランカー相手に勝利を重ねればプロゲーマーの道も見えてくるはずだ。


『いやー、すごいでござるなー。拙者なんて瞬殺でござるよ』

『いやいや、ニッシーさんが囮になってくれたからなんとか戦えたんですよ』

『それより例の件考えたでござるか?』

『ありがたいお誘いですけど、お金ないから今回は見送りですね』


 実はニッシーさん経由でプロゲーマーのチームへ入れるチャンスが来たのだ。

 でも、それにはかなりキツイ条件がある。


『え? え? ここまできてチャンスを不意にするんでござるか?』

『仕方ないですよ。ないものはない』

『家族から借りればいいじゃないですか?』

『無理です。それにあれだけ姉さん怒らせたんですよ。どの面下げてお願いすればいいんですか?』

『気持ちはわかるでござるが、拙者もここまでお膳立てするのに相当苦労したんでござるぞ。それをキャンセルとはいかに』

『お気持ちは嬉しいですが、ズルしてプロゲーマーになっても俺は嬉しくないですよ』


 これが俺の本当の気持ち。

 勝負の世界だからこそフェアに登っていきたい。


『そうでござるか……。なら仕方ないですね』

『ごめんなさい』

『あああ、折角、そこに所属できれば、ぐらすらんど氏が尊敬しているアメリカのナンバーワンプロゲーマーとセッションできる機会があるのに……。教えを乞うことだって可能でござるぞ』

『冗談でしょう?』

『大マジでござる』

『いくら必要なんですか?』

『少なく見積もっても七桁は必要でござる』


 あの人に師事できれば俺はもっと腕前をアップできる。

 俺は乙環姉さんにメールで相談した。

 一時間後、『分かった』と短文が送信してくる。

 

 だが、実はもう一つ条件があった。

 プロチーム所属の為に骨を折ってくれたマネージャーが乙環姉さんとサシで食事へ招待したいとのこと。

 俺が未成年だから家族面接も兼ねているらしい。

 

 七月一六日、俺がゲーム大会に参加していたとき、接触してきた人物がそのマネージャー。

 俺の腕前と情熱に心打たれたと、やたら自分の武勇伝を語ってうざかったのを覚えてる。

 あのときたまたま乙環姉さんも観戦に来ていて、そのマネージャーの奢りでレストランで食事した。

  

 是非とも家族視点から俺のことを聞きたいらしい。

 だからといって夜にたった一人で危なくないか?

 向こうも知名度があるから下手なことはしないだろうけど。


 ここまで話が進行していると俺はもう断ることは難しいので、帰宅した姉さんに話す。


 絶対に断ってくれると期待していたが、僕が彼方の姉として役に立つのであればと笑顔で了承してくれた……。


七月三十日


「ああん! ぐらすらんど君! これとってよ! 私にはむりじゃん!」

「パーカーちゃん、諦めるの早すぎるよ……」


 今日は竜石堂さんに誘われてゲーセンに来ていた。

 なのでキャッチャー系の動画配信のために出演を依頼する。


 彼女は体育会系動画配信者で、ハンドルネーム『パーカー』といて活動していた。

 今回もトレードマークのパーカーを着てマスク装備。

 なんでパーカーというのかと聞くと、昔好きな人がつけたニックネームだそうな。

 ごちそうさま。


「何回チャレンジしてもヌイが行ったり来たりを繰り返すんだけど?」

「まあ、コツがあるからね。ずっとやっていればいずれは取れるけど一万はあっという間だね」


 実は竜石堂さんに前々からバイト代出して配信を手伝ってもらってた。


 そう、彼女は俺が、『ぐらすらんど』として活動していることを知る数少ないネット仲間の一人。

 たまに、オンラインゲームで頭数合わせで参加することもある。

 あのニッシーさんのことも知ってるが、クセが強すぎてもろ糞毛嫌いしていた。


「ああああああ! アームのばかー!」

「五千円飛んだね……」

「ぐらすらんど君、はい出番!」

「はいはい」


 どうしてもほしいぬいぐるみがほしいそうなので、今回の動画配信のターゲットと設定する。


 色々と視聴者が俺達の関係を聞いてくるが、普通に知り合いと答えていた。

 それはいいが、ぬいぐるみ一発で引き上げたとはいえ、大きな胸を押し当ててくるのはサービス過剰だと思う。

 またユーザー達に何を言われるかわからん。


 ゲーセンでぬいぐるみを取りまくったあと、竜石堂さんを駅まで送る。

 今日は動画配信だからできるだけ遠くの街にまで遠征した。

 ここなら流石に知り合いに遭遇はしないはず。


「いやー、知り合いに出会わないかハラハラしているよん」

「竜石堂さん可愛いから知り合いならすぐに分かってしまうもんね」

「いやー! 美少女ですんまそん!」 

「あはは! それより今日は動画撮影ありがとうね。キャッチャーは動画初めてだったから緊張したよ」

「へぇ、長野っちはUFOキャッチャーもいけるんだね。ありがとう、こんなに一杯取ってもらってさ」

「いいって。上手くなるまで毎日それなりのお金注ぎ込んだからプロには遠く及ばないけど結果を出せる。こんな俺が役に立つのなら今度また取ってあげるよ」

「マジで? わぁ凄く嬉しいなー」

「このぐらいお安いもんだよ」


 だから嬉しいのはいいのだけど、この大きなおっぱいを押し付けないでくれ。

 ここが遠い街だったのが幸いだよ。

 こんなところ乙環姉さんに目撃されたらGでも見る目で俺を見下ろすだろう。


七月三十一日


 今日はゲーム生配信の日だがとても集中できなかった。

 理由はもちろん乙環姉さんと知らないやつがデートするから。

 

 配信者やプロゲーマーはボイスとビジュアルがいいほうがいい。

 当然だが、これも客商売だ。

 テレビや飲食業、会社の受け付け同様、顔がいいほうが重宝される世界。

 世間は平等を訴えながら顔面格差社会を推進している実に世の中はクソゲー。

 

 だから俺は持って生まれたこの適正を活かせる配信に全てを注いでいる。


 しかし、俺は初めてこのままでいいのか、自問自答していた。

 理由はもちろん乙環姉さんに他ならない。


「ただいま彼方」

「おかえり乙環姉さん」


 夜、帰宅してきた姉を優しく出迎える。

 コーディネートをバッチリ決めていたからとても綺麗だった。


「先方からメールが来て満足していたよ」

「そうか」

「ありがとう乙環姉さん。こんな馬鹿な弟の夢に巻き込んでしまって」

「いや、いいんだ。お前の夢を叶える為なら幾らでも力をかしてやる」


 プロチームへ所属のチャンスが巡ってきた。

 世界のプロゲーマーとのコネクションを持つという機会。

 でも、大好きな姉さんの表情を曇らせてまで叶えたい夢なのか?

 俺の夢はプロゲーマーになって姉さんを笑顔にさせることなんだぞ?

 これじゃあ、本末転倒じゃないか?


「今日は俺が晩御飯作ったから食べてよ」

「ええ? それは食べれるのか?」

「ひどいな。生焼けだけどなんとかいけるよ」

「分かった、いただこう」


 俺は初めて炊いたベチャベチャのご飯とぐちゃぐちゃの豆腐の味噌汁を置き、乙環姉さんに思いっきり笑われた。

 

 俺はネットは信用できないと思っている。

 普通にいい人たちもいるが、クズも多い。

 だから今回のデートはとて胸糞悪かった。


 ニッシーさんの仲介じゃなければ、絶対に受けるものか。

 俺をここまでお仕上げてくれたのは間違えなくあの人だ。

 ニッシーさんについていけば、必ず一流のプロゲーマーになれるはずだ。

 だから耐えることができる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ