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俺をNTR系チャラ男と勘違いして上官口調の僕っ子生徒会長があからさまに口止め料のキスを毎日してきて困る。しかも月日と共に愛が重い通い妻化してメチャ可愛い  作者: 神達 万丞
第二話『分からなくなってきた、君は何でそんなに優しくするの?』警戒対象→とても不器用ないいやつ
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25「キス十六回目、新たなキスの契約そのニ」

☆★


 同日の夜。夕方というには日が暮れて、深夜というにはネオンがきらびやかな時間帯。


「あーん、もふもふのBIGクマさんほしかったなぁ!」

「あのな……そのクソくだらねぇ欲求のせいでマイ財布がだいぶ軽くなったんだが⁉」

「うざ! キャッチャー系超ヘタクソな雪之丞が悪い。もう罪。もっと腕磨いて可愛い女の子に貢献しろ」

「誰が可愛い女だよ? 白川桜華学園のイケメン王子様」 

「ああ! 問題発言ですぞ! 年頃のレディになんて酷い言い草。罰として雪之丞の手料理を要求するなり!」


 ショッピングモール内にあるアミューズメント施設からの帰り道。お竜と遊びに行ったら、狙ったぬいぐるみ取れなくてこの通り機嫌が悪い。

 慣れ親しんだ口論の掛け合いでじゃじゃ馬とかヤリチン野郎とか罵倒し合う。

 しかし俺達は高身長同士なので何かと目立つから、ここでは火力控えめに抑えていた。


「長野っちなら必ず取ってくれるのになぁ。貯金おろすとかしない雪之丞は誠意が足りない。これじゃ未来永劫彼女とデートできないあるね。ふふん」

「なら俺と来る必要なかったろ? 仲良しの長野でも誘えばいい」


 ちょいと突き放した言い方をする。売り言葉に買い言葉だが大人気なかったようだ。

 お竜はふくれっ面。


 少年のようなショートヘア、意思が強そうな瞳、乙女を惑わす健康的美貌。

 王子様と呼ばれているだけはある。

 大きめサイズ純白シャツにデニムの短パン。タッパがあるので相変わらず似合っている。元女バスでエースを張っていたのは伊達じゃない。

 更にルックスがいいので女子にモテモテだし、カースト上位なので陽キャラ男子達ともマブダチ感覚で交友関係がある。俺とは真逆なイケイケ青春ガールだ。


 なので元来の人懐っこさに夏休みだからと開放的になりすぎて、どこぞの勘違い野郎に襲われないか兄貴分としてはとても心配だったりする。


「うるさいうるさい。それはまた違う。雪之丞は全然乙女心を理解してない」

「分からねぇよ。大体、長野好きになったのなら相談して欲しかったぞ。お前の為なら幾らでも力になったのにさ」

「なんのこと?」

「この間、長野と腕を組んで歩っていたろ? たまたま仲良くデートしていた現場を目撃したんだよ」

「そっか……。でも恋愛の好きとは違うよ。あくまでも友達。長野っちは景品取るの上手いからお願いしているだけ。変な誤解しないでよね。取ってもらうときはいつも私の自腹だし、一杯お金を貢がせるのは雪之丞にしかしないよ。喜べ陰キャラ」

「そんなん全然嬉しくないわ!」

 

 いつも? そんなに長野と共にいるのか? 陽キャラ友達だからか? まだ何か隠しごとしている。そんな胸騒ぎがした。

 

「もっと女の子の思考を勉強しろ! 恋愛劣等生、青春負け組」

「ぐはっ! や、やめてくれ、その言葉はボディーブローに匹敵する……」


 お竜はバーカとベロを出す——そんな時だ、街で有名な高級レストランから出てきたカップルとすれ違う。

 デートだろうか、ただなんとなくだが違和感があった。サラリーマン風の中年男にドレスを纏った十代ぐらいの若い女。レストランで食事するには不釣り合いな組み合わせ。

 しかもあの背筋が真っ直ぐな姿勢の良さ、何処かで会った覚えが……。


「ねえねえ雪之丞、今のって鹿伏兎生徒会長じゃない? でも髪色が違うかな?」

「……………………いや、会長だ……。それにしても高級レストランか。この前といい、また珍しいところで会うものだな」


 お竜の一言でボヤケていた周波数が合った。 

 気合い入ったおめかしに気付きにくかったが、近距離で漂ってきた会長愛用の香水から確証を得る。

 隣の相手は面識のないおっさん。今回で二回目の邂逅。


「やけに淡白だね。同じ生徒会役員でしょ。毎日一緒にいるんだから少しは情が湧くんじゃないの?」

「バカッタレ。そこまで親しくはないぞ。俺と会長は生徒会で繋がっているだけだ。それ以上はない」

「ふーん、まあどうでもいいけど。お節介焼きの雪之丞のことだからてっきり介入すると思ったから拍子抜けだね」

「気になるといったら気になるさ。こんな時間に何しているんだとかな」


 ——と常識ぶりながらもなんとなく尾行する暇人二人組。これはあくまでも知り合いの素行調査であって、興味本位で行っているわけではない。


「デートにしては歳が離れている。かと言って家族にしては違和感があるかなぁ」

「流石元スポーツマンだ、視力がいいな。俺はネオンがチカチカしてこの距離だとよくわからん」

「ホテル街に向かっているけど、あの真面目な会長に限ってそれはないよね?」

「さあな。あくまでも会長のプライベート。俺らには関係ねえことだからこうやって見守るだけだ」

「私も詮索するつもりはないけど、鹿伏兎生徒会長あまり楽しそうじゃないね」 

「まだ会長の知らない一面あるんだな。たったの半月共に過ごしたぐらいで自惚れていたようだ」


 声を掛けるべきか? いや、それは無粋だ。プライベートに首を突っ込むものじゃない。取り敢えずは何かあったときの用心に、いつでも飛び出せる準備をしておく。


「女は魔物なんだよ。私もまだ全然雪之丞に全てをさらけ出してないからね」

「こえーこえー」


 ふふんと澄まし顔のお竜。女はげに恐ろしいものだ。


「それで、いつまでストーキングしているわけ? お巡りさんに声かけられたら速攻で逃げるからね。週刊誌にネタにされかねない」

「無事が確認させるまでだ。もしかしたら双子の妹の線もあるからな」

「それはないよ」

「え?」

 

 お竜がLINE送ると前方を歩く女性が反応。即ち黒だ。というかいつの間に会長とメル友になったんだ?


「ほらね?」

「ということはあの栗色の髪はウイッグか。さっき別れたばかりなのに染めることは不可能だからな」


 結局この後、何事もなく駅前でタクシーを拾い会長は男と別れた。


「もしかして今流行りのレンタル彼女とかな」

「あり得る。金欲しさにやりかねない」

「長野っちのことで苦労しているみたいだもんね」

「ん? 何でお竜が知っているんだ?」


 だが、お竜は答えない。代わりに女は色々と秘密があるんだよと微笑んだ。





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