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俺をNTR系チャラ男と勘違いして上官口調の僕っ子生徒会長があからさまに口止め料のキスを毎日してきて困る。しかも月日と共に愛が重い通い妻化してメチャ可愛い  作者: 神達 万丞
第二話『分からなくなってきた、君は何でそんなに優しくするの?』警戒対象→とても不器用ないいやつ
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19「キス十三回目、聡明な会長がいつまでも盛大な勘違いを気づかないとは思えない。そのニ」


☆★


 同日の夜。


 辛いミッションだった挨拶回りも無事終了。

 俺はりんご亭で珈琲を淹れながら至福を味わっていた。

 ドリップすると漂ってくる苦み走った芳醇な香り。

 マスターが長年試行錯誤して完成させた黄金比率のブレンドは俺を元気にしてくれる。


「変態雪之丞、なに珈琲で悦に浸っているのさ。キモいんですけど、その笑顔が不気味過ぎ」

「珈琲飲めないお子様にはわからん世界だ。お竜は大人しく俺が作ったいちごミルクでも飲んでろや」

「うっさい、言われなくても私はこのスムージーで十分だ。そんな苦い泥水飲めるかバーカ」

「このビターな匂いが最高なんだよ。どうして理解できない?」


 俺達は平常通り憎まれ口を叩き合う。

 幸い客がゼロなのでカウンターに腰掛けているお竜はおちょくってくるからウザい。


 夏休みに突入してまだ間もないが、お竜はバスケ引退後、こうして暇を持て余していた。

 それは当たり前、元々生粋のバスケ馬鹿。

 それ以外に趣味なんてあるわけがない。

 怪我のせいで長時間プレイできなくなりやむなく後進の指導に回る。

 幸運なことに1on1や3✕3ならまだプレーできるので絶望はしてないけどな。


 そんなお竜に珍事が起きる。

 演劇部に誘われてると。去年の文化祭で披露した演劇がすごかったそうな。

 演技の才能があるらしい。

 暇だったら入部してくれと部長が懇願。

 確かにお竜は何事も感情移入しやすいからな。

 意外と向いているかも。

 ただ暗記苦手だからお勧めはしない。


 でもバスケ部を過去のモノにする程薄情でもないし軽いものでもないし、そんな簡単に割り切れるもんでもない。

 なのでこの自称悩み多き乙女はここでくだを巻いていた。


「一応、女子のカテゴリーに入るお竜に質問があるのだが……」

「そうか、私に殺されたいんだね?」

「真面目な話。恋をしたら周りが見えなくなるもんなのか?」

「酷い恋だったからっておちょくってるでしょ?」

「違う。頼りにしているし信頼もしてる」


 お竜は気分が良くなったのか、仕方ないなぁ何でも聞いてよと胸を叩いた。

 我が幼馴染みながらチョロい。


「個人差はあるけど、恋愛をしたらその人のことしか眼中になくなるのは確かかな。もう四六時中恋人の事で頭一杯」

「頭脳明晰なやつでもか?」

「そうだね、成績が良かった先輩も恋人できた途端、おバカ丸出しでデレデレだったからね。でも誰のこと指しているのか分からないけど、他人の恋路に口出しちゃ駄目だよ」

「分かっている」


 性格に難がある男でもイケメンだったらイチコロか。

 本物の恋をしたことない俺には難解な問題だな。

 冷静沈着の会長でもそうなるんだろうか? 

 その限りではないと信じたかった。


 ——その後、疲労は残っているが何とか業務をこなしマスターに軽く挨拶済まして家路に着く。


 日は落ち夜、街頭に彩られた街中を歩っていると、生徒会長に商店街の一般道を挟んですれ違う。

 向こうは全く気づいてない様子。

 いつもと違いリア充みたくおめかしして、美人が段違いに上がっていた。

 何事かと興味を持った俺は暫し様子を伺うと、もう一人誰がいる。


 ……長野だ。

 相変わらず母性本能狂わす人懐っこいイケメン。

 おばちゃん口説いてコロッケ一杯貰っている。


 生徒会長と長野が仲良く買い物中。

 デートというより家族で買い物中と表した方がしっくりくる。


 しかしあんなに楽しそうな会長は初めてお目にかかる。

 あれが素の顔なんだな。

 恋する乙女か。

 本人は自覚してないが、あんな冷静沈着な会長が警戒してない無邪気な笑顔を向ける時点で恋以外の何者でもない。


 流星が指摘した通り、第三者の俺が男女間に入るのはお門違いなんだよな。

 会長達には会長達のことわりがある。

 一見酷そうに見えてもそれが正しいことだってある。


 俺は気になり会長達の後をつける。

 ただ、あの会長相手だから細心の注意が必要。


 それにしても日頃から長野は会長の扱いがよろしくないので、恋は盲目というが愛はここまで思考を鈍くしてしまうものなのか?

 それは会長しか答えを知らない。

 

「——それでストーカー雪之丞、いつまで続けているの?」 

「……⁉ お竜。なんでここにいる?」


 不意に後ろから声を掛けられて心臓が飛び出るかと思った。


「それは不審者が不審なことやっていたら警戒するっしょ」

「俺は不審者じゃねえ」

「電柱に隠れてこそこそしている時点で立派な不審者だよ」

「うっせー」


 お竜は覗くように俺の状態を鑑みる。

 

「雪之丞、会長と仲良くなったのはいいことだけど、覗き見は感心しないね」

「ただ、気になるんだよ」

「あ、動いた、雪之丞ほらチャッチャッといくよ。会長達見失う」

「あ、おい」

「私も気になるんだよ。会長の裏の顔」

「他人の恋路を邪魔するなって言ったのはお前だぞ」


 私は例外だよとベロを出す。

 暫し追い掛けるも会長達の行動に代わり映えしなかったから追跡を打ち切る。


 夜道は物騒なので、そのままお竜を家まで送り届けることにした。


 帰り道、俺は女心を知るため、お竜に長野と会長の関係性を打ち明ける。

 勿論バレるわけにはいかないので、俺の取り引きについては言葉を濁す。


「なるほどなるほどー。大切だけど恋人じゃない、友達だけどずっと大切なこの関係ねぇ、ならそれを言い表すのは友達以上恋人未満が相応しいのかな」

「それは考えもしなかった。でも会長の扱いが酷いんだぞ」

「確かに長野っちも屑だと思うけどね、それは幼馴染みだし、二人には二人の常識があるんでしょ? 大体、明治・大正・昭和の夫婦関係なんてそんなじゃん。良妻賢母? 理不尽なことあっても浮気してもそれを耐えて支えるのが妻の役目みたいな」 

「ああ、昔はみな亭主関白だったからな。俺とは考えが合いそうもないがな」


 そんな昔の妻はなんの為に夫を支えていた?

 心理的には愛情というより、自分の居場所と家族を守る為とか?

 なら会長は日常を守る為に長野を支えているとか……わけわからん。

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