表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺をNTR系チャラ男と勘違いして上官口調の僕っ子生徒会長があからさまに口止め料のキスを毎日してきて困る。しかも月日と共に愛が重い通い妻化してメチャ可愛い  作者: 神達 万丞
第二話『分からなくなってきた、君は何でそんなに優しくするの?』警戒対象→とても不器用ないいやつ
30/59

彼方サイド4「ゲームと乙環姉さんを天秤にかける」

七月二十四日


『ぐらすらんど氏が羨ましいですぞ!』

『ただ姉と遊びに行くだけですよニッシーさん』

『それなら拙者に代わってくだされ!』 

『お断りします』


 今日はかねてより姉さんが行きたがっていた動物園へ行く。

 久しぶりのデートなんだが、昨日、帰宅するなり突如予定を強制的に決められたのでのんびり屋の俺でも驚いた。

 とてもニコニコの笑顔だったが、目が笑ってなかったので辞退したら殺されると悟る。

 だから二つ返事で了承。

 いい弟分を演じるのも難儀なもんだ。


 先に家を出た俺はファーストフードでブログ更新しながら適当に時間を潰す。

 一緒に出かけたら乙環姉さんとデートを見かけた学園生達に疑われるからだ。

 それでなくても俺には彼女がいると噂されている。

 もしその噂の正体が、同居している姉代わりの生徒会長だとバレるとスキャンダルに発展するだろう。

 だから学園では姉さんとの関係を隠してた。


『動物園でデート。あああああ! くやしー! 拙者もイケメンに生まれたかった!』

『よだれよだれ』

『涙でござるるるる!』

『どうどう』


 このようにラインでニッシーさんが馬鹿話に付き合ってくれたから、時間にルーズのこの俺でもほんと助かる。

 ただ興奮するとうざ絡みするのは勘弁してほしいけどね。


『いいなーお弁当! 拙者も膝枕させながらあーされたいですぞ!』

『しないしない』

『でもそうなると、ちょっと困りましたぞ……』

『ニッシーさん、どうしたんです?』

『非常に言い辛いでござるが、ぐらすらんど氏、実はついにあの幻のゲームの目撃情報を入手しましたぞ』

『マジっすか?』


 俺は前々からニッシーさんに激レアゲームの捜索を依頼していた。

 何故ならアクセス数が爆上がりする可能性があるから。

 当たり外れのリスクがあるから絶対ではない。

 しかしそのガチャにチャレンジできるのは大きいこと。


『はい、大マジでござる。伝説の理不尽クソゲー『君と恋したい』。ギャルゲーに擬態した超ムズアクションゲームが大阪で販売していたでござる』

『大阪か』


 激推し特集を組んだゲーム雑誌と実際プレイしたギャップが違いすぎて、廃刊に追い込まれたほど酷い。


 あまり売れなかったせいで現在凄まじく入手困難、しかもそこは今時昔気質で通販をやってない。

 今から新幹線に乗って関西か……。

 帰ってくるのは間違えなく深夜か明日の朝だ。


 しかし、折角の姉さんとのデートなんだぞ。

 普段は断られるのが怖くて躊躇ってしまう。

 だからなんぴとたりとも邪魔はされたくないのが本音。


 なのにこの裏の顔を知っているのは僅か数人だけだから、代わりを立てるのも困難の状況。

 ニッシーさんも無理。


『もし、それをゲーム配信できればぐらすらんど氏が初めての快挙となりまするぞ』

『俺が初めての配信者として注目を浴びる……』

『はい。上手くプレイしてぐらすらんど氏の腕前がもっと世間に知られます。されど、大切な姉上とのデートがあるのならここは断念して方針転換するしかないですな』

『あああああああ! そうだった……』


 とてと楽しみにしていた姉さんはもう出ている。

 しかもこういうときに限ってチキンハートの俺は、どんな言い訳しても怒られる未来しか浮かばない現状に連絡を取ることができなかった……。


 究極の選択。

 俺はどっちを選べばいいんだ?


・姉さんと動物園へいく。

 

 メリット


 乙環姉さんとデート。

 気合い入れて作ったお弁当食べてご機嫌の笑顔を拝める。

 

 デメリット


 ニッシーさんが言うようにもうお目にかかるか分からない一品。

 これを他の同業者へプレイ動画にアップされたら一気に夢から遠ざかる。


・約束を無視して関西へ買いにいく。


 メリット


 これをプレイ動画にアップできればプロゲーマーへの道が一気に近くなる。


 結果、プロゲーマーになり乙環姉さんへ告白して幸せになる近道。


 デメリット


 あとで思いっきり怒られる。

 当分の間、不機嫌は回避できない。


『兄弟間のことだからアドバイスできないでござるが、ここで一山当てて一流ゲーム配信者の仲間入りすれば結果オーライでござるよ』

『……………………』

『もちろん、姉上が大事なのは十分承知でござるが、将来と家族、天秤にかけるのならどちらが重要なのか? ぐらすらんど氏なら理解できるはず』

『ありがとうニッシーさん』


 なら選択肢は一つしかないじゃないか。

 俺はダイニングテーブルへすっぽかした理由を書き、急遽大阪へ飛ぶ。

 

 朝帰りした俺に、『…………………………』乙環姉さんは無表情で弁当箱を思いっきり俺に投げつけられた。


 目が充血している姉さん。

 寝ないで待っていてくれたんだ……。


 床に中身が散乱している。

 俺はタコさんウインナーを拾い食べた。

 しょっぺーよ。

 ニッシーさん、この選択肢で本当に合っているんだよな?

 

七月二十五日


 姉さんと喧嘩中。

 一切無視。

 俺の掃除も洗濯もしてくれない。

 それでもご飯だけは作ってくれる。

 ありがたいがとても居心地が悪い。

 行き先も告げず夜には帰ってきた。


七月二十六日

 

 今日も無視された。 

 それにとうとう我慢できず俺は土下座。


「もうしません! 姉さん許してください!」

「あたりまえだ。次はないからな」


 一杯頭をこすり付けて、深夜ようやく許される。

 乙環姉さんから仏頂面で渡された夜食のおにぎりが、ただの塩握りだったが無性に美味かった。


七月二十七日


 俺は約束を破ったお詫びに乙環姉さんと海の公園まで遠出する。

 ——と格好つけてもゲームショーが本命だ。


 そう、この近くにはゲーム会場にもなる全国でも有名なイベント会場が君臨している。

 配布物とかプロゲーマー達のエキシビションなど、存分に堪能。

 

「やはり会場より自然の景色の方がいいな」

「演出が凝りすぎてかなりチカチカしてたもんね」


 そして今は、海が一望出来るベンチで一休みしていた。

 イベントで得た戦利品を確認しながら姉さんと語らう。


 通りがかったキッチンカーで乙環姉さんが欲しそうな顔をしていたから、ソフトクリームとクレープを買う。

 もちろん俺の奢りだ。

 もう、この姉を怒らせることは二度とすまいと心に誓う。

 

「彼方、帰りスーパーに付き合え」

「了解」

「今日は牛肉が特売だからすき焼きにしてやる」

「おお! ありがとう姉さん」


 しかし、そんな幸せな時間も長く続かない。


『ぐらすらんど氏、アキバでジーザス限定版が出品されていましたぞ』


 ニッシーさん?

 ラインからの通知には俺と乙環姉さんを引き裂く悪魔の言葉が踊っていた。

 それがゲーマーの宿命とはいえ残酷だ。

 でも、ジーザス限定版はファンクラブ用に制作された激ムズ仕様。

 欲しい。


「どうした?」

「…………なんでもない」

「またか……」

「ごめん、ゲーム配信するネタが尽きちゃって探していたんだ」


 結局、わざわざ大阪まで足を運んだゲームの生配信はアクセス数が伸びず不発に終わる。

 敗因はあまりにもマニアックすぎて誰も興味を持たなかったからだ。

 ギャンブルに失敗したこの虚無感は相変わらず嫌いだ。


「彼方、僕とゲームどちらがだいじなんだ?」

「それはもちろん姉さんだよ」  

「嘘だな。大体プロゲーマーになる理由が全ては僕の為にやっているだなんて、遊びの延長を正当化するための免罪符でしかない。……でもいいさ、行ってこい」

「乙環姉さん」

「ゲーム配信に必要なんだろ?」

「……うん」

「僕のことは気にするな。今日は楽しかったぞ」

「いや、でも持ち合わせがないからいいよ」

「ほら、これで足りるか」 


 乙環姉さんは財布ごと俺に渡す。

 

「こんなにいらないよ!」

「たとえプロゲーマーへ向かう航路に彼方が泥舟で漕いも僕は応援すると決めたんだ」


 でも、気前よくくれたはいいけど、乙環姉さん帰りどうするんだ?


 まーあの姉のことだ。

 電車賃ぐらいはもっているだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ