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俺をNTR系チャラ男と勘違いして上官口調の僕っ子生徒会長があからさまに口止め料のキスを毎日してきて困る。しかも月日と共に愛が重い通い妻化してメチャ可愛い  作者: 神達 万丞
第二話『分からなくなってきた、君は何でそんなに優しくするの?』警戒対象→とても不器用ないいやつ
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18「キス十三回目、聡明な会長がいつまでも盛大な勘違いを気づかないとは思えない。その一」



★☆


 七月二十八日


 取り引き十三回目。


「会長……」

「なんだい?」

「いつまでこの苦行を続けなければならない? 元来コミュニケーションの経験値が不足している俺には正直きついぞ」

「頑張れ。まだ結構な件数がある。大体こんなことでいちいちへばったら文化祭が間に合わなくなる。幾ら嫌われ者の君でも中止になって全校生徒に恨まれるのは嫌だろ?」

 

 暑さで猫背になってる俺。

 制服脱いでタンクトップ一枚。

 歩き疲れて足の裏が痛い。


 一軒一軒訪問して理解を求めるのは根気がいる作業だ。

 対して俺と違い会長は相変わらず飄々としている。

 大人の対応と常に余裕をみせ掴みどころがない。

 何処か涼しげで笑みを浮かべていた。

 これが白川桜華学園が誇る女帝の力か……。


 今日は朝から文化祭における学園周辺の挨拶と説明回りで奔走。

 うちの学園は毎年後夜祭を含め盛大なお祭り騒ぎになるので、近所の理解を取り付けないとトラブルの素になる。

 勿論誰も手伝ってくれないから二人きり。

 少数精鋭と行きたいが生憎俺は足手まといだ。

 会長一人で無双していると断言しても決して大げさな表現ではない。


「生徒会がこうやって影からサポートしてくれていたから、俺達はバカ出来ると痛感したが、非協力的でない住民もいたのが意外だ。それを承知でここに住んでいるんだから文句言うなよな」

「こらこら、何処で誰が立ち聞きしているかわからないのだから、余計なことは口走らないほうがいい」


 子供を諭すように俺へ注意する生徒会長。

 でも流石に疲れたのか額に薄っすらと汗が光る。

 そんな様子を間近で傍観するも、俺は別のことを考えていた。


 会長の取り引きもあと僅か。

 しかし、勘違いされたままでいいのだろうかと……。

 不名誉を負う事自体は別段どうでもいい。

 もう慣れた。

 俺達は所詮水と油。

 本来は混じり合うことのない性質。

 マヨネーズみたくはいかんよ。

 でも何故か会長にはこの誤解を解きたい気持ちになる。

 俺が恐喝や詐称とかゲスなことを平気でやる男かどうか? 

 望んでいようと望んでいまいが俺達はいわばお試し期間みたいな関係だ。

 今後関わり合いになることはない。

 なら誤解された状態で縁を切るのは嫌だな。

 毎日キスしていたせいで疑似的に親近感が湧いたのかもしれない。


「ムカつくな。なんで学園を馬鹿にされなければならない。確かにモラルが悪い奴もいるさ。でも己の道を見出す為に一生懸命足掻いているんだ」

「君はそうやって文句ばかりだな」

「やることはやるんだから愚痴くらい吐いてもいいだろ?」

「それを永遠と聞かされる身にもなれ」


 学生達が毎年大騒ぎしても苦情がこないのは、こうして事前に生徒会が頭を下げに行っているからだ。

 しかし件数が多いので中には意地悪な住民も多々いる。

 だから上手く丸め込む会長の弁舌スキルが驚嘆に値するのだ。


「おばさん達の嫌味はムカついたけど、それを淡々と打ち返す会長はその上をいくな。情報の引き出しが多いから舌を巻いた。機転の速さと知識量の多さがないとここまで対処できなかっただろう」

「ふふ、お褒めに預かり光栄。それにこれは家庭環境にもよるかもしれない。幼い頃より親がろくでなしで、家賃の催促とか世間に揉まれたからな。社交性スキルも生き残る為に身につけたものだ」

「生徒会長も苦労しているんだな」

「言うな。そのお陰で今は楽しんでいる」

 

 休憩にしないかと足を止め、汗をハンカチで拭い会長は自販機で買った水を飲む。

 クールビューティーも夏の暑さには勝てないか。

 公園のベンチに座り一息をつく。


「なあ会長?」

「水が欲しいのかい?」

「いらねえ。そうではなくてあんたほど聡明な賢者がいつまでも真実に気づかないわけないよな? 真に俺が極悪であんたを恐喝するか否か」

「気づいていたのか?」

「途中から態度が何処かおかしかった」

「まだ確証はないが、君の人となりを僕なりに考察した結果勘違いが妥当。見た目と色眼鏡で勝手に悪だと判断していた。それにあんなに優しい味がする美味い珈琲淹れるやつに悪人は存在しないさ」

「そうか」

「でも喫茶店の中は割と会話筒抜けだぞ。そのお陰で君がいいやつだと理解したんだが」


 どうやら流星との会話が伝わっていたようだ。

 今後私語には気をつけないとマスターからクビを宣告されてしまう。


「やっと分かってくれたか、じゃあキスはもうなしで」

「でも契約は契約だ。最後までやらせてくれ。それにまだ完全に白と断定するには判断材料が少ない。日頃から言動が悪いからな」

「理解力あるくせに頭固いな」

「僕は意外とわがままかもしれない」


 いたずらっ子のようにほくそ笑む会長。

 終始会長のペースだな。


「そうだ、折角だし今日のキスは今しよう」

「住宅街は目立つぞ。俺と変な噂になるのは嫌だろ?」

「逆に非道徳的で興奮する」

「生憎俺は変態じゃないんだ。世間体だって気にはする」 

「僕に踏んでほしい願望があるくせに」

「それは全男達の夢だ。だから否定しない」

「君も十分変態だよ」


 ニーソで踏まれるのもありだ。


「だから今日こそは初心に返りソフトに頼む。手だ、手にしてくれ」

「ふむ、なら仕方ない。最近マンネリになってきたしそこが妥当か」


 会長は手を掴む——に見せかけ耳を噛み、ふーと耳に息を吹きかけた。


「どうだソフトだろ? これだったら目立たない」

「いやいやいやいや、やりすぎやりすぎ」


 たまたま犬の散歩していた通行人がイチャイチャしたいんだと家でやれとつぶやいたのは言うまでもない。

 こんなところ学園の生徒に見つかったら問題になる。

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