22「キス十五回目。生徒会完全無欠の女帝、抑えていた感情の決壊その一」
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七月三十日
取り引き十五回目。
「神無月、そっちにもゴミが落ちている」
「了解。それにしてもそこら辺に廃棄物捨てる奴の感性が理解できない。地球はゴミ箱と勘違いしてないか?」
「住民のモラルがないのは嘆かわしい。僕らの仕事が一向になくならない——神無月ペースが落ちている。時間まで終わらないぞ。君の根性はそんなものなのかい?」
「うっせー、前かがみ維持の状態は結構疲労が激しいんだ」
腰が痛いから見上げると夏の象徴たる大きな入道雲が、青い空に我が物顔で浮いていた。
トラブル続きで色々あり過ぎたが、七月もとうとう終盤にはいる。
夏休みもついに本番へ向けてクラッチングスタート準備。
耳を澄ませばオン・ユア・マークスと聞こえてきそうだ。
相変わらずぼっちはつらいよ。
ランニングしても一人、飯を食ってもシングル、花火大会行っても単独行動、話し相手はうちの飼い猫。
唯一の友人達も多忙みたいでLINEも既読がつくのみ。
寂しいもんだ。
さりとてまだ友達百人計画の野望を諦めたわけではない。
友達増えるかどうかは夏休みの行動次第だと偉い人も語っている。
様々な夏休みシチュエーションに参加して、十人いや二人はほしい今日この頃。
「今日も生徒会メンバーは誰も来ないか。神無月、済まない。また君に負担をかけてしまう」
「いいってことよ。憩いの場が綺麗になるのは俺的にも嬉しい。利用者多い運動公園だから、つまずいて子供やペットが怪我したら大変だからな」
「……いつも通りビジュアルと言動がバグっている現象は一向になれないな。本人は善意で語っているのに、そこはかとなく禍々しさが漂ってくる」
「俺は好きでやっているわけじゃないのだがな」
そんな俺達は他校合同ゴミ拾いのボランティアに参加していた。
何でも学園側が大々的にアピールしたいからだそうな。
新聞の記者が同伴していることに本気度が伺える。
しかし生徒会が先陣をきってやる必要もないけど、ボランティア部自体部員が少ないから、毎度学園の要請で参加している。
ようは誰でもいいということだ。
まあ地域の奉仕活動は人助けだからやぶさかではないが、大人達の汚い打算や思惑で利用されるのは好きじゃない。
それでも根気よく参加していれば、他のボランティア仲間といずれ仲良くなるチャンスも訪れる筈だから希望は持てる。
誤算は会長以外誰も俺の側へ寄ろうとしないことだ。
むしろ避けているのは痛い。
どういうことだ?
怖くないアピールとして、笑顔を絶やさないように心掛けているのだが……。
「君にクレームがきているぞ。終始ニヤニヤして貞操の危機を感じるそうだ。ずっと胸や尻ばかり観察されていたとか、手つきがあからさまにやらしかったとか、監禁されそうとか」
「何故そうなる……」
「ははは、神無月に悪気がないのは理解しているけど、初見だとここまで酷いのか」
「まだ優しい方だ。酷いときだと警察沙汰になることもある」
「りんご亭よりクレーム酷いな」
「あそこはマニュアル化しているからな。被害は最小限で済む。それと俺より人相の悪い雇い主がいるから相殺されるんだ」
会長は苦笑しながらも納得。
漢は顔じゃないを地でいくハードボイルドなマスターがいるから説明しやすい。
会長は八月から正式にりんご亭で働くことになった。
本来なら俺が先輩として立ち振る舞いの手本を示すべきなのだろうが、その前からご覧の有様で立つ瀬がない……。
『——へぇ、長野っちはUFOキャッチャーもいけるんだね。ありがとう、こんなに一杯取ってもらってさ』
『いいって。上手くなるまで毎日それなりのお金注ぎ込んだからプロには遠く及ばないけど結果を出せる。こんな俺が役に立つのなら今度また取ってあげるよ』
『マジで? わぁ凄く嬉しいなー』
『このぐらいお安いもんだよ』
ゴミ拾いも一段落つき、他校のクレームで表面には出さないが落ち込んでいると、イケメン陽キャラ長野がまた別の女子と歩っていた。
それも相手はよりによってお竜。
公園デートってやつだな。
腕を組んでいるのであのデカイ乳がもろ当たっている。
元女バス選手だけあってタッパがあるから下手したら顔が胸に埋まる勢いだ。
しかも長野は満更でもなさそう。
いつから長野とそういう関係になっていた?
兄貴分の俺に一言あってもいいんじゃないか。
幾らでも応援してやるのに水臭い。
でも恋愛は自由、お竜が失恋から立ち直って好きになったのなら、その恋路を邪魔する気はない。
でもよりによって長野か……流星、これは失恋して寝込むな。
やはり男は顔なのか?
陽キャラ爽やかイケメンしかモテないのか?
世の中は世知辛いな。
その様子を覗っていた会長が変だった。
「はぁ……」
「すまん、うちのお竜がちょっかいかけたようで。多分友達としてだから気にしなくていい」
「分かっているさ。あいつは八方美人だからね。くるもの拒まずなんだよ」
「羨ましいもとい妬ましい」
「どっちも意味同じだよ。僕も彼方にあそこまで好きを表現して甘えることができたなら、今の姉弟の関係を変えることできたのかな?」
「真面目な会長の性格だと難しそうだな。甘えるより甘やかせて——ーー⁉」
ツッコミ入れようとしたら、顔はスマイルだけど会長から涙が流れていた。
ただ事ではないのは鈍感な俺でも分かる。
「こんなこと君に告白するのは筋違いだけど、感情がもう上手くコントロール出来ない」
「話してみろ? 想いを言葉にして吐いてしまえば楽になるかもしれないぞ」
「最近おかしいんだよ」
「おかしいとは?」
「彼方が他の女子とデートしている姿を目撃するとモヤモヤしてくる。今まで意識して来なかったのに何故か今は心苦しい」
「それでモヤモヤか」
「もうそろそろ限界かもしれない。ううっ」
「……………………」
どうしていいのかわからず、「神無月?」混乱した俺は取り敢えずオデコにキスした。
「落ち着いたか、会長?」
何故したかは咄嗟で分からないけど、俺達の関係は全てキスに繋がっているからこれが妥当だと認識する。
驚きで会長の気持ちをリセットしていることに期待。




